月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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フィリエス家の内情と戦

第280話 激突簒奪者軍対辺境伯軍1

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月の魔女とよばれるまで

第280話 激突簒奪者軍対辺境伯軍1

対峙してから一時間もしないうちに、子爵領と辺境伯領の半分を掌握したリエットの父親アランが攻撃の合図をした。

「三倍の数だから、籠城戦をすると思ったのだがカタリーナお前が出てくるとはな!!」

アランは、カタリーナが軍を率いて出てくるとは思っていなかった。が、こちらよりも少ない兵力なのに野戦に出てきた事に笑いが止まらない。

三倍の戦力で、カタリーナを打ち負かすチャンスが来たことが嬉しくてしょうが無かったのだ。そもそも、アランはカタリーナに何をしても勝ったことが無い。

だが、兵の指揮だけはそれなりに出来る為、これならば勝てるはずと勇んで野戦に赴いたと言う事情があった。三倍の兵力で、カタリーナから初めての勝利を得ることが出来るとこの時点では思っていた。

攻撃の合図と共に、アラン率いる簒奪者軍はカタリーナの辺境伯軍に襲いかかった。鶴翼の陣で一斉に襲いかかるが、カタリーナはそれを方円の陣で防戦に回る。

最初、カタリーナは魚鱗の陣を敷く予定であったが相手の数と包囲してくることを考えて防戦を決めた。士気、練度共にアランの軍よりも高いのも防戦を決める判断の一因であった。

騎馬で攻め立てる簒奪者軍に、辺境伯軍は槍兵による防御を主体とし、反撃で弓矢を射かけていく。簒奪者軍は騎馬が突出したことで、兵の連携が取れておらずに現状では弓兵の射程範囲に辺境伯軍をまだ捉えられては居なかった。

相手の連携が崩れている間にも、辺境伯軍は長槍での騎馬の防御、槍兵の後ろに弓兵を配置することで弓での反撃を行っていく。さらに、弓兵の後ろから魔法兵の援護が入る三段構造で、簒奪者軍を大いに苦しめることになる。

連携を崩した簒奪者軍に、容赦なく襲いかかる弓矢の雨。そして、弓矢を防げば魔法が飛んでくると言う迎撃の二段構えの前に次々と倒れていく騎馬兵を見て、アランはカタリーナの思惑を感じ取った。

(くそっ、俺では貴様に勝てないと言いたいのか!!)

防御を固めて、騎馬兵の機動力を生かせない状況にした後での弓矢攻撃と魔法攻撃。防御と攻撃が揃っているだけに、確かに理に適っていた。そもそも兵の使い方もアランとカタリーナでは全然違う。

ようやく、騎馬以外の主力が接敵する頃には騎馬兵の大半を失っていた。おかげで、突破力は半減以下まで落ちてしまっている。

かたや、辺境伯軍に被害らしい被害はなかった。なぜか、沙更の存在がそこにあったからだ。方陣の中心から外縁部まで、沙更の補助魔法の効果範囲がぴったり重なるように陣を組み上げている。それだけに、辺境伯軍全軍にマイティアップが掛かっていたのだ。

そして、その効果範囲は他の補助魔法の効果範囲でもあった。簒奪者軍にも魔法兵はいる。その魔法をディヴァインベールで防ぎきったり、弓矢をウィンドプロテクションで弾いたりとしていたのだ。

相手の攻撃はことごとく弾いて、こちらの攻撃に補助が入っている時点で相手が三倍だろうと迎撃出来てしまった。そう、軽傷を負った兵士がいる程度のほんの軽い損害で相手の迎撃が出来ているのだから当然と言えば当然の話だった。
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