0のくせに、生意気。

コサキサク

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第2話 翻弄

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俺とレイが付き合い始めてもうすぐ一年か。レイと付き合い始めてからというもの、やたらSMに詳しくなってしまった。レイは不意打ちでいじめてくれと頼んでくるものの、具体的に何をして欲しいのかは一切言わないのだ。「不意打ちで何されるかわからない」というシチュエーションが好きだから、何をして欲しいか言ったら意味がないと。もちろん、レイは大事な所属タレントだから、顔や体に傷をつけないのは絶対条件だ。あと、終始いじめっぱなしも嫌らしい。普通に優しくしている最中に急になにかしら意地悪されたいらしいのだ。

俺自体はサドでもなんでもないから、最初は何をしてやればいいのかさっぱりだったが、普通にセックスしてると明らかにつまらなそうにしてくるのでどこかでテコ入れしないといけない。俺なりに調べ、目隠ししたり、ネクタイで手を縛ったり、猿轡をしたりした。このへんはレイは気に入ったようで、してやった時はすごく機嫌がよかった。

逆にレイの好みに合わず本気で怒らせてしまうこともよくあった。食べ物を横取りしたり、ゲームでコテンパンにしたり、ちょっと太ったのを罵ったときはむくれてしまい、機嫌を直すのに苦労した。こう書くと性的なこと意外はアウトのように見えるが、10個入りのシュークリームに1個だけワサビ入れたときは喜んでたし、熱々の茶碗蒸しを口にねじ込んだときも喜んでいた。だけど全裸で小さい檻に監禁したときは怒ってたし、本当にレイの喜びのツボがわからない。

俺は元来ゲイでもサドでもない。ただでさえレイは男の子だから扱いに苦労しているのにSMの要素までやらなきゃいけないのは大変だ。しかしレイは上手く扱えば俺に仕事で恩を返そうと頑張ってくれる。俳優業はどんな役でもやるし、トークも出来るからバラエティもできる。運が見える能力も所属タレントを決める際の参考になっている。おかげで事務所の経営は順調だ。

なにより、レイは可愛かった。基本的に男は御免だが、レイは特別だった。

レイが隣の部屋で着替えを終え出てきた。
「トモヤったらー。23歳の僕に女子高生の格好させるなんて、何考えてんのー?困っちゃうなあ。うふふ。」
レイはYシャツにチェックのリボン、チェックのプリーツスカートという女子高生コスプレをしている。今日俺が考えた嫌がらせである。
口ではああ言っているが、レイはかなりご機嫌だ。長い髪を片方だけ結び、スカートの丈まで調節して短くし、着こなしている。よく似合っていた。レイはかなりの童顔で、今出ているドラマでも高校生役だから、似合うのは予想できたが。
「可愛いじゃないか。似合ってるよ。」 
俺はレイを引き寄せ、Yシャツの襟を少し直した。
「しかも、ブラジャーとショーツまで履かせるとか、トモヤのへんたーい。ぷぷぷ。」  
「レイ!お前がいじめろって言うからやってんのにお前はそうやって・・・」
「いじめろとは言ったけど、女装させろなんて僕は頼んでないよお?」

そう、レイの一番困ったところはここだ。自分でいじめろいじめろとせがむくせに、いざやると、「トモヤってば、そんなことしたかったなんて、信じられなーい」的リアクションを毎度してくるのだ。レイ自身も明らかにノリノリのくせに、「トモヤが頼むからやってるんだもん」感を出してくる。こないだの風呂に沈めたときも、「トモヤがあんなことするなんて、こわーい」とか言ってたし。あんなに喜んでおいて。

本当に、困った子だ。

「まあいい、こっちにおいで。」
レイをベッドに連れて行く。キスしたあとベッドに押し倒す。せっかくの制服なので服は脱がさないようにして、四つん這いにして後ろから挿入してやった。レイは今までで一番喜んでいた。

レイは、男と女、天使と悪魔、サドとマゾ、いろんな一面がある。コロコロと見せる面を自在に変えて、俺を翻弄する。そしてそんなレイのことが、可愛くて仕方なかった。









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