5 / 138
第5話 同級生
しおりを挟む
二人の少年は、僕と校長先生の姿を見るなり、駆け寄ってきた。二人とも興味深そうに僕を見ている。
「その人も、僕たちの同級生ですか」
少年のうちの一人が聞いた。背が高く、眼鏡を
かけている。
「ええ。即死魔道士のキルルさんです。仲良くしてあげてくださいね」
校長先生が僕を二人に紹介した。僕は軽く会釈した。やはり、同級生という存在は緊張する。
「即死魔道士、と言いますと?」
眼鏡の少年が続けて尋ねた。
「名の通り、相手を即死させる魔法が使える魔道士です」
「ええ……それはすごい」
もう一人の少年が言った。この少年は緑色の髪でとても穏やかそうな顔をしている。
それにしても、同世代の子に「すごい」なんて初めて言われた。やっぱりここではいきなり無能扱いは免れそうだ。僕は少しホッとした。
「キルルさん、こちらは複合魔道士のポールトーマスくんです」
「ポールトーマスです。よろしく」
「複合魔道士というのは、二種類以上の魔法を組み合わせて新しい魔法を生み出す魔道士です」
複合魔道士ポールトーマスは会釈した。眼鏡をかけている方の少年だ。背が高く、賢そうで年上に見える。髪は黒で、左目が黄色、右目が青色のオッドアイだ。深緑のローブを着ている。すでに優秀な魔道士の雰囲気がする。
「こちらは、音楽魔道士のカランドさんです」
「よろしくね」
「音楽魔道士は、音楽を奏でることで相手を眠らせたり、騒音でダメージを与える魔法を使います」
音楽魔道士カランドは、髪が緑色の方だ。仕立ての良さそうなスーツを着ていて、音符のブローチを胸元につけていた。いかにも音楽家という感じだった。
挨拶が終わりかけたころ、ロビーの扉が派手に開く音がした。
「おおおお!? もう三人もいる? もしかしてこれが当たり年ってやつですかせんせー!」
と言う声がした。扉の方を見ると、ピエロ姿の校長先生並みにカラフルな服を着た少年が立っていた。顔は校長先生のような白塗りではないが、蛇のような鋭い目つきをしている。
「トイさん、久しぶりですね。はい、今年は第一週だけで特殊魔道士が三人見つかりました。おそらく当たり年ですね」
「まじですかー! 今年はやる気出るかもしれない!」
少年は僕たちの方へ駆け寄ってきて、自ら自己紹介した。
「俺はクイズ作成魔道士のトイ! よろしく!」
「え!?」
想像以上にトリッキーな魔道士の名前に僕たち三人はポカンとなった。僕も正直なんじゃそりゃと!?思った。
「クイズ作成魔道士っていうのは、魔法でクイズとかパズルを作成できる魔道士だよ!」
クイズ作成魔道士トイは自分で説明した。
「トイさんは、実は去年入学した生徒でみんなより一個年上なんですが、単位が足りないのでみんなと同級生になります。ようするに留年組です」
校長先生が説明した。
「だってさー。去年特殊魔道士俺一人だったんだよ!? 学校生活面白くなさすぎて……サボっちゃったんだよねー。だけど三人増えるなら今年こそは真面目にやろっかなあ」
「そうしてください。あなた一般魔法の素質も抜群にあるんですよ。やる気になれば校内トップ取れるんですから。頑張ってくださいよ」
「はーい! みんな、よろしく!」
「よろしく」
僕たち三人はトイに挨拶した。
「あと、もう一人! そこにいる留年組!」
校長先生はロビーの机の下を覗いた。
机の下には、パーカーを着た女の子が床に寝ていた。
「彼女は退化魔道士ネルです。退化魔道士は相手を若返らせたり、モンスターを退化して弱らせる魔法が使える魔道士です。彼女は一昨年入学してるんですが、彼女の代も彼女一人しか特殊魔道士がいなくて、去年もトイくん一人しか入って来なかったのでモチベーション上がらず、二留です……もっとも、彼女の場合は同級生が増えたといってモチベーションが上がるかどうか謎ですが……」
校長先生が手を焼いているのは明らかだった。
校長先生の言葉が聞こえたのか、退化魔道士ネルは、ぼんやり目を覚ました。
「お、おお?なんかにぎやか……よろしく……」
一言だけ言って、退化魔道士ネルはまた眠ってしまった。よろしくと返す間もなかった。
「皆さん、留年組とも仲良くしてあげてください……今年は、特殊魔道士が北地方だけで三人も見つかっているので特殊クラスはにぎやかになるかもしれません。特殊魔道士はどういうわけか、たくさん現れる年と少ない年の差が激しいんですよ」
ロビーの壁には、特殊魔道士の名簿が貼ってあった。
特殊魔道士名簿(判明順)
1退化魔道士ネル 二年留年 女 南出身
2クイズ作成魔道士トイ 留年 男 王都出身
3複合魔道士ポールトーマス 男 北出身
4音楽魔道士カランド 男 北出身
5即死魔道士キルル 男 北出身
まだ、こんな変わった魔道士が続々現れるかもしれないのか。みんな人柄は悪くなさそうだけど、ちょっと大変かもしれない……僕はそう思った。いじめられるよりかは、ましだろうけども。
「その人も、僕たちの同級生ですか」
少年のうちの一人が聞いた。背が高く、眼鏡を
かけている。
「ええ。即死魔道士のキルルさんです。仲良くしてあげてくださいね」
校長先生が僕を二人に紹介した。僕は軽く会釈した。やはり、同級生という存在は緊張する。
「即死魔道士、と言いますと?」
眼鏡の少年が続けて尋ねた。
「名の通り、相手を即死させる魔法が使える魔道士です」
「ええ……それはすごい」
もう一人の少年が言った。この少年は緑色の髪でとても穏やかそうな顔をしている。
それにしても、同世代の子に「すごい」なんて初めて言われた。やっぱりここではいきなり無能扱いは免れそうだ。僕は少しホッとした。
「キルルさん、こちらは複合魔道士のポールトーマスくんです」
「ポールトーマスです。よろしく」
「複合魔道士というのは、二種類以上の魔法を組み合わせて新しい魔法を生み出す魔道士です」
複合魔道士ポールトーマスは会釈した。眼鏡をかけている方の少年だ。背が高く、賢そうで年上に見える。髪は黒で、左目が黄色、右目が青色のオッドアイだ。深緑のローブを着ている。すでに優秀な魔道士の雰囲気がする。
「こちらは、音楽魔道士のカランドさんです」
「よろしくね」
「音楽魔道士は、音楽を奏でることで相手を眠らせたり、騒音でダメージを与える魔法を使います」
音楽魔道士カランドは、髪が緑色の方だ。仕立ての良さそうなスーツを着ていて、音符のブローチを胸元につけていた。いかにも音楽家という感じだった。
挨拶が終わりかけたころ、ロビーの扉が派手に開く音がした。
「おおおお!? もう三人もいる? もしかしてこれが当たり年ってやつですかせんせー!」
と言う声がした。扉の方を見ると、ピエロ姿の校長先生並みにカラフルな服を着た少年が立っていた。顔は校長先生のような白塗りではないが、蛇のような鋭い目つきをしている。
「トイさん、久しぶりですね。はい、今年は第一週だけで特殊魔道士が三人見つかりました。おそらく当たり年ですね」
「まじですかー! 今年はやる気出るかもしれない!」
少年は僕たちの方へ駆け寄ってきて、自ら自己紹介した。
「俺はクイズ作成魔道士のトイ! よろしく!」
「え!?」
想像以上にトリッキーな魔道士の名前に僕たち三人はポカンとなった。僕も正直なんじゃそりゃと!?思った。
「クイズ作成魔道士っていうのは、魔法でクイズとかパズルを作成できる魔道士だよ!」
クイズ作成魔道士トイは自分で説明した。
「トイさんは、実は去年入学した生徒でみんなより一個年上なんですが、単位が足りないのでみんなと同級生になります。ようするに留年組です」
校長先生が説明した。
「だってさー。去年特殊魔道士俺一人だったんだよ!? 学校生活面白くなさすぎて……サボっちゃったんだよねー。だけど三人増えるなら今年こそは真面目にやろっかなあ」
「そうしてください。あなた一般魔法の素質も抜群にあるんですよ。やる気になれば校内トップ取れるんですから。頑張ってくださいよ」
「はーい! みんな、よろしく!」
「よろしく」
僕たち三人はトイに挨拶した。
「あと、もう一人! そこにいる留年組!」
校長先生はロビーの机の下を覗いた。
机の下には、パーカーを着た女の子が床に寝ていた。
「彼女は退化魔道士ネルです。退化魔道士は相手を若返らせたり、モンスターを退化して弱らせる魔法が使える魔道士です。彼女は一昨年入学してるんですが、彼女の代も彼女一人しか特殊魔道士がいなくて、去年もトイくん一人しか入って来なかったのでモチベーション上がらず、二留です……もっとも、彼女の場合は同級生が増えたといってモチベーションが上がるかどうか謎ですが……」
校長先生が手を焼いているのは明らかだった。
校長先生の言葉が聞こえたのか、退化魔道士ネルは、ぼんやり目を覚ました。
「お、おお?なんかにぎやか……よろしく……」
一言だけ言って、退化魔道士ネルはまた眠ってしまった。よろしくと返す間もなかった。
「皆さん、留年組とも仲良くしてあげてください……今年は、特殊魔道士が北地方だけで三人も見つかっているので特殊クラスはにぎやかになるかもしれません。特殊魔道士はどういうわけか、たくさん現れる年と少ない年の差が激しいんですよ」
ロビーの壁には、特殊魔道士の名簿が貼ってあった。
特殊魔道士名簿(判明順)
1退化魔道士ネル 二年留年 女 南出身
2クイズ作成魔道士トイ 留年 男 王都出身
3複合魔道士ポールトーマス 男 北出身
4音楽魔道士カランド 男 北出身
5即死魔道士キルル 男 北出身
まだ、こんな変わった魔道士が続々現れるかもしれないのか。みんな人柄は悪くなさそうだけど、ちょっと大変かもしれない……僕はそう思った。いじめられるよりかは、ましだろうけども。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~
Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」
病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。
気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた!
これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。
だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。
皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。
その結果、
うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。
慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。
「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。
僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに!
行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。
そんな僕が、ついに魔法学園へ入学!
当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート!
しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。
魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。
この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――!
勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる!
腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる