月の魔女と聖剣

空流眞壱

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序章

第3話 ウエストエンドの今後

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月の魔女と聖剣

第3話 ウエストエンドの今後

 辺境伯カタリーナは、沙更にウエストエンドの今後に関わって欲しいと思ってのお呼び出しだったらしい。知恵を借りたいのも本当のところで、新しいウエストエンドをどうするか決めようと考えていた。

「今のウエストエンドは問題が山積しているわ。スラムの件もそう、古い建物を残すか壊すかもある。なかなか難しい舵取りなのだけれど、治安の悪化は早急に対策しなければならない」

「スラムを無くすためには、スラムの人々に仕事を与えなくてはなりません。カタリーナ様は、領主としてそれだけの仕事を生み出すことは出来ますか?」

 沙更の問いにカタリーナは頷く。

 結局の所、仕事に付けない人間がかなりの数いるのは事実。少し前までは不景気の底にいたのだから、ここ数ヶ月が凄すぎるだけで今までは領主すら治安悪化に拍車をかけていたのだ。

 正式な辺境伯に戻ったこの機会が、ウエストエンドの今後を占う上での重要な分岐点になるとはこの時のカタリーナは思ってもいなかった。

「兵士たちの警邏の回数を増やしても窃盗や強盗の数が減らないのは大問題よ。古い住民たちから強く要望されてしまっているの」

「カタリーナ様、治安を守るのを騎士や兵士達だけでやったら人手が足りないのも当然です。ウエストエンドはそれほどに人が多いのですから」

「冒険者にさせると言うの?」

 カタリーナから出た言葉に、沙更は首を降る。冒険者だけでは目が行き届かない。住んでいる街に愛着があるのは住人たちであるのだから。

「出来れば、昔から住んでいる人たちも参加して欲しいと思います。兵士たちが知らない路地なども住んでいる人たちならば分かるでしょう。スラムに詳しい人もいるかも知れません。出来ればこの街の正確な地図を作る位はしないと追いつかないかも知れません」

 異世界の知識も併せ持つ沙更ならではの意見にカタリーナは目を丸くしていた。そもそも、騎士と兵士たちだけでなんとかしようと考えていたのだから、住人たちの知恵を借りるなんて発想がない。ある意味、貴族の価値観に捕らわれていたと言って良い。

 ウエストエンドを一番知っているのは領主では無く住む住人たちであるなんて言えるのは沙更だからで、他の人達ではその発想はなかっただろう。治安を守っているのは兵士たちや騎士たちであり、それ以外では冒険者の手を借りる位しか無かったのだから。

 スラムは兵士たちに分からないように日々拡大していっている。それを止めるのは、その近くに住んでいる住人たちに知恵を借りるのが一番手っ取り早いのもまた事実。兵士たちでは、警戒されて話してくれない事も住人同士ならば聞けるかもしれないと考えれば、別の角度から治安維持に参加させることも出来る。

 地図は領主が認識しているウエストエンドとスラムが拡大したことで現状のウエストエンドとの違いを認識させる為、兵士たちや騎士たちが知らない路地などもあることを想定してだった。
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