月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第72話 とりあえずの換金

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月の魔女とよばれるまで

第72話 とりあえずの換金

沙更のウィンドウォークで加速したパウエルたちは、開拓村から街道を領都ウエストエンドへと向かう。

理由は、このままでは金欠のまま領都へと向かう事になるからだった。

開拓村から一番近い町までは、本来徒歩なら丸一日かかる。が、ウィンドウォークの効果で朝に開拓村を出たにも関わらず、昼前にはたどり着いていた。

開拓村側にあるこの町の名前をエンシェントゲートと呼んだ。理由は、この町から先は開拓村しか無いこととここから先が古代に魔法文明とモンスターたちの決戦の場になったからだった。

人口2500人ほどとそこまで大きい訳では無いが、開拓村から野菜などを売りに来たりと重要な場所であった。

エンシェントゲートの冒険者ギルドは町の入り口側にあって、そこまで大きくは無く、平屋の一階建ての木造の建物だった。

パウエルたちが冒険者ギルドの中に入っていくとそこらでたむろしている冒険者たちがこちらを見てきた。だが、たむろしている冒険者たちの装備を見ると確実にパウエルたちよりも落ちる。鉄の剣や魔物の素材で作ったと思われる不格好な武器を使っている人たちばかりだったからだ。多分、EランクかDランクの冒険者なのだろうと思われた。

(おい、あいつらの装備見ろよ。魔鉄の剣と見たこともねえ斧に魔鉄のメイスだぜ。古代遺跡に行って戻ってきたやつらか!?)

(おい、それよりも鎧らしいものがねえぞ。あんな軽そうな服で、戦えるのか?)

ひそひそと会話を交わす冒険者たちを横目にしつつ、カウンターの側に行く。パウエルたちが来たのを察したのか、奥から受付嬢がやってきた。でも、その受付嬢さんは人間では無く犬の耳を付けた獣人のお姉さんだった。

「冒険者ギルドエンシェントゲート出張所へようこそ、本日のご用件はなんでしょうか?」

受付嬢さんの決まり文句を聞いてから、パウエルが口を開いた。

「古代遺跡への依頼を受けていたのだが、その最中に魔石を手に入れてね。余り大きくは無いがここで換金出来るか?」

「魔石の換金ですか?はい、承ります。このところ魔石がこちらでは足りなくなってきておりまして、売っていただけるのなら非常に助かります」

どうやら、ここいらのモンスターに魔石を宿した個体があまり居ないらしい。古代遺跡のモンスターは、大半が魔石持ちなのでここいらのモンスターよりも強いのだ。

そう言って、取り出した魔石を受付の机に並べていく。その数、75個。受付嬢は、それを確認しつつ今の換金レートを口にした。

「この数ですと小さいのが一つ銅貨4枚、中くらいで一つ銀貨3枚でよろしいでしょうか?」

「ああ、それで頼む」

「分かりました。少しお待ちくださいませ」

受付嬢は、魔石を持って後ろに下がっていった。その光景を見ていた冒険者の一人がパウエルに近づく。

「あんたら、あれだけの魔石をどこで手に入れた?」

ある意味疑問に思うのも無理はない。しかも50個以上あったのだからおこぼれをと思うのはなんとなく理解できる。だが、それを正直に話す同業はいない。食い扶持を間引かれるのと同じことだからだ。冒険者とは結構世知辛い職業なのである。

「それを聞くのは野暮だろう。ちなみに、もう手に入らんだろうからな」

つっけんどんに返すパウエル。沙更のディバインブレードの浄化の余波でそうなったなんて信じないだろうからだ。それに、あれだけの聖なる力を扱えるのは沙更だけなのだから、それ以上言う理由も無かったのだが。

「くそっ、俺もおこぼれをと思ったんだがなあ」

「今からじゃ無理だろうよ」

無念そうな冒険者を尻目に、パウエルは苦笑を浮かべる。それだけの危険を冒して、手に入れたのだからそう簡単に、手に入るわけが無いだろうと思う。そうやって、話をしていると受付のお姉さんが戻ってきた。持って行った魔石の代わりに、お金が置かれている。

「魔石の小さいのが53個と中くらいのが22個の計75個で、金貨8枚に銀貨7枚と銅貨2枚です」

受付嬢からパウエルはお金を受け取る。

「確かに通常レートより高いな。だが、今回は助かった」

「こちらこそ、あれだけの数の魔石を売っていただいてありがとうございます。また、何かの機会に売却したい素材等ありましたらよろしくお願いいたします」

受付嬢はそれだけ言うとまた後ろに戻っていった。
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