月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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フィリエス家の内情と戦

第248話 闇ギルドの長と幼い暗殺者

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月の魔女とよばれるまで

第248話 闇ギルドの長と幼い暗殺者

孤児院へ暗殺者10人が一斉に向かったわけではなく、闇ギルドの長と一人の10才程度の女の子が対面していた。

「俺はここをたたむ。お前は、ミリアの所にいけ」

「一緒に行きたい」

「お前を巻き込むわけにはいかんのだ。領主とやり合う格好になるからな」

「あの男を殺ればいいの?」

「あの男を仕留めるのは、別の人間の仕事だ。だから、それはしなくても良い」

長が伝える言葉に、女の子は首を振る。そもそも、この子は長がウエストエンドの外れにて拾った子で、自分の食い扶持は自分で稼ぐと暗殺者になった変わり種であった。精神が半分死んでいると他の人間には思われているが、それだけ長が特別だという証でもある。

「これ以上、お前の手を血で汚すことをしたくないのだ。今まで、いろいろと助けて貰ってきたが今日でそれも最後。殺し以外の生きる術を見つければ良い」

「嫌、離れたくない」

離れたくないとばかりに抱きついた女の子の頑強な抵抗に、闇ギルドの長としても困ってしまう。ここまで好かれているとは思ってもみなかったからだ。そもそも、長の気まぐれに拾って助けた子だったから。

その恩を感じて、女の子は暗殺者となり長の助けになった。が、その生活が歪んでいたのは言うまでも無い。

「大丈夫だ。今回の件が終わればまた会える。約束しよう」

「約束、必ず守って。もう一人は嫌」

女の子としては、離れたくは無いが助けてくれた長の言葉を信じていないわけがない。長がまた会えると言ったのなら、それを信じて待つ位は全然出来た。

そこまで言ってようやく離れてくれた女の子に、闇ギルドの長は苦笑を浮かべる。この子に地獄を見せたのは自分であるし、殺されても文句は言う気もない。

だが、女の子からしてみれば何処で死ぬか分からない状態から、少なくても暗殺と言う名の生きる術を与えてくれた恩人そのものであった。

再度言いくるめると女の子は、孤児院へと向かう。その姿を見送りつつ、闇ギルドの長は自分が年老いたことを感じざるを得なかった。昔はもっと非情であったし、すぐに見捨てていただろう。それが出来なくなっているのがよく分かったからだ。

「俺が拾った娘に情を交わすとは、変わったもんだ」

長はそれだけ言うと闇ギルドの受付の青年が顔を出した。

「お頭、ここはもう少しで閉鎖出来ます。でも、良いんですか?」

「ああ、ここでたたまなければ後は修羅道。あいつにその道は進んで欲しくねえのよ。まったく、昔に比べて甘くなったもんだぜ」

自嘲めいた言葉を言いつつ、闇ギルドを閉めていく。この時の闇ギルドの長は、一人の親の顔をしていた。拾った娘をこれ以上奈落に落とさないようにと。
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