月の魔女と聖剣

空流眞壱

文字の大きさ
27 / 211
王都へ

第23話 王都手前の大戦(おおいくさ)3

しおりを挟む
月の魔女と聖剣

第23話 王都手前の大戦(おおいくさ)3

 小要塞を築き上げた沙更たちは、要塞の中に立てこもった。貴族の私兵たちが弓矢で攻撃するも岩で出来た壁には歯が立たない。魔法で仕掛けても今度は壁に施された沙更のディヴァインベールの魔法で包み込むようにかき消されてしまう。

 遠距離からの攻撃を完全に防御されてしまうことに、貴族の私兵の隊長は頭を抱えることになった。数を頼りに時間を掛けずリエットの身柄を確保する予定が、完全に目論見を外されてしまったからだ。

 こうなっては下手に近づかせるわけにも行かず、兵を退かせるしかない。いきなりの攻城戦に対応出来る訳がなかったからだ。

 ここまでの要塞をあっという間に作る能力があるとは思ってもみなかったのが本音であり、他の兵士たちも同様だった。

「まさか、これだけの要塞を作り上げる力があるとはな」

「あまりにも想定外過ぎます。しかも弓矢のみならず、魔法も効果がないなどと考えられない事態になっており、兵士たちの士気は下がる一方です」

 まさかの事態であった。街道側に小さいながらも要塞を作ることが出来る魔法士など聞いたことがない。土魔法を修める者でもあれだけの大掛かりな代物をあっさりと作ることなど出来はしなかった。

 それをやってのける人材があちらにいる。魔法を同時にいくつも操れる時点で、魔法士として突出していることを意味する。他の人間に出来ないことをあっさりとやってのけることこそ、沙更が沙更たる所以であった。

 貴族の私兵たちの攻撃が収まった後、兵が退いて行くのを見て沙更は夜襲を計画する。相手の数が問題なら減らしてしまうのが一番手っ取り早いし、相手が引きこもって時間を稼ぐだろうと読むと踏んでいた。少数だから、打って出るなど愚策だと思っているのを逆手に取る為だ。

「さてと引きこもってばかりでは、相手にこちらの強さは分かって貰えませんし、面白くもありませんからやり返しておきましょう」

「あまりにも大胆じゃないか?だが、敵が油断しているのなら効果はあるだろう」

「きちんと私の魔法て援護はしますし、補助もしっかり入れます。範囲攻撃魔法で驚かせますから、パウエルさんやガレムさんにミリアお姉さんは大暴れしてきてください。言われなくても、退路はきっちり確保しておきますから安心して下さい」

 一番の問題である退路すら確保出来るなら、仕掛けることも視野に入ってくる。だが、沙更の攻撃魔法はどちらにしろ強力過ぎることがある為、怖さがある。やり過ぎてしまう可能性を秘めていた。

 それでも反対意見が出ないのは、やられっぱなしは冒険者としての沽券に関わるからであり、沙更の作戦事態を効果的だと3人とも分かっていたからだ。

 戦のセオリーを考えれば下策のはずだが、相手の心理の裏を付けばどれだけ効果的なのかは沙更の異世界の知恵が教えていた。

 強いて注意するのは、退く場を作ることだけ。それさえ確保出来れば上々の結果になるだろうと誰でも想像がつく。

 しかし、実行出来るのはほんのわずか。夜襲をやるとしたら今夜が一番適していた。相手はこちらが籠もって動かないだろうと高をくくっているだろうから。 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界子供ヤクザ【ダラムルバクト】

忍絵 奉公
ファンタジー
孤児院からスラムで育ったバクト。異空間収納と鑑定眼のダブルギフト持ちだった。王都西地区20番街では8割を縄張りとする先代のじいさんに拾われる。しかしその爺さんが死んだときに幹部同士のいざこざが起こり、組は解散。どさくさにまぎれてバクトが5・6番街の守役となった。物語はそこから始まる。7・8番街を収めるダモンとの争い。また後ろ盾になろうと搾取しようとする侯爵ポンポチーコ。バクトは彼らを越えて、どんどん規格外に大きくなっていく。

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

イジメられっ子世に憚る。

satomi
ファンタジー
主人公須藤正巳はぼんやりと教室で授業を受けていた。その時、突然教室中に物凄い量の光が…。 正巳が属する2-C全員が異世界転移することとなってしまった。 その世界では今まで正巳が陰キャとして読み漁ったラノベともゲームとも異なり、レベルがカウントダウン制。つまりレベル999よりレベル1の方が強い。という世界だった。 そんな中、クラスのリーダー的陽キャである神谷により全員で教室の外に出ることに。 いきなりドラゴンに出会い、クラスの全員がとった行動が『正巳を囮にして逃げること』だった。 なんとか生き延びた正巳は、まず逃げた連中へ復讐を誓う。

処理中です...