月の魔女と聖剣

空流眞壱

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聖剣の鞘の行方

第129話 ウエストエンドに帰還して

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月の魔女と聖剣

第129話 ウエストエンドに帰還して

 ガーゼルベルトと極星騎士団、リエットと辺境伯および宰相の屋敷で働いていた人々とその家族、そして、荒野の狼の面々とサマンサとケイトの家族がウエストエンドに到着したのは王都を出てから二週間が経過していた。

 古いウエストエンドしか知らないガーゼルベルトと極星騎士団の面々は、新しいウエストエンドに驚いていた。それもそのはず、新しい城壁は前の1.5倍の高さになっている。5m越えの城壁は前の城壁に比べても頑丈で立派な作りになっていた。元々が土壁から石造りに変更されている為、大分頑丈さが上がっている上に高さが上がっているのだからさらに攻めづらい。

「まさか、ここまで高くなるとはな。だが、この高さならば国内でも最大級の防御を誇ると言っても過言では無い」

「石造りの城壁とは下手な攻城兵器でもびくともしないでしょう」

 いつの間に防御を一気に引き上げたウエストエンドに、ガーゼルベルトはここならば防衛も易いと思った。元々、辺境の兵は精強であるし、他の貴族の私兵とは違いがありすぎた。

 現状、防衛戦をするならば負ける要素はほぼ無い。公爵達の軍でもここまでの遠征は厳しいが、それでも強行してくるはずだろうと言うのは読めていた。

 ガーゼルベルトと極星騎士団の注目は城壁に移っていたが、サマンサとケイトや使用人組の注目は王都よりもウエストエンドの綺麗さに驚いていた。王都はスラムが広すぎる故に、どうしても町が汚れた印象があった。が、ウエストエンドにはスラムが無い。そこが一番特殊と言っても良い。

「えっ、街に汚れたところがない?」

「スラムがないって凄くない?」

 この時代、水道がまだほぼ無い上に下水道の概念が無い。魔法文明時代にはあったが、時を経るにつれて無くなってしまっていた。それに、衛生概念も希薄になってしまっていることで、スラムからの疫病もはやりやすいと言うのがこの時代の常であった。

 王都でスラムに慣れてしまっているサマンサとケイト、他の使用人達にとってはウエストエンドはまさに変わった場所であった。ある意味常識の範囲を超えてしまっているし、こんな場所が国内にあるなど思ってもいなかったからだ。

 王都から来た人々には、そんな驚きがあるウエストエンドだがリエットと荒野の狼の面々に取ってはここが故郷であるし、住み慣れた場所である。確かに変化してきているが、辺境自体住みやすく暮らしやすい方向へ舵を切っている。それを手助けしたのは沙更であった。

 ガーゼルベルトが戻ると言う事は既にカタリーナにも知らせてある。既に頼りは届いていた。だから、門のところでカタリーナがジークを伴い待っていたのだった。

「伯父様、お帰りなさい」

 カタリーナの言葉にガーゼルベルトはただ頷く。極星騎士団の面々は、カタリーナが現れたことでいったん解散することになった。ウエストエンドまでの護衛は終わっている。ジークもいるのだから、極星騎士団で動くことはもうない。

 貴族連合軍がウエストエンドまで来るにはまだしばらくの時がかかる。その頃には、また一波乱あるだろうがこの時点では辺境に一切の波乱も起きてはいなかった。  
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