月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

第322話 月女神の復活

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月の魔女とよばれるまで

第322話 月女神の復活

 封印を解除し、月が昇った今、月女神はここに復活を果たしたと言える。身に纏う魔力は既に数十億を超えて、さらに伸びている。

 あまりの量の魔力は、元月女神の眷属に圧をかけていく。しかも徐々に強くなっていっていた。

「くっ、これほどの力だというのか!?」

「眷属でいた時は争いすら無かった時期が多かったわ。それに、貴方がいる時に本気を出してはなかったのだけど気付いていたかしら」

 古代文明は月女神と人間の蜜月の時期そのもの。それ故に、人間達が異世界の邪神と戦ってくれていたこともあり、月女神が自ら動くことは滅多に無かった。なればこそ、その力を使ってこなかったのだ。

 だから、元眷属は月女神の力を見誤ったとも言える。

「半神は確かに人間を超えるほど強いわ。でも、神には及ばない。それに、私は神の中でも特別だもの」

 月女神は淡々と語ってゆく。沙更やセーナ、パウエル達荒野の狼は知っている。月女神はこの世界を造った創造神とほぼ同じ力を持ち合わせていることを。

 力が強い方が強いのはいつの時代も変わらぬ理だけに、元月女神の眷属の顔が引きつってしまうのも無理はない。そもそも人間と半神では天と地の差があるが、半神と神にも同じ事が言えるのだから。

 それでも紫の大剣を抜く辺りは、心までは折れていない証であった。

「我は御方を…」

「それ以上は言わせないわ。聞きたくもない。選択をしたのは貴方なのだから」

 元眷属の声を月女神が声をかぶせてかき消す。側を離れたのは眷属の方だから、聞く気はないのだと拒絶されたとしても文句は言えない。

 月女神の内で聞いている沙更とセーナには、月女神が悲しんでいるのが分かった。そそのかされる理由を作ってしまったのは自分だと分かっているが、それだとしてもその選択をしたのは眷属である目の前の男であった。だから、沙更にしてもセーナにしても目の前の男が独りよがりなのを感じざるを得ない。

 未だに伸びつつける魔力は、元眷属に圧をかけ続けていく。余りにも強い圧に、思わず身をすくめそうになり慌てて態勢を整えていたが月女神には筒抜けだった。

「魔力の圧だけで、圧されそうになっているようでは勝てるものも勝てませんよ?」

「くぅ、これほどの力をもつ神ならばなぜあの時に討たれたのだ!?」

「あの神が放り投げたこの世界に残ったのは私のみでした。残った世界に加護を与えられるのも。その加護を与えた人間に裏切られたのです。恨みはしませんでしたが、もの凄く悲しかった」

 その時のことを思い出して、月女神はそれだけを伝える。そう、それ以上の事は必要ない。ただ問われたことに答えただけ。

 既に魔力は数千億を超えて、それでもまだ伸びていく。創世神とほぼ同等と言われるだけの力はあるとここに体現していた。
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