月の魔女と聖剣

空流眞壱

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辺境伯対他貴族

第74話 カタリーナ動く

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月の魔女と聖剣

第74話 カタリーナ動く

 沙更達が孤児院で高位貴族からの妨害に遭っている頃、辺境伯の屋敷にてカタリーナが動き出していた。辺境は辺境伯の土地、他の貴族が手出しをしていい場所では無かった。

 そして、その禁を犯したとなれば動くのもまた当然であった。

「辺境に手出しをして生き残った貴族はいないというのに、王家の力が弱ったことを良いことに専横するのならば我らが動くと言うことを忘れているのね」

 カタリーナは千年前からの王家との盟約を守って動く。辺境はフィリエス家の領土であり、他の貴族達がどうにか出来る場所ではない事を。ガーゼルベルトには人を遣わして、今回の件の報告をしておいてある。辺境伯を託されて10年が経って、アランの事も決着が付いた今カタリーナを止めるものは何も無かった。

『伯父様、わたくしがあの子に出来る事は、ここを守ることだけ。だから、辺境伯家としての力を使うわ』

 辺境を知り尽くしているだけに、他の貴族が追い落とそうとするのならばこちらもやり返すだけ。そして、まだカタリーナは知らないが既に沙更の逆鱗に触れていたのだから。

 商業ギルドで暗躍しているのは沙更からも聞いていたし、配下の者からも報告を受けていた。もし、商業ギルドがここで辺境の民を虐げると言うのなら、領主として許すわけには行かない上にやり返す必要があった。辺境は誰の土地であるかと言うことを。

 領主として動くとなれば、貴族としての責任も当然発生する。だからこそ、今までは動けなかった。が、ここまで仕掛けてきたのならば動くしかもう選択肢は残っていない。

 それは、他の貴族にとってかなりの誤算になるだろうことは否めなかった。そう、こんなに早くカタリーナが動くことになろうとは予想もしていなかっただろうから。


 カタリーナが動くと決めた頃、王都シルバールでは国王ジョージ41世が宰相であるガーゼルベルトと会談していた。

「辺境に高位貴族たちが仕掛けたと聞いた。カタリーナに援軍は必要では無いのか?」

「わしがあの子が動くと決めた事をよしとしないとでも?」

「そなたのことだから、心配してそうじゃなあと思っただけのことよ」

 ジョージ41世はガーゼルベルトの心をなんとなくだが分かっていた。ガーゼルベルトに取って、カタリーナは後継者であり、妹の忘れ形見でもある。それ故、己に子供が出来なかった事を妻に責めたことすらなかった。そう言う定めなのだと理解して。

「あの子には彼らもいる。助けになってくれるはずだ」

「王都を助けてくれた冒険者たちか、彼らは辺境出身だったな。それにしても叔父上はまだ良いとしても従兄弟や再従兄弟たちはそろいもそろって公爵家の手の者たちの手のひらで踊っているのが分からないものなのかの?」

 ジョージ41世としては、そこが理解出来ない。それだけ力に飢えていると言うことでもあるのだが、自分の運命を他人に託すと言うのがどうも理解出来ないのだ。そこの辺りは流石に王の座にいると言うことなのだろう。
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