月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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領都へ

第140話 辺境伯の屋敷にて2

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月の魔女とよばれるまで

第140話 辺境伯の屋敷にて2

大型の馬車に揺られること30分程で辺境伯の屋敷に着いた。やはり、辺境伯に就いているだけはあって屋敷自体がかなりの大きさを誇っていた。

ジークさんから聞いたところによると客室が20に、執務室、食堂にリビング、そして地下室をも作られているとのことだった。

実際、この屋敷は前辺境伯から譲られたものらしい。新たに建てるには、中心部に敷地がないことからかなり難しいのはなんとなく分かる。

屋敷を見たパウエルたちは、あまりの大きさに感嘆の声を上げた。貴族の屋敷とは言え、ここまで大きい屋敷はなかなか無いからだ。

「流石にかなりの大きさだな」

「ここまで大きいと圧倒されちゃう」

「ここまで大きいとは思ってなかったが凄えな」

「上級貴族の屋敷ってところね。辺境伯の威光と言ったところかしら?」

四人が驚くのと反対に沙更としては納得の大きさだった。住み込みのメイドや使用人を考えれば、この位あって然るべきだったからだ。別に住まいを作っているのなら、かなり大きいがそこを加味するのならほどほどと言っていい。

それに、今の辺境伯が建てたものではないと言うことはそこまで華美ではないことを示唆していたからだ。

沙更の表情を見ていてジークは面白い娘だと感じていた。ある程度冒険者で馴らした者が驚くのに、更に若輩の沙更が驚かないのだから気になるのは最もだった。

屋敷に入る際にジークが、リエットに耳打ちする。

「お嬢様を助けた娘さんはいろいろと面白い方だ。良い方と出逢いましたな」

「ジークがそう言うのなら、やはり幼い治癒士様は特別なのですね。わたくしを救った魔法も自身で生み出したと言っておいででしたわ」

リエットの言葉に、ジークの表情が変わる。魔法を自ら生み出すと言うのは、現代魔法士では不可能の領域であり余程魔法に詳しくなければ出来ることではなかった。

それを成し遂げていると言う時点で、今の魔法士を遥かに超えた存在だと言うことに他ならないのだから。

それだけの実力を持った魔法士など、現代に存在しては居なかった。居たのは遥か昔、古代魔法士の英知を持っていた人間がいた頃だ。

(まさか、あの娘は古代魔法文明の遺児とでも言うのか!?魔法を自ら生み出すと言うのは、その頃の人間でしかあり得ないのだから)

ジークは長らく冒険者として古代遺跡と長く付き合った経験がある。それだけに、古代魔法士の力をよく知っていた。膨大な魔力を持ち、その力をいろいろと発展させた結果、今では見る影もないがとてつもない程に発展していた過去があった。

その力を受け継いでいるのなら、王国中の貴族や王族がこぞって現れる事になることは想像することは容易だった。平和になって久しいこの国でそれだけの力があれば、征服することすら簡単だからだ。
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