月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
269 / 365
フィリエス家の内情と戦

第249話 孤児院での迎撃戦3

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第249話 孤児院での迎撃戦3

探知魔法を孤児院内に張り巡らせたところで、そろそろ夜が近い。刺客が来るのなら、真夜中だろうと沙更は踏んでいた。

そんな沙更を見つつ、ミリアは古い知り合いの顔を思い浮かべる。闇ギルドの長の事だ。探査のスキルを一から仕込んでくれた師匠であり、唯一の親戚であった。

「セーナちゃん、明日時間貰える?」

「ミリアお姉さんがそう言うのなら、誰かに会って欲しいのですか?」

「あたしの親戚で師匠にね。流石に、立場が立場だから引き取れないってことでここに居たけど技だけは教えてくれたんだ」

ミリアがそう言うと沙更は頷く。そうこうしていると日が暮れてきた。夜が来れば、襲撃までそこまで時間は無い。そうなってくると先にきっちりと栄養補給する必要がある。

「今日の夕食は私が作りましょう。と言っても蒸かし芋ですけど」

「思ったけど、セーナちゃんは料理に精通しすぎ。ワンダーシェフなのは分かるけど、いろいろと知らないことを知ってるから凄いよね」

ミリアの言葉に首をかしげる沙更。何というか、別に計算したわけでも無く狙ったわけでも無いからだ。ジャガ種が食べられていなかったのには驚いたが。

どちらにしろ、この国はいろいろと知識が遅れていると沙更は思う。とそんなことを考えていられる当たり、真面目に襲撃されると言う前提で動いているのが嘘のようだ。

ジャガ種を蒸かし、塩とバターを落とす。それに葉野菜と根菜のサラダに、朝作った手作りドレッシングで味付け。油は植物油と塩、レモネで作るあっさりタイプの手作りドレッシングだ。

それに、買ってきておいた牛乳を虚空庫から取り出しておく。手軽だけれどもそれなりの栄養を取れる状態にはしてあった。

「生野菜にそう言うのを使うって初めて見たよ」

「この世界の材料で作った手作りドレッシングです。あっさり気味だから、食べやすいかなと」

「セーナちゃんの凄さだよな。これだけの手間で野菜がおいしく食べられる」

「野菜が苦手な奴でもこれなら食える奴もいるかもな」

「確実に食に変化をもたらしているわよね。ジャガ種をこんなにおいしくいただけるのは、この孤児院くらいだもの。孤児達もお気に入りになっちゃってるわ」

元々ジャガ種は毒芋の扱いであったため、手に入れること自体は容易であったし、栽培も簡単な事から安価で手に入るものであった。それを主食に出来るようになったことで、孤児院の食費は大分浮くことになる。

この孤児院に、かなりの変化が出てきている。エリシアのこともそうだが、沙更が来た事で食事の質も量もかなり増えて行っている。前に比べれば飢えている孤児はここには居ない。

そういう点でも食事面で大分改善が進んできている証だった。

食事を終え、軽く湯浴みをすると夜も大分更けてきた。

昼に、孤児院に張り巡らせた探知システムはこの世界の警備としては完全に過剰で、沙更の知る世界でもかなり警備がしっかりしていると言って良い。

入っただけで、居場所を把握されてしまうと言う時点でかなりの念の入れようと思って良い。と言うか、警戒するにしてもそこまではやらないと思われるからだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ
ファンタジー
 一歳で両親を亡くし母方の伯父マークがいる辺境伯領に連れて来られたパール。 伯父と一緒に暮らすお許しを辺境伯様に乞うため訪れていた辺境伯邸で、たまたま出くわした侯爵令嬢の無知な善意により 六歳で見習い冒険者になることが決定してしまった! 運良く? 『前世の記憶』を思い出し『スマッホ』のチェリーちゃんにも協力してもらいながら 立派な冒険者になるために 前世使えなかった魔法も喜んで覚え、なんだか百年に一人現れるかどうかの伝説の国に迷いこんだ『迷い人』にもなってしまって、その恩恵を受けようとする『当たり人』と呼ばれる人たちに貢がれたり…… ぜんぜん理想の田舎でまったりスローライフは送れないけど、しょうがないから伝説の国の魔道具を駆使して 気ままに快適冒険者を目指しながら 周りのみんなを無自覚でハッピーライフに巻き込んで? 楽しく生きていこうかな! ゆる〜いスローペースのご都合ファンタジーです。 小説家になろう様でも投稿をしております。

【完結】メルティは諦めない~立派なレディになったなら

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 レドゼンツ伯爵家の次女メルティは、水面に映る未来を見る(予言)事ができた。ある日、父親が事故に遭う事を知りそれを止めた事によって、聖女となり第二王子と婚約する事になるが、なぜか姉であるクラリサがそれらを手にする事に――。51話で完結です。

【連載版】ヒロインは元皇后様!?〜あら?生まれ変わりましたわ?〜

naturalsoft
恋愛
その日、国民から愛された皇后様が病気で60歳の年で亡くなった。すでに現役を若き皇王と皇后に譲りながらも、国内の貴族のバランスを取りながら暮らしていた皇后が亡くなった事で、王国は荒れると予想された。 しかし、誰も予想していなかった事があった。 「あら?わたくし生まれ変わりましたわ?」 すぐに辺境の男爵令嬢として生まれ変わっていました。 「まぁ、今世はのんびり過ごしましょうか〜」 ──と、思っていた時期がありましたわ。 orz これは何かとヤラカシて有名になっていく転生お皇后様のお話しです。 おばあちゃんの知恵袋で乗り切りますわ!

魔法属性が遺伝する異世界で、人間なのに、何故か魔族のみ保有する闇属性だったので魔王サイドに付きたいと思います

町島航太
ファンタジー
 異常なお人好しである高校生雨宮良太は、見ず知らずの少女を通り魔から守り、死んでしまう。  善行と幸運がまるで釣り合っていない事を哀れんだ転生の女神ダネスは、彼を丁度平和な魔法の世界へと転生させる。  しかし、転生したと同時に魔王軍が復活。更に、良太自身も転生した家系的にも、人間的にもあり得ない闇の魔法属性を持って生まれてしまうのだった。  存在を疎んだ父に地下牢に入れられ、虐げられる毎日。そんな日常を壊してくれたのは、まさかの新魔王の幹部だった。

うちの孫知りませんか?! 召喚された孫を追いかけ異世界転移。ばぁばとじぃじと探偵さんのスローライフ。

かの
ファンタジー
 孫の雷人(14歳)からテレパシーを受け取った光江(ばぁば64歳)。誘拐されたと思っていた雷人は異世界に召喚されていた。康夫(じぃじ66歳)と柏木(探偵534歳)⁈ をお供に従え、異世界へ転移。料理自慢のばぁばのスキルは胃袋を掴む事だけ。そしてじぃじのスキルは有り余る財力だけ。そんなばぁばとじぃじが、異世界で繰り広げるほのぼのスローライフ。  ばぁばとじぃじは無事異世界で孫の雷人に会えるのか⁈

そんな未来はお断り! ~未来が見える少女サブリナはこつこつ暗躍で成り上がる~

みねバイヤーン
ファンタジー
孤児の少女サブリナは、夢の中で色んな未来を見た。王子に溺愛される「ヒロイン」、逆ハーレムで嫉妬を買う「ヒドイン」、追放され惨めに生きる「悪役令嬢」。──だけど、どれもサブリナの望む未来ではなかった。「あんな未来は、イヤ、お断りよ!」望む未来を手に入れるため、サブリナは未来視を武器に孤児院の仲間を救い、没落貴族を復興し、王宮の陰謀までひっくり返す。すると、王子や貴族令嬢、国中の要人たちが次々と彼女に惹かれる事態に。「さすがにこの未来は予想外だったわ……」運命を塗り替えて、新しい未来を楽しむ異世界改革奮闘記。

初恋が綺麗に終わらない

わらびもち
恋愛
婚約者のエーミールにいつも放置され、蔑ろにされるベロニカ。 そんな彼の態度にウンザリし、婚約を破棄しようと行動をおこす。 今後、一度でもエーミールがベロニカ以外の女を優先することがあれば即座に婚約は破棄。 そういった契約を両家で交わすも、馬鹿なエーミールはよりにもよって夜会でやらかす。 もう呆れるしかないベロニカ。そしてそんな彼女に手を差し伸べた意外な人物。 ベロニカはこの人物に、人生で初の恋に落ちる…………。

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

処理中です...