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第2話 適性検査
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この国、マデライン女王国の15歳の少年少女は皆王都アイリスシティに召集され、式典が行われる。その式典の後に適性検査がある。
この国の成人は18歳なのだが、15歳の方が派手に祝う風習がある。今回の式典もそうだし、家での誕生日などでもその傾向がある。理由は、15歳の適性検査の結果次第で人生が大きく変わってしまうためだ。18歳を迎えるころにはすでに大魔法使いになっていて各地を廻っている者もいるため、落ち着いて祝うどころじゃなくなっている場合がよくあるのだ。
王都までは、うちの町の戦士が運転する馬車で送ってもらえた。馬車の中は両親と僕の3人だ。今回、いじめっ子たちも同じタイミングで王都に向かっているが、戦士が運転する馬車の中なら安全だ。いじめられる心配はないのでその点はよかったが、適性検査に対する不安で、王都への道中を楽しむ余裕はなかった。3日かけて王都に到着した。
国中の15歳を一度に集めるのは人数的に無理があるのと、警備が大変という理由で、式典は4回に分けられる。まず王都在住および北の地方の15歳を集め式典、その一週間後に東、さらにその一週間後に西、最後に南の15歳の式典が行われ、のべ一ヶ月かけて行われる。僕は北の地方になるので一番最初になる。
王都は僕が暮らす町とは比べ物にならないぐらい大きな街だ。王都にやってきた15歳たちはだいたい王都の都会的な雰囲気に浮かれ観光気分になるが、僕は正直観光気分にもなれず、式典の日まで宿に籠もった。
会場は王都の城の中で行われた。大きな広間にたくさんの少年少女が整列する。いじめっ子も側にいたがここでは大人しかった。皆大理石の床、荘厳な絵画で埋められた壁、天井に吊るされた巨大なシャンデリアに圧倒されていた。
楽器隊によるファンファーレがなり、そのまま演奏を聞いた。その後、壇上に女王様が現れた。女王様がゆっくり話始める。
女王様から言葉をもらえるのは、ほとんどの人間がこれが最初で最後だ。当たり障りのない祝いの言葉だったが、皆ありがたく聞いた。
そして、式典のあとは、いよいよ適性検査だった。僕は逃げ出したい気持ちを抑え、検査会場に向かう。検査も城の中で行われるため、式典会場から検査会場は目と鼻の先だった。検査を受ける順番は特に決まっておらず、検査をしてくれる診断士のいる部屋の後ろに列をなす形だった。
僕はできるだけ列の後ろに行った。すでに検査を終えた者が出てくる。
「僕は火魔法が一番向いてるって。レベル80まで上がるらしい。」
「いいなあ。僕は全種類レベル30止まりだって。」
と検査の結果を話している。
僕の番が来た。というか検査を受けるのはもう僕しか残っていなかった。診断士の部屋に通される。検査は診断士と一対一で行われるようだ。
診断士の部屋は狭く、小さい机とそれに合わせた椅子だけで部屋が埋まっていた。壁にある小さなランプが部屋を照らす、暗い空間だった。僕は診断士の正面に座らされる。
診断士は黒いローブをかぶり、顔が隠れていた。黒いローブは何か柄が描いてあるが暗くてよく見えない。手の感じから見てかなり高齢だろう。
「この机の上になにか見えるかい。」
しゃがれた老婆の声だった。机の上には何も見えなかった。
「何も、見えません。」
僕は、いじめっ子に鳥籠を見せられたときを思い出した。多分机の上には精霊がいるのだろう。やはり、何も見えなかった。
「ふむ、珍しい。一般魔法の才能はゼロだね。」
・・・やっぱり・・・
僕には才能がなかった。
覚悟していたが、辛かった。心臓が掴まれたように痛くなり、いじめっ子たちの「とんだ無能だな!」という言葉がこだました。
とんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だな!!!!!!!
動悸が始まり手が震えだす。
「落ち着きなさい。まだ質問があるよ。私の着ているローブは何色だい?」
「え?」
ローブの色を聞かれるとは思わず、僕はキョトンとした。
「何色だい?」
「黒色です。」
「ほお、黒か。ローブになにか柄が見えるかい?」
僕は診断士のローブを凝視した。
「骸骨の柄が見えます。」
診断士が顔を上げ、歯を見せて笑った。口元は皺だらけだったが歯は綺麗に残っている。
「私は今20歳だ。」
「ええ!?」
「老婆に見えたか。」
「はい。」
「よろしい。適性検査の結果を言う。よくお聞き。」
診断士は一呼吸置いて言った。
「即死魔法レベル100。」
「・・・え?」
「よくお聞きと言ったろう。お前の才能は即死魔法が使えることだ。最高レベルのレベル100まで上がる。それ以外の魔法の才能はゼロだ。」
「即死魔法ってなんですか!?僕は才能あるんですか?」
「才能あるどころじゃない。才能大あり、大当たりだよ。即死魔法は名の通り、相手を即死させる魔法だ。火魔法や水魔法などの一般魔法とは別の、特殊魔法だね。」
「特殊魔法・・・」
いろいろな魔法の本を読んできた僕だけど、初めて聞いた言葉だった。
「親御さんは宿にいるかい?」
はいと返事すると、
「今すぐここに呼んできなさい。説明せねばならないことがたくさんある。」
部屋を出るときに診断士が言った。
「お前は、今後人生が大きく変わるだろう。覚悟するんだよ。」
この国の成人は18歳なのだが、15歳の方が派手に祝う風習がある。今回の式典もそうだし、家での誕生日などでもその傾向がある。理由は、15歳の適性検査の結果次第で人生が大きく変わってしまうためだ。18歳を迎えるころにはすでに大魔法使いになっていて各地を廻っている者もいるため、落ち着いて祝うどころじゃなくなっている場合がよくあるのだ。
王都までは、うちの町の戦士が運転する馬車で送ってもらえた。馬車の中は両親と僕の3人だ。今回、いじめっ子たちも同じタイミングで王都に向かっているが、戦士が運転する馬車の中なら安全だ。いじめられる心配はないのでその点はよかったが、適性検査に対する不安で、王都への道中を楽しむ余裕はなかった。3日かけて王都に到着した。
国中の15歳を一度に集めるのは人数的に無理があるのと、警備が大変という理由で、式典は4回に分けられる。まず王都在住および北の地方の15歳を集め式典、その一週間後に東、さらにその一週間後に西、最後に南の15歳の式典が行われ、のべ一ヶ月かけて行われる。僕は北の地方になるので一番最初になる。
王都は僕が暮らす町とは比べ物にならないぐらい大きな街だ。王都にやってきた15歳たちはだいたい王都の都会的な雰囲気に浮かれ観光気分になるが、僕は正直観光気分にもなれず、式典の日まで宿に籠もった。
会場は王都の城の中で行われた。大きな広間にたくさんの少年少女が整列する。いじめっ子も側にいたがここでは大人しかった。皆大理石の床、荘厳な絵画で埋められた壁、天井に吊るされた巨大なシャンデリアに圧倒されていた。
楽器隊によるファンファーレがなり、そのまま演奏を聞いた。その後、壇上に女王様が現れた。女王様がゆっくり話始める。
女王様から言葉をもらえるのは、ほとんどの人間がこれが最初で最後だ。当たり障りのない祝いの言葉だったが、皆ありがたく聞いた。
そして、式典のあとは、いよいよ適性検査だった。僕は逃げ出したい気持ちを抑え、検査会場に向かう。検査も城の中で行われるため、式典会場から検査会場は目と鼻の先だった。検査を受ける順番は特に決まっておらず、検査をしてくれる診断士のいる部屋の後ろに列をなす形だった。
僕はできるだけ列の後ろに行った。すでに検査を終えた者が出てくる。
「僕は火魔法が一番向いてるって。レベル80まで上がるらしい。」
「いいなあ。僕は全種類レベル30止まりだって。」
と検査の結果を話している。
僕の番が来た。というか検査を受けるのはもう僕しか残っていなかった。診断士の部屋に通される。検査は診断士と一対一で行われるようだ。
診断士の部屋は狭く、小さい机とそれに合わせた椅子だけで部屋が埋まっていた。壁にある小さなランプが部屋を照らす、暗い空間だった。僕は診断士の正面に座らされる。
診断士は黒いローブをかぶり、顔が隠れていた。黒いローブは何か柄が描いてあるが暗くてよく見えない。手の感じから見てかなり高齢だろう。
「この机の上になにか見えるかい。」
しゃがれた老婆の声だった。机の上には何も見えなかった。
「何も、見えません。」
僕は、いじめっ子に鳥籠を見せられたときを思い出した。多分机の上には精霊がいるのだろう。やはり、何も見えなかった。
「ふむ、珍しい。一般魔法の才能はゼロだね。」
・・・やっぱり・・・
僕には才能がなかった。
覚悟していたが、辛かった。心臓が掴まれたように痛くなり、いじめっ子たちの「とんだ無能だな!」という言葉がこだました。
とんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だなとんだ無能だな!!!!!!!
動悸が始まり手が震えだす。
「落ち着きなさい。まだ質問があるよ。私の着ているローブは何色だい?」
「え?」
ローブの色を聞かれるとは思わず、僕はキョトンとした。
「何色だい?」
「黒色です。」
「ほお、黒か。ローブになにか柄が見えるかい?」
僕は診断士のローブを凝視した。
「骸骨の柄が見えます。」
診断士が顔を上げ、歯を見せて笑った。口元は皺だらけだったが歯は綺麗に残っている。
「私は今20歳だ。」
「ええ!?」
「老婆に見えたか。」
「はい。」
「よろしい。適性検査の結果を言う。よくお聞き。」
診断士は一呼吸置いて言った。
「即死魔法レベル100。」
「・・・え?」
「よくお聞きと言ったろう。お前の才能は即死魔法が使えることだ。最高レベルのレベル100まで上がる。それ以外の魔法の才能はゼロだ。」
「即死魔法ってなんですか!?僕は才能あるんですか?」
「才能あるどころじゃない。才能大あり、大当たりだよ。即死魔法は名の通り、相手を即死させる魔法だ。火魔法や水魔法などの一般魔法とは別の、特殊魔法だね。」
「特殊魔法・・・」
いろいろな魔法の本を読んできた僕だけど、初めて聞いた言葉だった。
「親御さんは宿にいるかい?」
はいと返事すると、
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