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第14話 即死魔道士の服
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僕は翌日から、一日の最後に即死魔法を使うようになった。ホームルームに出たあと、一般教養や一般魔法の授業を一、二時間受けて、そのあとロビーで興味のある魔導書を読み、夕食後に花壇に向かった。
僕は相変わらずほんの少しの雑草を枯らせると疲れてしまい寮で寝込んだ。しかし、疲れ方は徐々にましになっていた。
こうして養成学校の第一週は地味に終わった。
週末になると、僕は久しぶりにスーと遊んだ。
養成学校での生活についてをスーに話した。スーはどの話しも興味深く聞いてくれた。本当は、養成学校のことは外部の人間に話してはいけないのだが、スーは口外しないと約束してくれたし、そもそも殺人計画を約束しているスーが僕とのことを周りに話すことはないだろうから、色々話している。
「ねえ、魔法見せてよ!」
とスーが言うので、一回だけなら疲れないだろうと思い、披露することにした。
「なにか、小さい植物ない?枯らしてもいいもの」
するとスーの家の裏庭に連れていかれた。スーの家の裏庭には花壇もなく、雑草ばかりで手入れがされていなかった。僕はスー以外の人間が見ていないのを確認し、即死魔法を唱えた。
僕の周辺の雑草が一瞬で茶色に変わり、しなびてゆく。
「おおー! すごい!」
スーは感動していた。思い起こせば、僕も初めてこの魔法を使ったときは感動したんだった。もう今は地味としか思えないけれど。
「もう一回やると体力が尽きてしまうんだ。この一回だけで勘弁してくれる?」
「うん。充分だよ! ありがとう!」
スーはとても満足したようだ。僕たちはスーの部屋に戻り、この一週間にあったことをお互いに話した。
スーは今、一般教養のみの学校に通っている。要するに普通の学校だ。新しい学校ではいじめっ子たちと別れたものの、住む場所は変わっていないから、時々道端で鉢合わせしてしまい、嫌がらせされているようだ。
「人間を即死させるレベル80になるには多分二年はかかる。それまで待っててくれ」
「ああ。あいつらがそのうち死ぬんだと思うと最近は嫌がらせされてもへこまなくなったよ!」
僕の魔法がレベル1であっても、スーには希望の種になっているようだ。あと二年の間、この希望でしのいでいくつもりだろう。
「それにしても、キルルは魔道士って感じじゃないね」
「え?」
言われてみれば、僕は学校でも今も普段着だ。今日は茶色の長袖のシャツとカーキ色の長ズボンで本当になんの変哲もない服装をしている。故郷から持ってきた服だ。ちなみに僕は髪は黒色なので本当に地味だ。腕につけた国立魔道士養成学校の腕章だけが魔道士である証拠だった。
「キルルは制服ないの?」
「うん。特殊クラスは服装自由なんだ」
「もう少し魔道士らしくしてもいいんじゃない?腕章が浮いちゃってるし」
「たしかにそうかも……魔道士ではあるけど、まだ草を枯らすことしかできないしなあ。そんなもっともらしい格好するのもなあ」
「少し服を見に行こうよ」
スーに連れられ、僕は王都の街中にある服屋に入った。故郷の服屋とは、店の規模と品揃えが全く違った。故郷の服屋といえば小さな露店で、雑然と服が並んでいた。王都の服屋は広く、ハンガーにかけられた服が整然と並んでいた。壁や床もピカピカに磨かれている。僕は場違いな場所に来た感じが拭えずいたたまれなくなった。
「キルルは小柄な方とはいえ、手足は長いし顔も結構整ってる。もっと似合う服があると思ううんだよね」
スーは目についた服をどんどん手に取り僕の体に当てる。
「うん、この辺でどうかな。試着してみて」
言われるがまま僕はカーテンで仕切られた小部屋に行き、スーが選んだ服を着た。
「おー、いいね」
スーが選んだ服は、白色のYシャツに黒色のベストだった。白色のYシャツには黒色のボタンが襟や袖にたくさんついていて、ベストはよく見るとストライプ柄だった。ズボンも黒色だったが左足にだけ飾りのベルトが何本か巻いてある。靴も黒色の編み上げブーツだ。
「ここにネクタイを着けてっと……キルルはリボンタイの方が似合うかな」
スーが僕の首に手を回し、これまた黒いリボンタイをつけた。
「王都の市民と死を招く魔道士の間を取った雰囲気にしたんだけど、どう?」
改めて鏡を見ると、王都育ちのような僕の姿があった。これに、養成学校の腕章をつけると
、アクセサリーの一環のように馴染んでいた。
「すごい、なんか都会っ子みたいになった」
「あはは。これに、黒色のロングコートか、黒色のマントを合わせるとまじで即死魔道士って感じになると思う」
スーはロングコートを僕に着せた。たしかに
「即死魔道士」って感じだ。
ロングコートはまだ早いかな。季節的にもだけど、立場的に……と思ったので、ロングコートとマント以外に試着したものは買うことにした。代金はスーが出してくれるという。断ろうとしたが、
「いいんだよ。殺人依頼料だと思って」
とささやいたので黙って受け取った。
服屋を出たあとは、王都の街を散策した。王都は式典の季節が終わり、やや落ち着いた雰囲気になっていたが、それでも道行く人は多い。
「スーはすごいね。あの大量の服からあっという間に選ぶなんて」
よく見たら、スーも結構洒落た服を着ている。こんな服を着たやつは故郷には絶対いない。
「そう? 不思議なところを褒めるね」
「うん。スーはさ、魔法の才能はなかったかもしれないけど、色んな本も音楽も知ってるし、おしゃれだし、僕から見ると結構すごいと思うんだ」
「そうかな」
「うん。田舎者の僕からしたらすごいことだらけだよ」
「そうか、ありがとう」
スーは素直に喜んでいた。
寮に帰ると、廊下でクイズ作成魔道士トイとすれ違った。
「どうしたの? 今日かっこいいんだけど。デートでもしてたの?」
と聞いてきたので、
「違うよ」
と笑って返した。
僕は相変わらずほんの少しの雑草を枯らせると疲れてしまい寮で寝込んだ。しかし、疲れ方は徐々にましになっていた。
こうして養成学校の第一週は地味に終わった。
週末になると、僕は久しぶりにスーと遊んだ。
養成学校での生活についてをスーに話した。スーはどの話しも興味深く聞いてくれた。本当は、養成学校のことは外部の人間に話してはいけないのだが、スーは口外しないと約束してくれたし、そもそも殺人計画を約束しているスーが僕とのことを周りに話すことはないだろうから、色々話している。
「ねえ、魔法見せてよ!」
とスーが言うので、一回だけなら疲れないだろうと思い、披露することにした。
「なにか、小さい植物ない?枯らしてもいいもの」
するとスーの家の裏庭に連れていかれた。スーの家の裏庭には花壇もなく、雑草ばかりで手入れがされていなかった。僕はスー以外の人間が見ていないのを確認し、即死魔法を唱えた。
僕の周辺の雑草が一瞬で茶色に変わり、しなびてゆく。
「おおー! すごい!」
スーは感動していた。思い起こせば、僕も初めてこの魔法を使ったときは感動したんだった。もう今は地味としか思えないけれど。
「もう一回やると体力が尽きてしまうんだ。この一回だけで勘弁してくれる?」
「うん。充分だよ! ありがとう!」
スーはとても満足したようだ。僕たちはスーの部屋に戻り、この一週間にあったことをお互いに話した。
スーは今、一般教養のみの学校に通っている。要するに普通の学校だ。新しい学校ではいじめっ子たちと別れたものの、住む場所は変わっていないから、時々道端で鉢合わせしてしまい、嫌がらせされているようだ。
「人間を即死させるレベル80になるには多分二年はかかる。それまで待っててくれ」
「ああ。あいつらがそのうち死ぬんだと思うと最近は嫌がらせされてもへこまなくなったよ!」
僕の魔法がレベル1であっても、スーには希望の種になっているようだ。あと二年の間、この希望でしのいでいくつもりだろう。
「それにしても、キルルは魔道士って感じじゃないね」
「え?」
言われてみれば、僕は学校でも今も普段着だ。今日は茶色の長袖のシャツとカーキ色の長ズボンで本当になんの変哲もない服装をしている。故郷から持ってきた服だ。ちなみに僕は髪は黒色なので本当に地味だ。腕につけた国立魔道士養成学校の腕章だけが魔道士である証拠だった。
「キルルは制服ないの?」
「うん。特殊クラスは服装自由なんだ」
「もう少し魔道士らしくしてもいいんじゃない?腕章が浮いちゃってるし」
「たしかにそうかも……魔道士ではあるけど、まだ草を枯らすことしかできないしなあ。そんなもっともらしい格好するのもなあ」
「少し服を見に行こうよ」
スーに連れられ、僕は王都の街中にある服屋に入った。故郷の服屋とは、店の規模と品揃えが全く違った。故郷の服屋といえば小さな露店で、雑然と服が並んでいた。王都の服屋は広く、ハンガーにかけられた服が整然と並んでいた。壁や床もピカピカに磨かれている。僕は場違いな場所に来た感じが拭えずいたたまれなくなった。
「キルルは小柄な方とはいえ、手足は長いし顔も結構整ってる。もっと似合う服があると思ううんだよね」
スーは目についた服をどんどん手に取り僕の体に当てる。
「うん、この辺でどうかな。試着してみて」
言われるがまま僕はカーテンで仕切られた小部屋に行き、スーが選んだ服を着た。
「おー、いいね」
スーが選んだ服は、白色のYシャツに黒色のベストだった。白色のYシャツには黒色のボタンが襟や袖にたくさんついていて、ベストはよく見るとストライプ柄だった。ズボンも黒色だったが左足にだけ飾りのベルトが何本か巻いてある。靴も黒色の編み上げブーツだ。
「ここにネクタイを着けてっと……キルルはリボンタイの方が似合うかな」
スーが僕の首に手を回し、これまた黒いリボンタイをつけた。
「王都の市民と死を招く魔道士の間を取った雰囲気にしたんだけど、どう?」
改めて鏡を見ると、王都育ちのような僕の姿があった。これに、養成学校の腕章をつけると
、アクセサリーの一環のように馴染んでいた。
「すごい、なんか都会っ子みたいになった」
「あはは。これに、黒色のロングコートか、黒色のマントを合わせるとまじで即死魔道士って感じになると思う」
スーはロングコートを僕に着せた。たしかに
「即死魔道士」って感じだ。
ロングコートはまだ早いかな。季節的にもだけど、立場的に……と思ったので、ロングコートとマント以外に試着したものは買うことにした。代金はスーが出してくれるという。断ろうとしたが、
「いいんだよ。殺人依頼料だと思って」
とささやいたので黙って受け取った。
服屋を出たあとは、王都の街を散策した。王都は式典の季節が終わり、やや落ち着いた雰囲気になっていたが、それでも道行く人は多い。
「スーはすごいね。あの大量の服からあっという間に選ぶなんて」
よく見たら、スーも結構洒落た服を着ている。こんな服を着たやつは故郷には絶対いない。
「そう? 不思議なところを褒めるね」
「うん。スーはさ、魔法の才能はなかったかもしれないけど、色んな本も音楽も知ってるし、おしゃれだし、僕から見ると結構すごいと思うんだ」
「そうかな」
「うん。田舎者の僕からしたらすごいことだらけだよ」
「そうか、ありがとう」
スーは素直に喜んでいた。
寮に帰ると、廊下でクイズ作成魔道士トイとすれ違った。
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