月の魔女と聖剣

空流眞壱

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聖剣の鞘の行方

第137話 オーガの群れ退治1

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月の魔女と聖剣

第137話 オーガの群れ退治1

 沙更がオーガを見つけたことで、パウエル達は臨戦態勢を整えていく。一気に気を引き締めて、馬車を動かして距離を縮める。その切り替えの早さにウィリアムはパウエル達が歴戦の勇士なのを肌で感じていた。

『これが上級冒険者か、流石だ。オーガはまだ目に見えないのに、既にいつでも戦える状態になっている。軍ならば態勢を整えるのにかなりの時間がかかるが、彼らはそれを軽くやってのけるのか』

 そもそも軍と冒険者では戦いに対する意識が違う。軍とは違い、いつ戦闘になってもおかしくない冒険者に取ってその速度が遅いと言うのは自分の命に関わる。それだけに、速度が速いのは当然の話で距離が全然あるとは言え、沙更の索敵に引っかかった時点であちらの出方を待つつもりは無い。

 ウィリアムとリエットに戦闘に参加して貰う予定はない。元々、そちらにオーガを行かせるつもりは毛頭無かった。馬車に近づこうとすれば、沙更の攻撃魔法で迎撃する上に、ミリアやガレムがこちらまで来させはしないだろう。既に役割は決まっているだけに、その通り動くだけであった。

 沙更達の馬車が駆けていく中、開拓村側のオーガの群れを抑えていた騎士と兵士達は既に疲労でいっぱいだった。既に鉄の鎧はボロボロであったし、剣も槍も刃先が欠けたりしていたのはそれだけ抑えてくれていたからだろう。

「くっ、オーガを抑えられるのも今日が限界だ」

「これ以上は持たない。食料が底をついている」

 オーガの群れを抑える為に食料をほどほどに騎士と兵士たちを動員した結果、冒険者達が動かないことで騎士と兵士達の負担が増大し、食料が限界を迎えてしまった。元々砦などがあるわけでは無い上に、野戦で押さえ込んでいただけに負担が相当に大きかったのだ。

 Cランクモンスターでも上位にランクするオーガは鉄の武器では傷つけることは難しい。出来れば鋼鉄以上の武器が無ければかなり厳しい戦いを強いられる。今回は辺境の騎士と兵士達だっただけに、鋼鉄の槍と剣であったがそれでも損耗が激しくこれ以上の防戦は厳しいと言わざるを得ない状態であった。

 そこに高級そうな二頭引きの馬車が走り込む。オーガも騎士や兵士たちもあまりの動きに驚くしかない。さらにそこから出てきたのが20行かないくらいの若者達となれば尚更であった。

「パウエルさん達、今回はエアウォークだけで大丈夫ですか?」

「ああ、それで大丈夫だ。あまりマイティアップに頼りすぎたら勘が鈍ってしまう」

 沙更の問いにパウエル達は頷く。Bランクモンスター以上ならば、マイティアップをかけてもらうのも考えるところであったがオーガだけならば能力の引き上げしなくても対処出来る。冒険者としてはかなり軽装ではあるが、沙更特製の魔法糸の服だけに、そんじょそこらの鎧より余程頑丈であった。

 騎士や兵士達が足を止める間に、パウエルたちは馬車から散って動く。とは言え、パウエルにはヘレナが付いて動いているし、ガレムとミリアは単独行動ではあるがオーガの攻撃を軽々といなしながら各々の武器で痛打を与えていた。

 こうして、オーガの群れ退治の依頼は始まったのだった。
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