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第23話 ポールトーマスとネル
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僕が通う国立魔道士養成学校は、一年が前期と後期に別れていて、前期が終わると夏休みに入る。夏休みは一ヶ月ほどだ。
「キルル、夏休みは、実家に帰るかい?」
ロビーでポールトーマスが尋ねてきた。
「ああ、一度両親に顔を見せろって言われてるし、帰るよ」
「それでさ、考えているんだけど、うちの学校の北出身の生徒、一般魔法クラスの生徒も含めて、合同で帰省しないかって話になってるんだ。」
王都から故郷に帰るには、道中でモンスターが出るため戦士に護衛してもらうのが普通だ。しかし、せっかく魔法を身に着けたのだから、護衛をつけず、養成学校の生徒だけで力を合わせて帰省しよう、とのことだ。モンスターならどれだけ殺してもいいし、二つ返事でオッケーした。同じ北出身のポールトーマスとカランドは参加するそうだ。
「北出身の生徒でってことだけど、他の地方の生徒は? こういうことするのかい?」
他の地方も同じ話は出ているらしいが、特殊クラスのみんなはこの話に乗らないらしい。
「へえ? またなんで?」
「東はリャとワープマンだけど、リャは王都と故郷が近いから帰省しないらしいし、ワープマンは、そもそも式典の時点で故郷から王都まで走ってきたからね。一人で帰れるから、この話とは無縁だろ。西のショウとキャサリンは、特殊魔法も戦闘系じゃなくて、一般魔法も得意じゃないから、普通に護衛付けて帰ると。南は、ネルとリリイだけど、ネルもリリイも集団行動苦手だからって断ってる。トイは王都出身だから実家はすぐそこ……と」
みんな独自で行動するタイプだなあ。ある意味、この面々をまとめている学級委員のポールトーマスが一番すごい気がする。
「ネル、里帰りもせずここで過ごすらしいけど、いいのかなあ。帰ってやればいいのに」
ポールトーマスは、近くのソファーで寝ているネルを見ながらつぶやいた。
ポールトーマスはいつもネルの面倒ばかり見ている。ネルは放っておくと本当に寝てばかりいるので、彼はせっせと世話を焼いているのだ。おかげでネルは、皆と同じようにレベルを上げている。
しかし、ポールトーマスがネルを気にかけているのって、学級委員だからとか、面倒見がいいという次元を超えている気がする……
「なあ、ポールトーマスって、ネルとどうなのさ? できてんの?」
僕が気になっていることを直球で聞いてきたやつがいた。トイだ。いつの間にか僕たちの近くに来ている。
「え!? や、やだな! そういうのじゃないし」
いつも冷静なポールトーマスが真っ赤になって反論している。なるほど、人がからかわれているのを見る分には面白い。もっとやれと思ってしまう。
「じゃあなんでネルはあんなに自分の体を若返らせるのに必死なんだーい?」
そういえば、このところネルは自分を若返らせる魔法ばかり使っている。
「え? それはネルがレベル上げを頑張っているんじゃないのか? 僕となんの関係があるんだ?」
「いや、鈍いな! 好きな男より自分が二つ年上なのを気にしてるんだろ! ネルが私欲抜きで頑張るわけねーし」
「な!?」
ポールトーマスはネルの方を見て考え込んだ。
「ネルが、僕を……? 僕としては年齢なんてなんでもいいんだけどな……いや、それでネルがやる気が出るなら同い年かちょい年下が好きなことにしておいた方がいいか……?」
ポールトーマスは大真面目に悩んでいる。ポールトーマスの様子を見る限り、まんざらじゃなさそうだ。たぶんもう両思いだろう。いいなあ。
「お、もうこんな時間か、ネル、そろそろ部屋に帰る時間だぞ」
ポールトーマスが、ネルを起こす。ネルはポールトーマスに促され、部屋に戻るようだ。二人でロビーを出ていった。
「あの二人はあっさりくっつきそうだなあ。 ネルと俺は去年二人きりで同じクラスに一年いて、何もなかったのに、不思議だよな」
トイはしみじみした感じで言った。
「キルル、夏休みは、実家に帰るかい?」
ロビーでポールトーマスが尋ねてきた。
「ああ、一度両親に顔を見せろって言われてるし、帰るよ」
「それでさ、考えているんだけど、うちの学校の北出身の生徒、一般魔法クラスの生徒も含めて、合同で帰省しないかって話になってるんだ。」
王都から故郷に帰るには、道中でモンスターが出るため戦士に護衛してもらうのが普通だ。しかし、せっかく魔法を身に着けたのだから、護衛をつけず、養成学校の生徒だけで力を合わせて帰省しよう、とのことだ。モンスターならどれだけ殺してもいいし、二つ返事でオッケーした。同じ北出身のポールトーマスとカランドは参加するそうだ。
「北出身の生徒でってことだけど、他の地方の生徒は? こういうことするのかい?」
他の地方も同じ話は出ているらしいが、特殊クラスのみんなはこの話に乗らないらしい。
「へえ? またなんで?」
「東はリャとワープマンだけど、リャは王都と故郷が近いから帰省しないらしいし、ワープマンは、そもそも式典の時点で故郷から王都まで走ってきたからね。一人で帰れるから、この話とは無縁だろ。西のショウとキャサリンは、特殊魔法も戦闘系じゃなくて、一般魔法も得意じゃないから、普通に護衛付けて帰ると。南は、ネルとリリイだけど、ネルもリリイも集団行動苦手だからって断ってる。トイは王都出身だから実家はすぐそこ……と」
みんな独自で行動するタイプだなあ。ある意味、この面々をまとめている学級委員のポールトーマスが一番すごい気がする。
「ネル、里帰りもせずここで過ごすらしいけど、いいのかなあ。帰ってやればいいのに」
ポールトーマスは、近くのソファーで寝ているネルを見ながらつぶやいた。
ポールトーマスはいつもネルの面倒ばかり見ている。ネルは放っておくと本当に寝てばかりいるので、彼はせっせと世話を焼いているのだ。おかげでネルは、皆と同じようにレベルを上げている。
しかし、ポールトーマスがネルを気にかけているのって、学級委員だからとか、面倒見がいいという次元を超えている気がする……
「なあ、ポールトーマスって、ネルとどうなのさ? できてんの?」
僕が気になっていることを直球で聞いてきたやつがいた。トイだ。いつの間にか僕たちの近くに来ている。
「え!? や、やだな! そういうのじゃないし」
いつも冷静なポールトーマスが真っ赤になって反論している。なるほど、人がからかわれているのを見る分には面白い。もっとやれと思ってしまう。
「じゃあなんでネルはあんなに自分の体を若返らせるのに必死なんだーい?」
そういえば、このところネルは自分を若返らせる魔法ばかり使っている。
「え? それはネルがレベル上げを頑張っているんじゃないのか? 僕となんの関係があるんだ?」
「いや、鈍いな! 好きな男より自分が二つ年上なのを気にしてるんだろ! ネルが私欲抜きで頑張るわけねーし」
「な!?」
ポールトーマスはネルの方を見て考え込んだ。
「ネルが、僕を……? 僕としては年齢なんてなんでもいいんだけどな……いや、それでネルがやる気が出るなら同い年かちょい年下が好きなことにしておいた方がいいか……?」
ポールトーマスは大真面目に悩んでいる。ポールトーマスの様子を見る限り、まんざらじゃなさそうだ。たぶんもう両思いだろう。いいなあ。
「お、もうこんな時間か、ネル、そろそろ部屋に帰る時間だぞ」
ポールトーマスが、ネルを起こす。ネルはポールトーマスに促され、部屋に戻るようだ。二人でロビーを出ていった。
「あの二人はあっさりくっつきそうだなあ。 ネルと俺は去年二人きりで同じクラスに一年いて、何もなかったのに、不思議だよな」
トイはしみじみした感じで言った。
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