月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第300話 偵察の終わり

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月の魔女とよばれるまで

第300話 偵察の終わり

 オーガ7体との遭遇戦になったが、それでもパウエル達に動揺は無い。先ほどヒルジャイアントを討伐したのだから、格下にしか見えなかった。

 オーガは確かに人間よりは大きいが、巨人族であるヒルジャイアントよりは小さい。大体大人の男の倍くらいの体格と言うべきだろう。とは言え、戦った事がある相手だけに強さは知っている。

 強いて、変異種となれば話は別だが容姿は普通のオーガであっただけにそれには当たらない。となれば、そこまで難しい相手ではない。

 先手を取ったのは沙更。ムーンクリスタルロッドで増幅した風の魔力を古代詠唱でさらに増幅させて放つは、ウィンドカッター。ただのウィンドカッターでは無く、中級魔法のエアブレードになってしまっていた。

 風の刃がオーガたちを襲う。次々とオーガを切り裂き、深手を負わせたところにミリアが白の直刀を数回閃かせる。剣閃が見えたと思ったら、オーガの首が落ちていく。

 沙更とミリアだけで、4体のオーガが沈黙すると残り3体。手負いのため、動きが鈍くなっている所をヘレナの魔鉄のメイスの渾身の一撃が決まり、首の骨を折る。さらに、パウエルがオーガの攻撃をいなしたところで頭部から身体を唐竹割りの要領で一閃し、身体を真っ二つにした。

 最後の一体は、ガレムの炭素鋼の斧の回転切りで胴を割って倒していた。

「流石に、もうオーガじゃ苦戦はしないな」

「てか、ちょっと前にヒルジャイアントとやり合ったばっかだろうが。オーガくらいじゃもう腕試しにもならねえなあ」

「流石にセーナちゃんと一緒で、苦戦はしないと思うかな」

「わたくしでも不意をつければ倒せるのなら、少しは強くなったと言って良いかな?」

「ヘレナさんも前に比べれば動きも良くなってますよ」

 昔戦った時に比べて、格段に経験を積んだからか前との比較が出来るだけに前より強くなったことを実感出来たのだった。

 もう一つの開拓村も壊滅していたことから、さっさとエンシェントゲートに戻ることにした。冒険者ギルド支部にこの情報を持ち帰る必要があったからだ。

 出来るだけ早いほうが良いことから、大森林側を通ってエンシェントゲートに向けて一直線で加速していく。少なくてもエンシェントゲートを突破されることは避けたい。となれば、その前で食い止める必要性がある。

 だが、それが出来る戦力は今はないことからかなりの無茶をする必要性があった。流石に数千、数万ともなれば荒野の狼だけで捌ききれるはずも無い。出来ればカタリーナの辺境伯軍が来てくれればまだなんとかなるのだが、それでも厳しいのは確かだった。

 セーナが願ったわけじゃない。けれど、因果応報と言うべきか他の開拓村は壊滅してしまった。また開拓するにしても大勢を考える必要があると暗に示していたのだった。
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