月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

文字の大きさ
338 / 365
最終章 目覚める神

第314話 迫るモンスターの氾濫

しおりを挟む
月の魔女とよばれるまで

第314話 迫るモンスターの氾濫

 エンシェントゲートの放棄により、補給路を断たれた沙更達は困ってしまっていた。そして、そこにモンスターの氾濫によるモンスターの群れの波が近づいてくる。

 それに気付いたのは言うまでも無く沙更。だが、ミリアもなんとなく感づいたらしい。気配察知と言うよりも虫の知らせと言った方が良いだろう。本能と言って良い。

「セーナちゃん、気付いた?」

「ミリアさんもとなれば、かなりの数が近づいていると見て良いですね。どうします?ここで迎撃するのはなしですし、それに退くのも問題があります」

「ここまで来たら、やれるだけやるしかないかなってところかな」

 ミリアもこれほどまでの気配を感じれば、ここで食い止める必要があることに気付いている。だからこそ、沙更にやれるところまでと返したのだ。

 ある意味絶望的と言って良いこの状況で、あがくことを止めないミリアは優秀な冒険者である。諦めたらそこで人生が終わってしまう可能性が大きいだけに、生きることを止めないと言っているのだから。

「セーナちゃん、今の魔力で支援を何処まで延長できる?」

「ミリアお姉さんが欲しいのはエアウォークとマイティアップだけですよね?」

「それ以上はいらないよ。セーナちゃんの負担になりたいわけじゃ無いから」

 ミリアの簡潔な答えに、沙更はムーンシルバーロッドに変化した事での魔力使用量の変化を頭に入れつつも答える。だが、それに魔法の進化は入っていなかった。

「今なら、数時間くらいなら維持出来るはずです」

「なら、お願い。ここであたしの出来る事を全てしきってくる」

 ミリアの言葉に、ここを死に場所に決めたことを沙更は感じ取る。だけど、そうさせるわけにはいかない。そう、巻き込んだ側の沙更がミリアをここで死なせるわけには行かなかったからだ。

「食い止めるのは私も一緒です。ミリアお姉さんをみすみす死なせませんから」

 二人のやりとりを聞いていたガレムがそこに待ったをかけた。

「ったく、二人して先走りすぎだっての。俺も混ぜろ」

「ガレムさんもですか?」

「ガレム、死ぬことになるけど大丈夫?」

「そもそも、セーナちゃんがそうさせると思ってるのかよ?それと出来る限りのことはしておかねえとな。リーダーとヘレナは厳しいだろうが、俺とミリアならある程度まで間引けるだろ?」

 パウエルとヘレナよりもミリアとガレムの方が今となっては実力が上になってしまっている。それだけに、ここで食い止め役をするのは三人だけ。

「ミリア、ガレム。良いのか?まだ逃げられるかもだが」

 パウエルがそう声をかけるが首を振る。どちらにしろ、逃げる人々にモンスター達を近づけさせるわけには行かない。少しでも良いから時間稼ぎをする必要があった。

 余り長く時間を稼げないだろうとミリアもガレムも分かっては居る。それでもやらなければならないことだけは頭にあった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クゥクーの娘

章槻雅希
ファンタジー
コシュマール侯爵家3男のブリュイアンは夜会にて高らかに宣言した。 愛しいメプリを愛人の子と蔑み醜い嫉妬で苛め抜く、傲慢なフィエリテへの婚約破棄を。 しかし、彼も彼の腕にしがみつくメプリも気づいていない。周りの冷たい視線に。 フィエリテのクゥクー公爵家がどんな家なのか、彼は何も知らなかった。貴族の常識であるのに。 そして、この夜会が一体何の夜会なのかを。 何も知らない愚かな恋人とその母は、その報いを受けることになる。知らないことは罪なのだ。 本編全24話、予約投稿済み。 『小説家になろう』『pixiv』にも投稿。

目覚めたら魔法の国で、令嬢の中の人でした

エス
恋愛
転生JK×イケメン公爵様の異世界スローラブ 女子高生・高野みつきは、ある日突然、異世界のお嬢様シャルロットになっていた。 過保護すぎる伯爵パパに泣かれ、無愛想なイケメン公爵レオンといきなりお見合いさせられ……あれよあれよとレオンの婚約者に。 公爵家のクセ強ファミリーに囲まれて、能天気王太子リオに振り回されながらも、みつきは少しずつ異世界での居場所を見つけていく。 けれど心の奥では、「本当にシャルロットとして生きていいのか」と悩む日々。そんな彼女の夢に現れた“本物のシャルロット”が、みつきに大切なメッセージを託す──。 これは、異世界でシャルロットとして生きることを託された1人の少女の、葛藤と成長の物語。 イケメン公爵様とのラブも……気づけばちゃんと育ってます(たぶん) ※他サイトに投稿していたものを、改稿しています。 ※他サイトにも投稿しています。

【完結済】悪役令嬢の妹様

ファンタジー
 星守 真珠深(ほしもり ますみ)は社畜お局様街道をひた走る日本人女性。  そんな彼女が現在嵌っているのが『マジカルナイト・ミラクルドリーム』というベタな乙女ゲームに悪役令嬢として登場するアイシア・フォン・ラステリノーア公爵令嬢。  ぶっちゃけて言うと、ヒロイン、攻略対象共にどちらかと言えば嫌悪感しかない。しかし、何とかアイシアの断罪回避ルートはないものかと、探しに探してとうとう全ルート開き終えたのだが、全ては無駄な努力に終わってしまった。  やり場のない気持ちを抱え、気分転換にコンビニに行こうとしたら、気づけば悪楽令嬢アイシアの妹として転生していた。  ―――アイシアお姉様は私が守る!  最推し悪役令嬢、アイシアお姉様の断罪回避転生ライフを今ここに開始する! ※長編版をご希望下さり、本当にありがとうございます<(_ _)>  既に書き終えた物な為、激しく拙いですが特に手直し他はしていません。 ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』

宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?

追放された万能聖魔導師、辺境で無自覚に神を超える ~俺を無能と言った奴ら、まだ息してる?~

たまごころ
ファンタジー
王国一の聖魔導師アレンは、嫉妬した王子の策略で「無能」と断じられ、国を追放された。 辿り着いた辺境の村で、アレンは「ただの治癒師」として静かに暮らそうとするが――。 壊れた街を再生し、疫病を一晩で根絶し、魔王の眷属まで癒しながら、本人はただの村医者のつもり。 その結果、「あの無能が神を超えた」と噂が広がり、王と勇者は頭を抱えることに。 ざまぁとスカッとが止まらない、無自覚最強転生ファンタジー開幕!

黒豚辺境伯令息の婚約者

ツノゼミ
ファンタジー
デイビッド・デュロックは自他ともに認める醜男。 ついたあだ名は“黒豚”で、王都中の貴族子女に嫌われていた。 そんな彼がある日しぶしぶ参加した夜会にて、王族の理不尽な断崖劇に巻き込まれ、ひとりの令嬢と婚約することになってしまう。 始めは同情から保護するだけのつもりが、いつの間にか令嬢にも慕われ始め… ゆるゆるなファンタジー設定のお話を書きました。 誤字脱字お許しください。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ
恋愛
完璧と評される公爵令嬢のエレノアは、順風満帆な学園生活を送っていたのだが、自身の婚約者がどこぞの女生徒に夢中で有るなどと、宜しくない噂話を耳にする。 直接関わりがなければと放置していたのだが、ある日件の女生徒と遭遇することになる。

処理中です...