月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第298話 開拓村の壊滅

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月の魔女とよばれるまで

第298話 開拓村の壊滅

 スチールアント、グレートパイソン、ヒルジャイアントを倒した沙更達はさらに開拓村へと近づいていく。が、ある程度近づいたところで、開拓村が完全に壊滅している事が分かった。

 既に塀は倒れ、家は倒壊し、建物という建物が崩れ落ちていた。さらに近づいて、開拓村だった場所を見ると至る所で、真新しい血が飛び散っていて損壊の激しい死体がごろごろと転がっている。そんな状況だったからだ。

「流石に、これは…」

「ひどい状態だね。余り直視はしたくないかな」

「だな、こりゃ他の場所も厳しいだろうよ」

「ここが開拓村でも一番エンシェントゲートに近い場所なのよね。だとしたら、もう片方は?」

「確認が必要になります。でも、ここから先はもうモンスターたちの跋扈する場所です。余り無理をするわけにも行きませんから、遠回りをした方が安全でしょう」

 沙更としては、セーナの知識でこの辺りを知っているだけにもう一つの開拓村に行くルートを考える必要があった。道通りに行ってはモンスター達と鉢合わせるのが目に見えていたから。

 いかに、この辺りでは強い冒険者と言われるまでにはなったとは言え、人間の範疇から出たわけでは無い。となれば、慎重に動く必要がどうしてもあった。

 エンシェントゲートに近い開拓村でこれならば、一番遠い開拓村は確実に滅んでいると思う。が、それでも確認しに行く必要があった。

 強行偵察という形だが、それでも情報を得られるのなら動く必要性があった。開拓村は既に壊滅していると分かっていれば行動にかなりの幅が出来るからだ。

 元々、カタリーナの軍は開拓村を守る前提で作戦を練られていた。その前提が崩れてしまえば、取れる行動にも幅が出来る。そして、既に開拓村が無いのなら大胆な行動も取れると言う事。

 どちらにしろ、モンスターはすぐそこまで来ている。ならば、その速度よりも早く動く必要がある。普通の冒険者なら出来ないことも沙更が同行していることで出来てしまうのだから。

 壊滅した開拓村を背に、大森林へと向かうパウエル達。大森林側からもう一つの開拓村を目指すことにしたのだ。そして、その行動がモンスター達に沙更たちが動いている事を気付かれないことへと繋がっていく。

 少しでも情報を得る為に、沙更たちが動くことでモンスターの氾濫への対応が徐々に形を帯びる事になろうとはこの時のパウエル達には理解出来ていなかった。

 モンスターの氾濫の最前線に行って、偵察をしていると言う時点でかなり貴重な情報を持っていることになる。カタリーナのみならずシルバール王国の命運を握る事になろうとは思いもしない。

 だが、今動いている事が後々かなり影響してくることになる。
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