月の魔女と聖剣

空流眞壱

文字の大きさ
202 / 211
対公爵 対邪神

第186話 貴族たちの分裂

しおりを挟む
月の魔女と聖剣

第186話 貴族達の分裂

 ガーゼルベルトと極星騎士団の夜襲から一夜が明けた。既に食料を失った貴族連合軍は脱走者が増え、軍として維持が出来なくなっていた。負け戦が確定となり、金で雇われた私兵が戦意を維持できるわけが無い。傭兵なら尚更であり、夜の内に陣地から抜け出していた。

 現状で、失った兵を合わせて既に最初の兵数の半分を割り込んでいた。夜襲でも千程度の兵を失っていたこともあり、士気はガタガタ。食料もないとなれば、戦うことも出来ない。

「やはり、英雄相手には荷が重すぎたか」

「貴様、この俺に賛同したではないか。離反する気か!」

 貴族の1人がそう言えば、カスルは怒りが先に立ち、剣を抜く。それを見たディマジオ侯爵はため息を分かりやすく吐いた。

「既に我らの負けは確定した。味方すら手にかけるようでは、トップとして頂くことが無理なのは言うまでもなく理解出来ると思うが?」

「負けただと!?まだこれだけの兵がいるのにか?」

「継戦能力を奪われた軍に勝ち目があるとお思いか?それすら理解出来ないのなら、将たる器ではないわ。それに、今回の兵の大半は領地から連れてきた兵ではないのだから襲われる可能性すら考えねばならぬだろうに」

 状況が見えていない。だからこそ、カスルに任せておくことが出来ないとディマジオ侯爵は既に判断していた。このままぶつかることも出来ぬまま、軍は瓦解して行くのを見ていると言うのは性に合うわけが無かったからだ。カスルは激昂したまま、ディマジオ侯爵に斬りかかる。

 が、その剣筋に鋭さはない。ディマジオ侯爵はその剣に後から剣を抜き合わせると剣を弾き飛ばした。

「そんな剣で勝つつもりか?討ち取るつもりならば、そのようなへなちょこ剣では無理と心得よ」

「ディマジオ侯爵、貴様俺を裏切る気か!?」

「何を馬鹿なことを言っている。元々、我は貴様のお目付役よ。勝ち馬に乗っているときは良いが、やはり負け戦になると兵をまとめきれぬあたり、将としては三流と言うしかあるまい」

 ディマジオ侯爵はそう言うとカスルを見据える。

「兵の数を考えて、勝てる目もあるかも知れないと思ったがやはりこうなったか…。公爵として、貴様を立ててはいたがこうなるのならば我が出た方がよかったかもしれんな。が、そうなったら総力戦になって双方の被害が馬鹿にならなかったか」

「なにをブツブツ言っている!?」

「ふっ、貴様はこれからの心配をした方が良い。どちらにしろ、今回の戦は我らの負けだ。このまま退いたところで食料もなければ退くに退けない。降伏するしかないだろう」

「なっ、ディマジオ侯爵。貴様頭がおかしくなったか?」

 カスルの言葉に、ディマジオ侯爵は笑ってしまった。この状態で、戦の継続など不可能。それをまだ理解出来ていないカスルに笑うしか無かったのだ。

「本当に軍に関しては無知に過ぎるな。どちらにしろ、交渉して領地に戻るまでの食料を得なければ帰るに帰れないだろう?」

 現状で食料はなし、明日の食べるものすら怪しいとなれば各々の領地に戻れるわけもなかった。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

異世界子供ヤクザ【ダラムルバクト】

忍絵 奉公
ファンタジー
孤児院からスラムで育ったバクト。異空間収納と鑑定眼のダブルギフト持ちだった。王都西地区20番街では8割を縄張りとする先代のじいさんに拾われる。しかしその爺さんが死んだときに幹部同士のいざこざが起こり、組は解散。どさくさにまぎれてバクトが5・6番街の守役となった。物語はそこから始まる。7・8番街を収めるダモンとの争い。また後ろ盾になろうと搾取しようとする侯爵ポンポチーコ。バクトは彼らを越えて、どんどん規格外に大きくなっていく。

没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました

藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。 逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、 “立て直す”以外の選択肢を持たなかった。 領地経営、改革、そして予想外の縁。 没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。 ※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。

無能妃候補は辞退したい

水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。 しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。 帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。 誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。 果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか? 誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。 この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―

Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...