月の魔女と呼ばれるまで

空流眞壱

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最終章 目覚める神

最終話 二つ名 月の魔女

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月の魔女とよばれるまで

最終話 二つ名 月の魔女

 カタリーナの報告が終わったところで、ジークに連れられて辺境伯の屋敷から退出することになった。

「奥様とお嬢様を助けて貰ったこと、感謝している」

 唐突にジークは礼を述べる。カタリーナやリエットが感謝を述べた場で、さらに述べるわけにはいかなかったからだろうと沙更は推測しただけに、その言葉を素直に受け取る。

「ジークさん、その気持ちだけ受け取っておきます。私たちは、ここを守りたかっただけですから」

 そう言って、ジークと分かれる。屋敷を後にして向かうは冒険者ギルド。ウエストエンドの住人達が、沙更達を見て手を振ってくれる。辺境のことはまだ知られていないが、それでも森の異変と戦に勝った事により認知度が上がっていたのだ。

 冒険者ギルドの扉をくぐるとそこにいた冒険者達が、沙更達を見てさっと道を譲ってくれた。受付には、戻ってきたことを聞きつけたのかサブギルドマスターのルーカが待っていた。

「お帰りなさい。もうカタリーナ様への報告は終わったの?」

「そちらは先に済ませてきました。無事、辺境のモンスターの氾濫を終息させてきました。かなり無茶する形になりましたけどね」

「生きて戻ってきてくれただけで十分なのに、そこまでしてくれちゃって。そう言えば、ギルドマスターとは会えたんでしょう?」

「ダイスさんには、結局後始末だけ頼んだ格好になってしまいました。モンスターはこちらで半数弱を相手取りましたから」

 ダイスに会ったが結局戦闘には間に合わなかった事と後始末を頼んだことを伝えておく。ルーカも聞き及んでいるのか、支部長の話題は出さない。が、それにしてもモンスターの氾濫の半数を相手取ったと伝えたらルーカの表情が変わった。無茶したと先に伝えたのだが、それでも心配させたらしい。

「もう、生きて帰ってきてくれたから良いような物のモンスターの氾濫の半数ってどれだけのことをしたか分かっているの?そんなに心配させないで」

「ルーカさん、後で膨大な量の魔石の買い取りをお願いします。鑑定にしばらく掛かると思いますから、終わったら声をかけてください」

 沙更がそう言ったところで、後ろの冒険者達がざわつき始めた。流石に数千ものモンスターを相手取って戻ってきたなんて冒険者は今までにいたかどうか怪しい。そして、モンスターの氾濫を冒険者の1パーティーだけで半数も叩いたなんて偉業は、聞いたことも無かったからだ。

 そんな冒険者たちの様子を見つつも、ルーカはパウエルたちに冒険者ギルドとしての報酬を出すことにした。そもそも、これだけの大規模なモンスターの氾濫は20年以上前になる。小規模なものは数年前にもあったが、別の領地ではかなりの被害が出ていた。

 モンスターの氾濫でもこれだけ大規模なものを被害を軽微で抑えきった事自体が名誉であり誉れであった。そして、ルーカは既に決めてあった事項を伝える。

「冒険者セーナは、今回のモンスターの氾濫に対する功績を持ってBランク冒険者に昇格。二つ名月の魔女を送ります。ありがとう、みんなを守ってくれて」

「ルーカさん、パウエルさんたちが無茶してしまうのは私の所為でも有ります。だから…」

 沙更としてはそう言うに留める。それ以上言う事は違う気がしたし、パウエル達の為にもならない。

「言いたいことは伝わっている。だから、セーナちゃんその二つ名を受け取って欲しい」

 ルーカの言葉に、沙更は頷く。

 ここに、月の魔女の名が初めて呼ばれ、それが他の大陸にも聞かれるようになるのだがそれは後の話。冒険者ギルドからモンスターの氾濫で出た報奨金は大金貨25枚。流石に、それ以上は用意できなかったそうだ。


 冒険者ギルドから出た荒野の狼は、ここで一時解散した。かなりの強行軍で動いていたこともあり、休んだとは言えしっかり報告も終わったことから思い思いに休むことになったのだ。

 ミリアと沙更は、孤児院へ戻る。ここが二人の居場所だから。 
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