月の魔女と聖剣

空流眞壱

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極星騎士団と王都冒険者ギルド

第60話 辺境へ戻る

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月の魔女と聖剣

第60話 辺境へ戻る

 リエットの学園の話を聞いて、貴族優位の現状は変わらないことを感じつつ、リエット自身が1人ぼっちになりながらも他貴族からの嫌がらせを交わしているのを聞いてほっとしていた。けれど、それも長く続かないことは理解できた。

『リエット様が頑張っているうちに一回辺境に戻って、再度王都に出てきた方が良い。カタリーナ様にも報告しなければならないこともある。王都がここまで腐った場所になっていると思っていないはずだから』

 1人でなんとかしている間に、貴族たちの動きを牽制する必要があった。騎士団ですら貴族達の利権にがんじがらめの状態では話にならない。ガーゼルベルトに頼むこともあるかもしれないが、それは最終手段に取っておきたかった。いかにリエットの件とは言え、すぐに動けるとは思っていなかったからだ。

 それに、一回王都から離れて辺境に戻る方が良いだろうと沙更は思っていた。王国騎士団の件があって、居残るとかなり面倒なことになりかねないと頭が警告を発していた。貴族達がいちいち突っかかってくることも考えられるだけに、いったん避難するのは悪い策ではなかったからだ。

 その分、リエットの守りが薄くなるが今となってはジークも王都に来ていることでそこまで薄くならないだろう。ジークの負担になるが、離れるなら今であった。

「リエット様、今回のオーク大発生事態が問題を引き起こすことになりそうです。なので、一回辺境に戻ります」

「小さい治癒士様、わたくしの事を心配してくれているのですね。ジークが来ているので、頼ることになりそうです。もう王都には来られませんか?」

「カタリーナ様に報告をして、ある程度したらまた王都に出てくるつもりです。辺境はモンスターの氾濫以後平穏そのものでしょうから、荒事があってもそこまで大規模にならないと思っています」

 沙更として、そこまでは説明しておく。どちらにしろ、王都自体がかなりの問題を抱えてしまっていることに付け加えて、王家の力がなさ過ぎることなどもあり一筋縄ではいかない。

 辺境は今変革の時期に来ていて、豊かになっていくのを感じられるほどで王都の暗い雰囲気とは真逆であった。働けば働くだけ還ってくるのが辺境であり、働くだけ搾取されるのは王都であった。極端とはいえ、ここまで正反対すぎると民の大移動が生まれかねない。

 もしかしたら、辺境伯領だけ王国から独立する事も頭に入れて行動せざるを得なくなるかもしれない。ガーゼルベルトが望まなくてもカタリーナが辺境の人々を切ることはあり得ないと分かっているから。そうなったときに押し寄せるのは王家の騎士団ではなく、上位貴族の私兵になるのは目に見えていた。

 リエットとのお茶を終えるとガーゼルベルトが居る屋敷に戻る。今日も極星騎士団は宰相の屋敷の敷地内で、猛訓練に励んでいた。完全に王国騎士団との練度の差が計り知れない事になっている気がしてならない。真剣での模擬戦が普通に行われている時点で、訓練の質が違いすぎたからだ。実戦経験をどれだけ生かすかが騎士の生死を分けると直に分からせるための物で、それだけの練度があると言う目安でもあった。

 しかも副団長のナゼルが直々に騎士団員たちに指導している上に、模擬戦をしっかりこなしていた。それだけ、厳しい訓練になっていると言う目安でもある。副団長直々の指導など他の騎士団ではまずあり得ない話であり、それだけしっかり指導しつつ練度を上げている証だ。

 訓練しているのを見つつも屋敷の方へ移動していく。屋敷まで着けば、入り口がひとりでに開いていく。どうやら扉の前まで来ていることが分かっていたらしく、来たときにお世話になったメイドさんが扉を開けてくれたのだ。

「旦那様ならば、冒険者ギルドから帰ってきて王宮に出仕されました。急ぎの要件がありましたら伺いますが?」

 メイドの言葉に、沙更は首を振る。王宮に出ているのに、こちらの都合で呼び戻すわけにはいかないから伝言を頼むことにした。

「急ぎではありませんが、いったん辺境に戻ります。カタリーナ様にも報告することもありますし、いったん食料などを辺境で仕入れをしておきたいからと伝えてもらえますか?」

「辺境にお戻りになられるのですか?それでしたら、旦那様からカタリーナ様宛の手紙を預かっております。こちらも一緒にお持ち願えますか?」

 メイドから差し出された手紙を沙更は意識せずに虚空庫へ送る。手紙だから腐ることは無いが、内容にかなりの秘匿事項が混ざっている事をなんとなく察したからだ。虚空庫ならば沙更にしか開けないし、入れることも出来ない。それだけに秘密の保持も出来た。
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