月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
254 / 365
フィリエス家の内情と戦

第235話 サブギルドマスタールーカのイライラ

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第235話 サブギルドマスタールーカのイライラ

護衛の依頼を引き受ける事で決まったところに、ギルドマスターのダイスが顔を出した。

「おっ、いいところにミリアがいるじゃねえか」

その声を聞いたルーカの表情がすうっと凍っていく。いつもの悪い癖が出てしまっているようだ。身体を動かしたいのはよく分かるが、ダイスの相手をするとなると相応の腕が必要になる。

その相手が出来るのは、ミストヘイムの鎧戦士とセリエか荒野の狼のパウエル、ガレム、ミリアの五人だけ。しかも、荒野の狼のメンバーだけがダイスの動きに合わせられるので模擬戦をやるのに一番の相手と言える。それだけに、楽しそうな表情をしているのだがそれに反比例するようにルーカの表情に変化があった。

「なんで、ここに居るんですか?」

ルーカが言った言葉は、ダイスの表情を一変させるのに充分だったようだ。

「いや、荒野の狼のメンバーがギルドに来たと聞いたからには身体を動かしたいなと」

「ギルドマスター、私は重要な仕事をしています。フィエリス家の家令ジーク様からの指名依頼の件で、荒野の狼の皆さんに来てもらったのを忘れていませんよね!?」

段々とルーカの表情に怒りが表れていく。その表情に、沙更はルーカが苦労していることを察する。大体、こういう場合ダイスがやらかして、後始末をルーカがやっているのは見なくてもわかるからだ。ミリアも察しているらしく、沙更が視線を向けると首を振った。

「ジーク殿から直接依頼された件だろう?でも、パウエル達が受けないわけがないから大丈夫だと言ったと思ったが?」

ダイスの場を読めない言葉に、深々とため息をつくルーカ。まさに無いと思われたらしい。きちんと説明した後でなら分かるが、説明する前にギルド側が受ける前提でいるのは確かに問題なのだ。

「結果として、受けてくれることにはなりましたが条件面も説明せずに依頼を冒険者に受けさせる気ですか?」

ルーカの怒りを感じたのか、ダイスも口ごもる。下手に刺激したら噴火が確定だからだ。それだけルーカのストレスが溜まっているとも言うのだが、察せないあたりが空気が読めないと言うことなのだろう。

その後、ルーカの怒りが引かないのを感じたのかダイスは個室をそっと出ていく。いなくなったところで、深々とため息をついた。

「はあっ。もう、本当に脳筋だから模擬戦が出来る相手が来ればああなのは困るところなの」

「ルーカさん、そのうち良ければ孤児院に来ませんか?少し、精神的に疲れているように見えます。話せない事もあるとは思いますが、不満を口にするだけでも気が楽になりますよ」

そう言った沙更をルーカは驚いた顔をしてから抱きしめた。ギルド内部でもたまに言われるのだが、沙更に言われたのがよほど嬉しかったらしい。

「セーナちゃんの優しさが身にしみるわ。リエット様もいるから遠慮はさせてもらうけれど、それでも嬉しい」

「ウエストエンドに、気軽に休めるいいお店あまり無いですから」

ミリアがそう言うとヘレナも頷く。ウエストエンドには娯楽が少ない。それか現実だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―

酒の飲めない飲んだくれ
ファンタジー
俺は一度、終わりを迎えた。 でも――もう一度だけ、生きてみようと思った。 女神に導かれ、空の海を旅する青年。 特別な船と、「影」の船員たちと共に、無限の空を渡る。 絶望の果てに与えられた“過剰な恩恵”。 それは、ひとりの女神の「願い」から生まれたものだった。 彼の旅路はやがて、女神の望みそのものを問い直す。 ――絶望の果て、その先から始まる、再生のハイファンタジー戦記。 その歩みが世界を、そして自分自身を変えていく。 これは、ただの俺の旅の物語。 『祈りの果てに ― 無限の箱庭で笑う者 ―』

異世界転移物語

月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……

魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした

たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。 死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

私の存在

戒月冷音
恋愛
私は、一生懸命生きてきた。 何故か相手にされない親は、放置し姉に顎で使われてきた。 しかし15の時、小学生の事故現場に遭遇した結果、私の生が終わった。 しかし、別の世界で目覚め、前世の知識を元に私は生まれ変わる…

気弱令嬢の悪役令嬢化計画

みおな
ファンタジー
 事故で死んだ私が転生した先は、前世の小説の世界?  しかも、婚約者に不当に扱われても、家族から冷たくされても、反論ひとつ出来ない気弱令嬢?  いやいやいや。 そんなことだから、冤罪で処刑されるんでしょ!  せっかく生まれ変わったんだから、処刑ルートなんて真っ平ごめん。  屑な婚約者も冷たい家族も要らないと思っていたのに・・・?

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

みそっかす銀狐(シルバーフォックス)、家族を探す旅に出る

伽羅
ファンタジー
三つ子で生まれた銀狐の獣人シリル。一人だけ体が小さく人型に変化しても赤ん坊のままだった。 それでも親子で仲良く暮らしていた獣人の里が人間に襲撃される。 兄達を助ける為に囮になったシリルは逃げる途中で崖から川に転落して流されてしまう。 何とか一命を取り留めたシリルは家族を探す旅に出るのだった…。

処理中です...