月の魔女と聖剣

空流眞壱

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聖剣の鞘の行方

第124話 団体での旅路

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月の魔女と聖剣

第124話 団体での旅路

 ガーゼルベルトとリエット、極星騎士団と荒野の狼に平民達と400人ほどの一団が王都からウエストエンドへと動いていく。途中の道中、他の領主達がちょっかいを出してくるかと思いきやガーゼルベルトが陣頭指揮を取っている事が知られると他の領主達は静観を決め込んだ。

 元々、カタリーナに盗賊の件で泣きついた事もあるし、ガーゼルベルトと対立しようものなら己の首があっさりと胴体と物別れになったとしてもおかしくは無かった。ガーゼルベルトとしてはそんなことをしている暇はないわけだが、それを他人がどう思うかは別の話で大いに恐れられていた。

 しかも、王国最高峰の騎士団極星騎士団を連れての行動中である。下手につつけば、領地ごと吹き飛びかねないと思ったのだろう。街道の領主たちは中立派でも小粒な領主たちだけに、まさに触らぬ神に祟りなしを地で行った格好であった。

 盗賊たちも一ヶ月前に、沙更たち荒野の狼が片っ端から壊滅させたばかり。悪さをしようものならば、切り捨てられる。荒野の狼だけでも過剰戦力だと言うのに極星騎士団まで付いていたら、盗賊達に勝ち目はほんのわずかもない。そのことを盗賊たちが理解出来ないわけがなかった。

 街道を順調にウエストエンドへと進む。糧食が心配されたが、その辺は沙更が前に強奪しておいた4000人以上の私兵達の糧食から提供していた為、逃げてきた平民達にも十分な食事を提供できていた。

 基本的に町や村に泊まることなく、街道の脇で野営を続けての旅路であったが季節が春から初夏を迎えたあたりの気候だったのも幸いした。下手に冷え込むこともなく、珍しい事に王都を出てから雨を経験せずに移動できている。

 馬車もまちまちであったが、これまでの旅路で車軸が壊れたりすることもない。既にその時点でかなりおかしいのだが、移住を決めた平民達の誰1人として気づいていなかった。むしろ気づいていたのはガーゼルベルトや極星騎士団の面々であったが。

「流石だな、わしでもここまでやられると絶句するしかないわ。移住する平民達のため、糧食にあれだけの魔法を維持し続けて貰っているのだからなあ」

「大伯父様でもそう思いますか?やはり、治癒士様のお力は相当だと思うのです」

「相当と言うか、絶対に敵に回してはだめなやつだろう。彼女と一戦交えるくらいなら、モンスターの大軍とやり合う方がまだ生き残る確率は高いと思う位だ」

 ガーゼルベルトは真面目にそう言うとナゼルもそれに頷く。敵に回らないと分かっていても、軍人の癖としていざそうなったら勝ち目があるかを冷静に計算してしまう。だが、どう計算しても勝ち目があると答えは出てくれないのだ。その時点で、お手上げである。

 そもそも、平民達の乗る馬車すべてに付与魔法で車体の補強を施していながら、空間魔法を同時展開出来る時点で魔法士の枠を超えている。今は加速魔法を使ってはいないから、それの代わりなのかもしれないが見ている方としてはやりきれない。しかも当人に負担があるのか分からないと思われている辺りで、桁が外れすぎていた。

 王都からウエストエンドまでの道のりは長いが、それでも問題なく動いてこられたのは沙更がかなりの部分で支えていたことだろうとガーゼルベルトもリエットも納得するしかない。
 
 貴族の馬車と平民の馬車ではどうしても作りに差が出てしまう。そして、長い旅路は馬車にかなりの負担をかけるのだ。問題の一つや二つは日常茶飯事になっていなければおかしいところであり、こんなに楽な旅路はありえるはずがない。

 分かっていることとは言え、実際目にするのでは違いがありすぎた。
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