月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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フィリエス家の内情と戦

第270話 カタリーナの治療3

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月の魔女とよばれるまで

第270話 カタリーナの治療3

沙更の可視化する程までに練られた魔力で唱えられたアンチカースは、カタリーナの魔力に干渉していた魔力もとい呪力をあっさりと光に帰した。

「これで、カタリーナ様の容態も徐々に良くなると思いますが少し治癒魔法でお節介を焼いておきます。いつまでも床にいるのも良くないでしょうから」

沙更がそう言って、無詠唱でハイヒールを出すとスターサファイアのロッドの先からカタリーナの身体をハイヒールの魔力で包み込ませていく。

ハイヒールの魔力に包まれたことで、一気にカタリーナの身体の疲労、魔力の干渉による不調を身体全体から癒やしていく。ハイヒールを無詠唱で、全身を包み込むほどに範囲を拡大して効力を及ぼすなんて芸当までこなして。

その光景を見ていたガーゼルベルトは、ジークがカタリーナの為に呼んだと言う理由に納得せざるを得なかった。王都でもこれだけの治癒魔法を扱える人間はいない。そして、解呪の魔法すら扱いこなせる治癒士などいるわけがない。規格外過ぎて、理解の範疇を超えてしまっていた。

この国の治癒士の最高峰に、この幼い娘が立っていることを理解せざるを得なかった。異界の悪魔の呪術を解除することが出来る人間など聞いたこともないのだから。

しかもこんな短時間で、目に見えるほどの魔力を操り疲労すらしているか分からない程となれば尚更だった。既に、呪術を解除されてハイヒールの治療を受けたカタリーナの顔色は先程までとは違い血色も良くなっている。

「こんなにあっさりと治して貰えるとは思ってもいなかったわ」

「私はジークさんやリエット様が望む事をしただけです」

沙更はカタリーナの感謝に、そう答えた。治癒士として免許を持っているわけでもない。教会の保護下にあるわけでもない。ただの冒険者なのだから、治ったことを喜んで貰えればそれで十分だった。

その言葉を聞いたリエットは、何も言わずに沙更に頭を下げた。自身を救って貰い、今また母親すら救ったこの幼い偉大な治癒士に感謝の気持ちを込めて。

リエットの気持ちも分かっているから、沙更はそれを止めようとはしない。ただ、それを受け入れてリエットが頭を上げるまで待つ。

「リエット様、その気持ちは私に伝わっています。だから、それ以上は必要ありません」

「でも、幼い治癒士様にわたくしが出来ることなんてこの位しか出来ません。この身だけならず、お母さんまで救って貰ったのに」

「私はすべての人を救えるわけではありません。目に見える人だけしか癒やすことが出来ませんから、その気持ちだけ受け取らせて頂きます」

沙更自身は神ではないからそう答える。月女神ならば違う答えが返せるかもしれないが、今は沙更なのだから人一人きっちり治療するのが精一杯だった。

リエットと沙更の会話を聞いていて、ガーゼルベルトは一つ懸案が終わったことに胸をなでおろしつつも今この場にいないカタリーナの夫のことを思案し始めていた。
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