月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第318話 月の浮上1

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月の魔女とよばれるまで

第318話 月の浮上1

 モンスターの氾濫の半数のモンスターが再度勢いを持って沙更たちに突進してくる。それを迎撃していくのはミリアとガレムだった。

「これ以上は近づかせない」

「まったく、これだから面白え。俺にも暴れる機会をくれるんだからよ」

 ハイマイティアップのおかげで、二人の動きは突進してくるモンスターの群れにも対応していた。ミリアの白の直刀とガレムの炭素鋼の斧が振るわれる度に、モンスターが崩れ落ちていく。その速度は既に人間を超えていて、一瞬のうちに数体まとめて切り刻まれてしまっていた。

 その速度ですら数千のモンスターを相手取るには厳しい。だが、それでもミリアとガレムは退く気は無かった。沙更を守る為、ここで倒れようとも悔い無しの気持ちであったから。

 次々と襲いかかるモンスターを二人で捌いていく。ハイマイティアップで身体能力を相当強化されているとは言え、それでも風よりも早い速度で動き回るのは正直厳しい。自身の能力がそれだけ一気に跳ね上がって行っていると言う証であった。

 Bランクモンスターを瞬時に切り裂いていけば、それだけ能力も上がろうというもの。それだけの事が出来る人間は早々いない。Aランク冒険者でもこれだけBランクモンスターを次々倒せるかと言えば厳しい。それを成し遂げているあたりミリアとガレムの成長が途方も無い。一気に強くなっている上に、これだけのモンスターを相手取る経験は何物にも代えがたいことであった。

 ミリアとガレムが時間を稼いでいる間、沙更とセーナの二つの魂は一気に魔力を練り上げていた。辺境に魔力が戻ってきたことで、月女神の宮殿でもあり魔力の源である月が空に戻ろうとしていたからだ。そのためにも膨大な魔力が必要になる。

『この地に、これだけの魔力が戻るのは私がいなくなって以来無かった事よ』

『月女神様、月を宇宙に返したく存じます。私とセーナちゃんの魔力だけで足りるでしょうか?』

『今の貴女達二人なら、月を浮かび上がらせることも可能でしょう。それに、それだけの魔力はもう操れるはずよ』

 月女神は、今の沙更たちが扱える魔力量がほぼ自身と同じくらいだと言うことを分かっていた。一つの魂を二つに割ったその欠片同士で、結びつきが強くなればそれだけ魔力を扱える量も質も跳ね上がるのは当然の事。

 太古の昔、月は海の底に落ちて大災害をもたらした。月女神という主を失い、墜落したのだ。月女神がいなくなったことで魔力を失い、古代魔法文明は滅んだ。が、数千年の時を経て月はまた宇宙に戻る時が来ていた。

 沙更とセーナの二人が紡ぐ魔力は、既に人の限界値を遙かに超えてムーンシルバーロッドでも制御しきれるか怪しい位まで練り上がっていた。余りの魔力に可視化どころか、周囲を威圧してしまうほどの純粋な魔力はまさに月女神が蘇っている証でもあった。

 余りの魔力量に、モンスター達の動きも鈍くなる。その状態をミリアとガレムが見逃すはずも無く、次々と討伐していく。白の直刀はまだ大丈夫だが、流石に数百もモンスターを倒していると炭素鋼の斧の方が限界に近づいてきていた。

「流石に、これだけ相手取れば相棒もきついか」

「ガレム、武器が厳しいんでしょ?もう戻って、素手でなんとかなる相手じゃない」

「分かってる。ちっ、ミリア済まねえ。後を頼む」

 ガレムとしてもここで炭素鋼の斧を折る訳にはいかない。これ以上の戦闘が厳しいのは分かっていたからこその言葉だった。ミリアの白の直刀も魔力の刃だけに、ミリア自身の魔力消耗はそれなりだった。が、それ以上に成長が著しいことから魔力の器が大きくなったことによる回復の値が増えていることに気付いていなかった。
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