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第73話 初夏
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体調不良は結局その日の午後には回復し、僕はまた普段通りの学生生活に戻った。
「リリイとどこか遊びに行きたいなあ。式典の時以降二人で出かけたりしてないんだよね。いい場所ないかな」
僕がつぶやくと、
「キルル、だいぶ前から同じことで悩んでない?」
とスーが言った。今日は、スーとアレンと僕の三人で遊んでいた。遊んでいると言っても公園でだべっているだけだけど。
「たしかに、同じことで悩んでるんだけど、しょうがないじゃん。リリイは人混み苦手だし、僕は自然が美しすぎるところは苦手だし、あまりいい場所ないんだもん」
「『自然が美しすぎるところが苦手』ってなんですか? あまり聞かないタイプの『苦手』ですね」
アレンが聞いた。
「ああ、僕、あまりにも綺麗な花とか綺麗な鳥とかかわいい動物見ると殺したくなっちゃうんだ。だから花鳥園とか苦手で」
「え?……キルルさんも大変ですね。たしかにそういう性じゃないと『即死魔道士』やってられないですね」
アレンは察しが良かった。僕の性分を聞いても、怖がるどころか即座に理解していた。僕のこの性分は、はっきりいって人としてまずいわけだけど、こんな性分だからこそ今まで『即死魔道士』としてやってこれているのも確かだろう。
「だけど、なんで綺麗な自然や動物の方が殺したくなるんですか? 普通の自然や、醜い動物とかモンスターじゃだめなんですか?」
アレンは重ねて尋ねる。
「だめじゃないんだけど、もうそのへんを殺すのは飽きてきちゃって。それに、綺麗な花の方が枯らしたあとも綺麗だし、可愛い動物の方が死体も可愛いよ」
「キルル、レベル上げは結構だけど、ほんとに大丈夫? その感じでいくと将来大変なことにならない?」
僕の回答を聞いて、スーが心配そうに言った。
「大変なことって?」
「その理屈で行くと、人を殺せるようになったら道行く綺麗なお姉さん殺して回らない?」
「大丈夫だってば。今も殺したくなるだけで、人様のペットとか、花鳥園にあるものは殺してないし。ちゃんと線引きするから。それに、僕リリイ以外の女の人に興味ないし、リリイは殺したいと思わないから、大丈夫」
本当は僕も内心少し不安があったが、言うわけにいかないので大丈夫と言うしかなかった。
「そっか、ならいいけど……」
スーはかなり心配そうに僕の話を聞いていたが、アレンは冷静に話を聞いていた。
「そうだ、アレン、学校はどう? もう慣れた?」
これ以上僕の話をするとスーが不安そうにするので、話題を変えた。
「うーん、慣れはしましたけど……」
アレンはぎこちない返事をした。学校生活に慣れはしたものの楽しくはなさそうだ。
「アレンも彼女作ったら? 楽しいよ。彼女までいかなくても、好きな子がいるだけでも楽しいし」
スーが言った。僕も頷いた。
「僕は色恋沙汰に興味ないので」
アレンはにべもなく返した。
「もー。アレンは何に対してもつれないんだから。キルルですら好きな子の話のときは楽しそうなのに」
「そう言われましてもね」
アレンは退屈そうに返事をするだけだった。初夏に差し掛かる王都の青空と真逆の鬱々とした表情をしている。
アレンを明るく前向きに生きさせるのは、とても難しく思えた。
「リリイとどこか遊びに行きたいなあ。式典の時以降二人で出かけたりしてないんだよね。いい場所ないかな」
僕がつぶやくと、
「キルル、だいぶ前から同じことで悩んでない?」
とスーが言った。今日は、スーとアレンと僕の三人で遊んでいた。遊んでいると言っても公園でだべっているだけだけど。
「たしかに、同じことで悩んでるんだけど、しょうがないじゃん。リリイは人混み苦手だし、僕は自然が美しすぎるところは苦手だし、あまりいい場所ないんだもん」
「『自然が美しすぎるところが苦手』ってなんですか? あまり聞かないタイプの『苦手』ですね」
アレンが聞いた。
「ああ、僕、あまりにも綺麗な花とか綺麗な鳥とかかわいい動物見ると殺したくなっちゃうんだ。だから花鳥園とか苦手で」
「え?……キルルさんも大変ですね。たしかにそういう性じゃないと『即死魔道士』やってられないですね」
アレンは察しが良かった。僕の性分を聞いても、怖がるどころか即座に理解していた。僕のこの性分は、はっきりいって人としてまずいわけだけど、こんな性分だからこそ今まで『即死魔道士』としてやってこれているのも確かだろう。
「だけど、なんで綺麗な自然や動物の方が殺したくなるんですか? 普通の自然や、醜い動物とかモンスターじゃだめなんですか?」
アレンは重ねて尋ねる。
「だめじゃないんだけど、もうそのへんを殺すのは飽きてきちゃって。それに、綺麗な花の方が枯らしたあとも綺麗だし、可愛い動物の方が死体も可愛いよ」
「キルル、レベル上げは結構だけど、ほんとに大丈夫? その感じでいくと将来大変なことにならない?」
僕の回答を聞いて、スーが心配そうに言った。
「大変なことって?」
「その理屈で行くと、人を殺せるようになったら道行く綺麗なお姉さん殺して回らない?」
「大丈夫だってば。今も殺したくなるだけで、人様のペットとか、花鳥園にあるものは殺してないし。ちゃんと線引きするから。それに、僕リリイ以外の女の人に興味ないし、リリイは殺したいと思わないから、大丈夫」
本当は僕も内心少し不安があったが、言うわけにいかないので大丈夫と言うしかなかった。
「そっか、ならいいけど……」
スーはかなり心配そうに僕の話を聞いていたが、アレンは冷静に話を聞いていた。
「そうだ、アレン、学校はどう? もう慣れた?」
これ以上僕の話をするとスーが不安そうにするので、話題を変えた。
「うーん、慣れはしましたけど……」
アレンはぎこちない返事をした。学校生活に慣れはしたものの楽しくはなさそうだ。
「アレンも彼女作ったら? 楽しいよ。彼女までいかなくても、好きな子がいるだけでも楽しいし」
スーが言った。僕も頷いた。
「僕は色恋沙汰に興味ないので」
アレンはにべもなく返した。
「もー。アレンは何に対してもつれないんだから。キルルですら好きな子の話のときは楽しそうなのに」
「そう言われましてもね」
アレンは退屈そうに返事をするだけだった。初夏に差し掛かる王都の青空と真逆の鬱々とした表情をしている。
アレンを明るく前向きに生きさせるのは、とても難しく思えた。
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