月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第302話 後手に回る対応

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月の魔女とよばれるまで

第302話 後手に回る対応

 開拓村が壊滅した時にいたモンスターの事をギルド支部の支部長に話すと顔色が変わった。元々Cランク以上とは分かっていたが、軽い偵察でBランクのモンスターと出くわす程にモンスターが近づいていると分かったからだ。

 実際、ヒルジャイアントが3体出てきていることは確かでそれを撃破してきた。だが、これ以上ランクが上がれば対応できないこともまた確か。現状の戦力ではここを守ることすら厳しすぎたのだ。

「エンシェントゲートを廃棄することになろうとはな」

「その判断には早いと思うが?」

「いや、ここで籠城は出来ない。既に、開拓村が壊滅したことは住人に知られているはずだ」

 パウエルの言葉をギルド支部の支部長は聞かない。既に彼の中で、エンシェントゲートの廃棄が決定されているかのようだ。領主のカタリーナの命も聞かずに、それをやろうとするのは傲慢でしかない。

 ここを死守するには戦力が圧倒的に足りないだけに、撤退できるのならば撤退しておきたいのは分かる。だが、このままエンシェントゲートを廃棄してしまえばクルシスまで何も無い守れる場所はどこにもない。

 強いて言えば、クルシスまで撤退できるのなら悪くは無いがそれが出来るわけがない。ろくな食料と水も持たずに、数百キロを歩けるかと言えば厳しすぎた。冬じゃ無いだけましではあるが、それでもここからクルシスまでは非常に遠いと言うのを忘れているかのようだった。

 2000人を脱落させずに逃がすとなるとかなり厳しい。大森林を通らないのであれば、モンスター達に後ろから追われた場合、壊滅する可能性が相当に出てくる。守り切れるかと言えばまず無理だろう。

 カタリーナが騎士達を出してくれれば、まだ可能性は出てくるがそうなってくると辺境伯領を捨てることになりかねない。戦力が足りない状態で、守りに割いてしまっては攻めなど出来るわけが無い。

 そう、前提条件が違いすぎていたのだから認識も違うのも無理は無かった。

「ここからクルシスまで逃がすにも戦力が必要だ。そうなってくれば、逃げる民は邪魔にしかならないんじゃ無いか?」

「だろうな。だが、それでも逃げなければここに居座れるわけもない。実際、我らに打てる手は余り残されてはいないのも確かだな」

 流石にそこまで言えば支部長も実情を理解出来たらしい。そもそも、相手が膨大なうえに逃げるのならばとことん逃げ続けなければならない。そんな体力を普通の領民に出来るかと言えば難しいのもまた事実。

 政が上手くいっていない証でもあり、人間の限界と言っても良い。冒険者ギルドでこれなのだから、貴族達は尚更混乱の渦に巻き込まれて、収拾が付いていないのが実情であった。
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