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第1話 無能
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僕はいじめられていた。
理由は、チビで、力が弱かったから。そして鈍臭かったから。小学校のとき、クラスで体育をする際にみんなの足手まといになり、邪魔だと言われ、スポーツで遊ぶときは仲間に入れてもらえなかった。
僕がいじめられて学校から帰ってくると、母さんは僕を慰めた。
「キルル、体が小さくてもあなたはとても賢いわ。もしかしたら魔法の才能があるかもしれないわよ。」
キルルは僕の名前だ。
「魔法?」
「ええ。15歳になったら王都で魔法の才能があるか検査されるわ。お母さんもお父さんも、魔法の才能はそこそこあったし、あなたもきっと受け継いでいるわよ。魔法使いは、体が小さくても力が弱くても強い存在になれるわ。」
「そっかあ・・・」
僕は、魔法に希望を託した。家の中にある、母さんと父さんが持っていた魔道書を読み漁り、町の図書館にある魔法使いが活躍する物語に自分を重ねた。一度、両親が僕を王都に連れて行ってくれて、魔法使いが活躍する舞台を見せてくれた。僕は心の中では大魔法使いになっていた。
15歳になれば、魔法でみんなに勝てる。それを希望にいじめに耐えていた。
だけど、この希望もいじめっ子たちは打ち砕いた。
13歳になり、中学校に上がったある日、教室でいじめっ子のリーダーが僕に話しかけてきた。
「お前、これが見えるか?」
いじめっ子のリーダーは小さい鳥籠を手に持っていた。鳥籠の中には何もいなかった。
「鳥籠だよね?」
「その鳥籠の中にあるものを言ってみろ。」
僕は首を傾げた。
「何もいないけど・・・」
いじめっ子のリーダーは笑い転げた。そして、その他のクラスメイトたちも笑い出した。
「この中にはな、精霊がいるんだよ!火の精霊、水の精霊、風の精霊、土の精霊、草の精霊、全てだよ!どれも見えないお前は、魔法使いの才能は一つもないのさ!クラスで一つも見えないなんてお前だけだよ!とんだ無能だな!」
僕は目の前が真っ暗になった。授業を放り出して家に帰り、この話を母さんにした。
「まあ、キルル、今まで精霊を見たことがなかったの!?」
母さんが驚いていた。母さんいわく、精霊はハエのようにそのへんをウロウロしているらしく、そして無害なため、普段は気にも留めない存在らしい。僕以外のクラスメイトが皆何かしらの精霊が見えることから見ても、どの種類の精霊も見えないというのはめったにないことらしく、まさか僕が一つの精霊すら見えないとは想像もしていなかったのだ。
「僕、魔法の才能もないの?」
僕は大粒の涙を流した。
「大丈夫よ。体が弱くても、魔法が使えなくても、あなたにもできることはあるわ。」
母さんはそう言ってくれたが、男に生まれて、強い戦士や強い魔法使いに憧れない者がいようか。
この国では、町の外ではモンスターが出る。そのモンスターを倒してくれる、戦士、魔法使いは子供にとって最大の憧れでありヒーローだった。僕たちの町にいる戦士や魔法使いも子供たちの羨望の的であり、だいたいの子供は将来ああなりたいと思っていた。
ただ、どれだけ夢見ていようが魔法だけは生まれ持った素質がないと使えない。魔法の才能が低いものは体を鍛錬して戦士を目指すことが多いのだが、僕はそれも叶わないだろう。
「それと、精霊が見えないと魔法が使えないというのは、民間の人間が編み出した迷信とも言われているわ。15歳になったら、王都の判断士がきちんと適性検査をしてくれるわ。それまでは魔法使いの希望は捨てないで。そして、魔法使いになれなくても、あなたはあなたの道を探すのよ。」
母さんは言った。後になって振り返れば、母さんのこの言葉は大きな道標となったが、この時の僕は、将来に希望が持てずにいた。
クラスメイトの僕に対するいじめはさらに激化した。体が弱いものでも15歳から魔法使いの才能を伸ばし体の強いものを負かすというのはこの国ではよくある話。だから、弱いものいじめは程々に、という暗黙の風潮があったのだ。しかし、僕は15歳になっても仕返しすらできない存在と認識され、徹底的ないじめの対象になってしまった。
教科書は破られ、机は壊され、能無しと暴言を吐かれた。味方は家族だけだった。だけど僕は勉強は得意だったから、学校はやめないでと両親に説得され、学校に通った。
13歳から15歳までは、本当に地獄だった。
そして、僕は15歳となり、王都から手紙が届いた。王都に来て適性検査を受けるようにという通達だ。
僕は、適性検査を受けるのが怖くて怖くてたまらなかった。今まで、魔法使いの適性がないと噂されていたが、とうとう真相がわかってしまう。もしかしたら才能があると言ってもらえるかもしれない、とほんの少しの希望を持って僕はなんとか生きていた。だけど本当になんの才能もないと言い渡されるかもしれない。そしてその可能性の方が高いのだ。なんの才能もないと言われたら僕は、どうすればいいのだろう。
適性検査を受けないというのは不可能だった。国の法律で適性検査を受けさせるのは親の義務と決まっていて、受けさせなければ両親が処罰されてしまう。
僕は、とても暗い気持ちで両親とともに王都に向かった。
理由は、チビで、力が弱かったから。そして鈍臭かったから。小学校のとき、クラスで体育をする際にみんなの足手まといになり、邪魔だと言われ、スポーツで遊ぶときは仲間に入れてもらえなかった。
僕がいじめられて学校から帰ってくると、母さんは僕を慰めた。
「キルル、体が小さくてもあなたはとても賢いわ。もしかしたら魔法の才能があるかもしれないわよ。」
キルルは僕の名前だ。
「魔法?」
「ええ。15歳になったら王都で魔法の才能があるか検査されるわ。お母さんもお父さんも、魔法の才能はそこそこあったし、あなたもきっと受け継いでいるわよ。魔法使いは、体が小さくても力が弱くても強い存在になれるわ。」
「そっかあ・・・」
僕は、魔法に希望を託した。家の中にある、母さんと父さんが持っていた魔道書を読み漁り、町の図書館にある魔法使いが活躍する物語に自分を重ねた。一度、両親が僕を王都に連れて行ってくれて、魔法使いが活躍する舞台を見せてくれた。僕は心の中では大魔法使いになっていた。
15歳になれば、魔法でみんなに勝てる。それを希望にいじめに耐えていた。
だけど、この希望もいじめっ子たちは打ち砕いた。
13歳になり、中学校に上がったある日、教室でいじめっ子のリーダーが僕に話しかけてきた。
「お前、これが見えるか?」
いじめっ子のリーダーは小さい鳥籠を手に持っていた。鳥籠の中には何もいなかった。
「鳥籠だよね?」
「その鳥籠の中にあるものを言ってみろ。」
僕は首を傾げた。
「何もいないけど・・・」
いじめっ子のリーダーは笑い転げた。そして、その他のクラスメイトたちも笑い出した。
「この中にはな、精霊がいるんだよ!火の精霊、水の精霊、風の精霊、土の精霊、草の精霊、全てだよ!どれも見えないお前は、魔法使いの才能は一つもないのさ!クラスで一つも見えないなんてお前だけだよ!とんだ無能だな!」
僕は目の前が真っ暗になった。授業を放り出して家に帰り、この話を母さんにした。
「まあ、キルル、今まで精霊を見たことがなかったの!?」
母さんが驚いていた。母さんいわく、精霊はハエのようにそのへんをウロウロしているらしく、そして無害なため、普段は気にも留めない存在らしい。僕以外のクラスメイトが皆何かしらの精霊が見えることから見ても、どの種類の精霊も見えないというのはめったにないことらしく、まさか僕が一つの精霊すら見えないとは想像もしていなかったのだ。
「僕、魔法の才能もないの?」
僕は大粒の涙を流した。
「大丈夫よ。体が弱くても、魔法が使えなくても、あなたにもできることはあるわ。」
母さんはそう言ってくれたが、男に生まれて、強い戦士や強い魔法使いに憧れない者がいようか。
この国では、町の外ではモンスターが出る。そのモンスターを倒してくれる、戦士、魔法使いは子供にとって最大の憧れでありヒーローだった。僕たちの町にいる戦士や魔法使いも子供たちの羨望の的であり、だいたいの子供は将来ああなりたいと思っていた。
ただ、どれだけ夢見ていようが魔法だけは生まれ持った素質がないと使えない。魔法の才能が低いものは体を鍛錬して戦士を目指すことが多いのだが、僕はそれも叶わないだろう。
「それと、精霊が見えないと魔法が使えないというのは、民間の人間が編み出した迷信とも言われているわ。15歳になったら、王都の判断士がきちんと適性検査をしてくれるわ。それまでは魔法使いの希望は捨てないで。そして、魔法使いになれなくても、あなたはあなたの道を探すのよ。」
母さんは言った。後になって振り返れば、母さんのこの言葉は大きな道標となったが、この時の僕は、将来に希望が持てずにいた。
クラスメイトの僕に対するいじめはさらに激化した。体が弱いものでも15歳から魔法使いの才能を伸ばし体の強いものを負かすというのはこの国ではよくある話。だから、弱いものいじめは程々に、という暗黙の風潮があったのだ。しかし、僕は15歳になっても仕返しすらできない存在と認識され、徹底的ないじめの対象になってしまった。
教科書は破られ、机は壊され、能無しと暴言を吐かれた。味方は家族だけだった。だけど僕は勉強は得意だったから、学校はやめないでと両親に説得され、学校に通った。
13歳から15歳までは、本当に地獄だった。
そして、僕は15歳となり、王都から手紙が届いた。王都に来て適性検査を受けるようにという通達だ。
僕は、適性検査を受けるのが怖くて怖くてたまらなかった。今まで、魔法使いの適性がないと噂されていたが、とうとう真相がわかってしまう。もしかしたら才能があると言ってもらえるかもしれない、とほんの少しの希望を持って僕はなんとか生きていた。だけど本当になんの才能もないと言い渡されるかもしれない。そしてその可能性の方が高いのだ。なんの才能もないと言われたら僕は、どうすればいいのだろう。
適性検査を受けないというのは不可能だった。国の法律で適性検査を受けさせるのは親の義務と決まっていて、受けさせなければ両親が処罰されてしまう。
僕は、とても暗い気持ちで両親とともに王都に向かった。
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