月の魔女と聖剣

空流眞壱

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対公爵 対邪神

第185話 貴族連合軍瓦解

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月の魔女と聖剣

第185話 貴族連合軍瓦解

 ガーゼルベルトと極星騎士団の夜襲により、食料を失った貴族連合軍はまとまりを欠く形になってしまっていた。そもそも、要塞がなくウエストエンドの防壁が昔のままと言う前提条件での進軍だっただけに、辺境大要塞インビジブルの存在が貴族連合軍を撤退させる原因と言って良かった。

「くそっ、ここで逃げ帰ることになろうとは」

 カスルはそう言って苦々しい表情を浮かべる。他の貴族達は、カスルに付いたことを後悔しはじめていたが時既に遅しと言うしか無い。1人、ディマジオ侯爵を除いては。

『ここにきて、求心力を失ったか…。こうなることは予想できていたが、やはりあいつ相手では厳しすぎたな』

 元々勝てる戦とは思っていなかったが、貧乏くじを引いたのはやはりライバルとして戦いたかったと言う一点だけ。それでも、流石に極星騎士団を育て上げた実績通りに、急造の貴族連合軍に夜襲を決めて戦の勝ちを決めてしまったあたりは歴戦の猛将と言うに相応しかった。

『ふっ、流石にあいつには勝てないか。カスルではなく、己で軍を率いたとしても部下の差が出ただろう。兵の質がここまで出るのは、それだけ用兵の差があると言う証だな』

 貴族連合軍は、カスルがお金で集めた私兵が中心であり、他の貴族達はお金や物資を供給していたりしてなんとか軍を組織していた。だが、辺境までの間に使った資金が膨大であり、貴族達でも支払いが厳しい状況になっていた。そう言う意味では、カスルが頭だったのがだめだったと言うしかない。

「公爵殿、これからどうされる?このままでは我らは飢え死にするしかない」

「このままここにいても死、戦っても死、退いても領地まで戻れるかどうか…」

 貴族連合軍の貴族達は元シルバール王国の東側に領地を持つ者ばかり、西側に近い所にある領地の貴族はそもそも貴族連合軍に参加してはいなかった。弱小貴族が多い事もあるが、ガーゼルベルトに関して恩義を受けている者が多かったからだ。

 そして、北や南側の貴族も貴族連合軍には参加していない。北は不毛の大地であり、南は海を近くに、裕福な土地柄であったが、兵を挙げて下手に西とやり合わない事を決めていたが故のことであった。そもそも、シルバール王国で宰相をやりつつ、自前で最強の騎士団を保有するガーゼルベルトを相手取って戦を出来る胆力の持ち主は、北にも南にもいなかった。少なくとも貴族として、分をわきまえていたと言えよう。

 王家の人間を殺害し、簒奪する公爵側を嫌悪したと言うのもある。第二王子をガーゼルベルトがかくまったことで、王家の継ぐ事が出来る正当な主を手に入れたのも大きい。群雄割拠にならなかったのは、それだけガーゼルベルトが持つ力が大きいのもあるが、王家からの信頼が厚いことで有名であり、王家の守護者でもあったからだ。

 故に、カスル・ジャントゥール公爵は東側以外の貴族達からは一切支持されていなかったと言うことになる。王家の力が小さくなろうとも乗っ取りをかけようなどと考える貴族はいなかったからだ。
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