月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第299話 もう一つの開拓村

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月の魔女とよばれるまで

第299話 もう一つの開拓村

 エンシェントゲートに近い開拓村が壊滅していたのを確認した後、沙更たちは大森林にほど近いところで一回休憩を取っていた。

 急ぐ必要はあるのだが、それでもお腹が減った状態での無理はモンスター達の大群の側と言う事もあって出来る相談では無かった。それだけに、休憩を取れる時に取っておくことにしたのだ。

「モンスターたちからそんなに離れていないけれど、ここは静かなものね」

「大森林まで広がっていなくて助かった。流石に、ここまで覆われているとなったら話が変わってくる」

 ヘレナの言葉にパウエルが答える。ガレムとミリアは、沙更が作った塩ポトフを食べていた。

 エンシェントゲートに一日でたどり着いたのもそうだが、かなりの強行軍である。それだけに、ゆっくり出来るところでゆっくりしないと精神的に持たない。

 食べられる時にしっかり食べておかないとどうしても体力に不安が残ってしまうのは否めない。そして、戦いに身を置きすぎるとそれもそれで支障が出てしまうだけに、切り替えが必要だった。

 それに、先ほど見た開拓村の惨劇を忘れたかったのもある。かなり悲惨な状態だっただけに、精神的消耗もそれなりにあった。自分たちだけで、モンスターの氾濫を対処出来るわけじゃ無い。だが、開拓村の惨状はそんなものではなかった。

 神の器を持つ沙更ですら寒気がしたのだから、普通の人間ではあれを直視できるかと言えば厳しいだろうと思う。少なくてもセーナの体験も見たことがあるから耐えられるだけで、沙更の精神だけなら耐えきれると思えない。

 パウエル達も余り言わないようにしているのは思い出したくないからだろう。それほどまでに、凄惨だったと言い切れるそんな状態であった。

 やり返せるならやり返したいと思うところだが、それが出来るとうぬぼれるほどの実力はパウエル達にはないと分かっているだけに、無茶はしないと決めていた。

 ある程度休憩を取ったところで、再度もう一つの開拓村へと急ぐ。エアウォークでの加速のおかげで、たまにモンスターと遭遇するものの難なく退治していく。ここらのモンスターはそこまでランクが高くない。大体がEランクもしくはDランクモンスターがほとんどで、パウエル達の前では敵と言うには弱かった。

 そんなモンスター達を蹴散らしつつ進んでいくともう一つの開拓村が見えてきた。だが、やはりというかこちらも既に壊滅しているのが見える。建物は倒壊し、柵も破壊されている。となれば、村人達が生きている保証はない。

 さらに、開拓村に近づくとエンシェントゲートにほど近い開拓村とは違って、壁に血がこびりついていたり、凄惨な死体が転がっていたりはしなかった。

 しかし、その理由はすぐに分かった。古代遺跡で見かけた人を食う鬼、オーガがそこにいることで村人達の末路を想像できてしまったから。

 オーガは、こちらに気付くとすぐに他の仲間を呼ぶ。駆けつけたオーガは、7体。こちらよりも数が多いが、それでもパウエル達は怯むことは無かった。
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