月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第319話 月の浮上2

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月の魔女とよばれるまで

第319話 月の浮上2

 沙更とセーナが紡いだ超膨大な魔力は、モンスター達を萎縮させていく。それだけでなく、辺境より離れた海に沈んだ月にその魔力の波長が届こうとしていた。

 主を失い落下して数千年。再び浮上する時が来るとはあの時には誰も想像し得ない。だが、確実に時は来ていた。

『微弱な魔力を感知。この星から感知出来る魔力量、徐々に増大中。魔力の流れを逆探知開始………。逆探知成功、古代文明の跡地側から超巨大な魔力を検知。月女神と魔力の質が同等と確認』

 沙更とセーナの魔力を感知した月は、その魔力を月女神と同じだと断じた。それは、主が戻ったことを意味する。ならば、月は微弱な魔力を糧に浮上の準備を開始し始めた。

 この星から失われていくはずだった魔力が徐々に戻りつつある今、月の浮上に必要な量が溜まるまで時間は掛かるものの出来ないわけではなかった。

 そこに、月の逆探知を確認した沙更とセーナが自身の魔力を月へと送り込む。ムーンシルバーロッドから膨大な魔力が逆探知から感じ取れた場所へと。

 沙更とセーナの魔力を月に送り込んだ事で、一気に浮上の準備が加速度的に整っていく。流石に億単位の魔力を受けたことで、加速できるだけ加速した結果だった。

 沙更とセーナの魔力を受け取った月は、浮上の準備を終えるとその魔力で海の底から数千年の時を経て浮上を開始した。

 月の浮上は、シルバール王国だけならず他の国でも観測され、今までに無いことから恐れを抱かせるには十分過ぎるほどの衝撃を与えることになる。

 そして、月の浮上に月女神の復活を目指していた元月女神の眷属は驚くしかなかった。それもそのはず、月は月女神の宮殿。力の拠り所であったから。月女神が亡くなった時に地上に落下し、地上の文明を滅ぼした元凶でもあった。

 それが、今浮上していくとなれば既に月女神は復活していると言う証である。ようやく、ここに来て月女神の眷属は月女神が復活していることに気付いた。

「なっ、御方が復活している!?ならば、なぜ我が気付かなかった!?」

 既に、己の行為で接続を絶っていることを気付いていないだけにその格好は滑稽でしかない。モンスターの氾濫も余りにも膨大な魔力の圧に、堰き止められてしまっていた。それだけに、確認するとなれば自身が出向くしかない。

 月の浮上により、海面がうねり高く荒れる。だが、それ以上に今まで地上に有ったものが浮かび上がったのだから一気に削れた所へと海水が流れ込んでいく。月があったことで、海流が数千年の間変化していたのも浮上によりさらに変化していくことになる。

 圧倒的な魔力の圧から解き放されたモンスターの氾濫は、再度沙更たちを飲み込もうと襲いかかる。そこに、淡い光の奔流がモンスターたちを飲み込んだ。
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