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第3話 普通
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レイも一応恋人ではあるが、俺にはもう一人恋人がいる。リコという女で、年齢はレイと同じだ。元モデルの美人で、今はモデルを引退し、大企業の受付をしている。
リコとはレイと知り合う前から付き合っていて、レイもリコと俺の関係は知った上で付き合っている。リコの方はレイと俺の関係は知らない。
リコのマンションを訪ねると、リコは喜んで迎え入れてくれた。最近、俺のマンションにリコを呼ぶのではなく、リコの部屋を訪ねることが多い。自分のマンションは仕事場でもあり落ち着かないから、とリコには説明しているが、リコと過ごす場所とレイと過ごす場所を分けたいだけだ。
「シチューあるよ。食べる?」
「ああ。」
リコが作ってくれた、素朴な味のシチューを口に入れると、とても気分が落ち着く。正面に座るリコは、見た目は常人離れした美しさがありながら、中身は本当に良くも悪くも普通の女だった。その容姿でモデルとして活躍していたのだが、魑魅魍魎がひしめく芸能界が肌に合わずに引退している。その気持ちは、俺もよくわかる。俺も人前に出る商売が性に合わないと感じ、裏方に回りたくて芸能事務所を立ち上げた。想像以上に軌道に乗ってしまい、俺自身結構戸惑っていたし、経営がこのまま上手く行くかいつも不安だ。
「レイくんって、トモヤの事務所の子よね?」
急にレイの名前がリコの口から出てきたのでビクッとしてしまった。テレビにレイの出演しているドラマのCMが流れ、レイもちらっと映ったようだ。
「ああ。」
「綺麗な子よね。だけど、だからって男の人も女の人も両方好きなんて、なにもあんなこと言わせなくても・・・」
「え?」
「どうせキャラでしょ?芸能界にキャラが必要なのはわかるけど、ちょっと可哀想じゃない?この先奥さんもらうとき支障出そうじゃない?」
「あ、ああ・・・」
レイはトーク番組やらバラエティやらインタビューでバイだと公言している。もちろん、レイのバイ発言はキャラではなく本当だ。俺と付き合っているんだから。
「まあ、キャラ付けは俺の指示じゃなくてあいつが勝手にやったことだから、しょうがないよ。」
「そうなんだ。じゃあしょうがないね。」
さすがにレイが本当にバイだとは言えなかった。そのレイとしょっちゅう一緒にいるのだから、本当のことを言うと疑われかねない。ちなみに、バイであることを公言するのはやめとけと俺も言ったのだが、レイはお構いなしだった。だからキャラ付けをレイ自身が勝手にやっているのは本当だ。
レイはキャラも容姿も癖があるほうで賛否が分かれるタイプだ。ファンもたくさんいるがアンチも多い。しかしどんなにアンチがいようがレイはどこ吹く風だ。俺やリコと違い芸能界向きの気質だろう。
食事を終えた俺は、シャワーを借りて、そのあとリコを抱いた。本当に、普通に。レイと変なことばかりしているのでせめてリコとは普通のセックスがしたい。だけど、ふと、思ってしまった。
「リコ、その、つまらなくないか?」
「え?何が?」
「俺、本当に普通のことしかしないから、たまには普段と違うことしようか?」
「何言ってるの?普通でいいよー。違うことって何するの?何か別のことがしたいの?」
「そういうわけじゃないけど、いや、リコがそれでいいならいいんだ。」
うん、そうだよな。レイと付き合っておいてなんだけど、やっぱり普通が一番だよな。
俺はそのままリコのマンションに泊まり、朝になってリコのマンションを出た。季節は秋が終わりに近づきだいぶ寒くなってきている。
俺は、レイと付き合っても、リコと別れないのは、普通の感覚を忘れたくないからだ。レイと抱いた次の日はいつも、街を歩くととても怖い気持ちになる。街行く普通の男女のカップルが歩く世界と、別の世界を歩いているような、変な感覚になるのだ。透明な壁が一枚挟まって存在しているような感じがする。そしてレイと関係を持ったことを後悔し、リコに会いたくなる。リコに会うと元の世界に戻れた気がして心底ほっとする。
なのに、レイとは別れることができない。しばらくするとレイに会いたくなる。
しかし、俺、どうするつもりなんだろう。リコはもちろん将来結婚を望んでいるが、こんなことしておいてリコと結婚なんてできない。だけど、リコと離れるのも怖かった。
レイとしか関わらない日常なんて、怖すぎる。
リコとはレイと知り合う前から付き合っていて、レイもリコと俺の関係は知った上で付き合っている。リコの方はレイと俺の関係は知らない。
リコのマンションを訪ねると、リコは喜んで迎え入れてくれた。最近、俺のマンションにリコを呼ぶのではなく、リコの部屋を訪ねることが多い。自分のマンションは仕事場でもあり落ち着かないから、とリコには説明しているが、リコと過ごす場所とレイと過ごす場所を分けたいだけだ。
「シチューあるよ。食べる?」
「ああ。」
リコが作ってくれた、素朴な味のシチューを口に入れると、とても気分が落ち着く。正面に座るリコは、見た目は常人離れした美しさがありながら、中身は本当に良くも悪くも普通の女だった。その容姿でモデルとして活躍していたのだが、魑魅魍魎がひしめく芸能界が肌に合わずに引退している。その気持ちは、俺もよくわかる。俺も人前に出る商売が性に合わないと感じ、裏方に回りたくて芸能事務所を立ち上げた。想像以上に軌道に乗ってしまい、俺自身結構戸惑っていたし、経営がこのまま上手く行くかいつも不安だ。
「レイくんって、トモヤの事務所の子よね?」
急にレイの名前がリコの口から出てきたのでビクッとしてしまった。テレビにレイの出演しているドラマのCMが流れ、レイもちらっと映ったようだ。
「ああ。」
「綺麗な子よね。だけど、だからって男の人も女の人も両方好きなんて、なにもあんなこと言わせなくても・・・」
「え?」
「どうせキャラでしょ?芸能界にキャラが必要なのはわかるけど、ちょっと可哀想じゃない?この先奥さんもらうとき支障出そうじゃない?」
「あ、ああ・・・」
レイはトーク番組やらバラエティやらインタビューでバイだと公言している。もちろん、レイのバイ発言はキャラではなく本当だ。俺と付き合っているんだから。
「まあ、キャラ付けは俺の指示じゃなくてあいつが勝手にやったことだから、しょうがないよ。」
「そうなんだ。じゃあしょうがないね。」
さすがにレイが本当にバイだとは言えなかった。そのレイとしょっちゅう一緒にいるのだから、本当のことを言うと疑われかねない。ちなみに、バイであることを公言するのはやめとけと俺も言ったのだが、レイはお構いなしだった。だからキャラ付けをレイ自身が勝手にやっているのは本当だ。
レイはキャラも容姿も癖があるほうで賛否が分かれるタイプだ。ファンもたくさんいるがアンチも多い。しかしどんなにアンチがいようがレイはどこ吹く風だ。俺やリコと違い芸能界向きの気質だろう。
食事を終えた俺は、シャワーを借りて、そのあとリコを抱いた。本当に、普通に。レイと変なことばかりしているのでせめてリコとは普通のセックスがしたい。だけど、ふと、思ってしまった。
「リコ、その、つまらなくないか?」
「え?何が?」
「俺、本当に普通のことしかしないから、たまには普段と違うことしようか?」
「何言ってるの?普通でいいよー。違うことって何するの?何か別のことがしたいの?」
「そういうわけじゃないけど、いや、リコがそれでいいならいいんだ。」
うん、そうだよな。レイと付き合っておいてなんだけど、やっぱり普通が一番だよな。
俺はそのままリコのマンションに泊まり、朝になってリコのマンションを出た。季節は秋が終わりに近づきだいぶ寒くなってきている。
俺は、レイと付き合っても、リコと別れないのは、普通の感覚を忘れたくないからだ。レイと抱いた次の日はいつも、街を歩くととても怖い気持ちになる。街行く普通の男女のカップルが歩く世界と、別の世界を歩いているような、変な感覚になるのだ。透明な壁が一枚挟まって存在しているような感じがする。そしてレイと関係を持ったことを後悔し、リコに会いたくなる。リコに会うと元の世界に戻れた気がして心底ほっとする。
なのに、レイとは別れることができない。しばらくするとレイに会いたくなる。
しかし、俺、どうするつもりなんだろう。リコはもちろん将来結婚を望んでいるが、こんなことしておいてリコと結婚なんてできない。だけど、リコと離れるのも怖かった。
レイとしか関わらない日常なんて、怖すぎる。
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