月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第317話 モンスターの波をせき止めて

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月の魔女とよばれるまで

第317話 モンスターの波をせき止めて

 沙更のムーンシルバーロッドから真っ白になるほど視界を真っ白な雷が放射線状に伸びて焼き尽くしていく図は、まさに神の雷そのものであった。沙更の異世界の知識を魔力で再現したそれは、途方も無いもの。

 流石に、ここまで来ればモンスターの波に瘴気が含まれていることに荒野の狼の面々は気付いていた。そして、その瘴気ですら神の雷が浄化していくのもだ。

「セーナちゃんの魔法が瘴気を浄化していく。あれだけの威力と浄化の能力を併せ持つと言うの!?」

 ヘレナの魔法の知識では、沙更の異世界の知識を元に再現された魔法の凄さに驚くしか無い。そして、魔力そのものの凄さに付け加えて、あれだけの真っ白な雷を今の魔法士では再現が出来ない事くらいは理解していた。

 モンスターの波を半壊させた神の雷が消えると沙更とセーナは、モンスターの波の後ろに邪悪な存在が居る事に気付いた。

『この感じは、あの時戦った存在が後ろにいる?』

『沙更お姉ちゃん、あのそんざいがくるよ』

 そう、モンスターの波の後ろにいるのは月女神の眷属であった邪神になりかけの亜神であった。彼は気付いていないが月女神との接続は既に切れている。

 そもそも、彼が異世界の邪神の口車に乗せられた時点で接続が切れてしまっていたのだがそれに数千年気付いていない辺りで、鈍いと言えるだろう。

 そして、間違った方法で月女神を復活させようとして人の世に混乱をもたらしているあたり、既に相容れないことになっているとも気付いていないのだから。

 モンスターの波も半壊したとは言え、まだモンスターの半数は生存している上に瘴気による強化が入っていることで通常時よりもさらに凶暴化していた。

 月女神の眷属が来ると分かっているだけに、これ以上の邪魔はされては困る。それでなくても前は撃退するので限界で、完全に倒しきるには火力が足りていなかった。だが、今なら同じ魔法でも威力増加を望めるだろう。

 とは言え、モンスターの波を消さない限りこちらに勝ち目があるかと言えば厳しすぎた。

 沙更とセーナが月女神の眷属を感じれば、あちらも当然感じ取る。亜神としてほぼ同格なだけに、そこの部分も似たり寄ったりと言うべきだろうか?

「あの小娘、まだ生きていたか…。と言う事は月女神様も側に居ると言う事か?」

 月女神の眷属もセーナと沙更の事を感じ取る。だが、目的が月女神の復活なだけに沙更とセーナの魂だけにしか興味が無いと言った格好だ。

 そして、モンスターの波の半数を失ったとは言え、まだ数の上では全然優位に立っているだけに数で押し切ることにしたようだ。人間相手ならば、それが一番効力があると分かっているのもあってそれを止めようとはしなかった。
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