月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第303話 後手に回ったが故の決断

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月の魔女とよばれるまで

第303話 後手に回ったが故の決断

 ギルドの支部長がエンシェントゲートを放棄することを覆すことは無いように沙更には感じられた。となれば、住民を逃がす事を考えなければならない。

 だが、問題はここから冒険者だけで住民全てを守れるわけでは無い。さらに言うならば、エンシェントゲートの冒険者ではモンスターの氾濫で出てくるモンスターに太刀打ちが出来ないと言う事だ。情報が手に入った時に、逃げる算段を取っておけば良い物をと思ってしまう。

「あの、支部長さん。冒険者の質的に厳しいと思うのですが、それでも逃げる気ですか?」

「それだとしてもだ。このままここに居たとしても死ぬのが分かっているのだから、逃げることにこそ意義がある。そうではないか?」

「あのー、疑問で返されても困ってしまうんですけれど」

 沙更としては、疑問で返された時点で面倒だなと思う。強いて言うならば、この人上に立つには厳しいんじゃ無いかなあと思っていたりする。無能とは言わないがきわめてそれに近い感じがしたからだ。少なくても有能では無い。

 確実に、こちらを使おうと考えているのがバレバレなだけに呆れ顔をしてしまう。その表情を見たミリアも呆れた顔をした。

「支部長さん、あたしたちを戦力として数えてるのは良いけどそもそも逃がすのに戦力が足りないよ?ただ逃げるだけなら被害が増えるだけ。足止めも出来る人材がいないんだから、そもそももっと前に逃げないとダメなんじゃない?」

「言いたいことは分かるが、モンスターが来ないのに逃げるのはちょっとな」

 ミリアの言葉に、遠い目をする冒険者ギルドの支部長。どうやら無能のそしりを受けることだけは免れたいと言うのが本音のようだ。

 その本音にげっそりするのも無理は無い。元々、パウエル達はカタリーナたちの為に偵察に来ているだけで、エンシェントゲートの為に動いているわけではない。それに、開拓村が壊滅したことで戦場として仮定出来る場所が増えた。それだけに、大規模魔法を展開できる余裕もある。

 沙更として使える魔法の最高峰を使おうとすれば、かなり広い敷地がいるだけに現状の状態は悪くは無かった。モンスターの氾濫による猛攻に対応するには、沙更が動くしか無い。

 本当ならば、カタリーナの軍でカバー出来ればそれが一番良かったが今のシルバール王国の軍ではモンスターの氾濫を抑えきれるとは到底思えなかったのだ。

 カタリーナの軍を間近で見ての判断だけに、それは間違っていない。練度という意味では、ガーゼルベルトやカタリーナの軍以上はあり得なかったから。

 そうなってくれば、沙更として出し惜しみをする必要性は無い。目立つ事この上ないが、ただの冒険者がそんなことを出来るはずがないと勝手に判断してくれるはずと思っていた。
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