氷の花嫁

コサキサク

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第2話 お誘い

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ボク、ユーリ。「炎と氷の料理店」のウエイトレス。人間じゃなくて氷妖精なんだ。

常連のお客さんのカイが珍しく朝早くに「炎と氷の料理店」にやってきた。 
「カイ!いらっしゃーい!今日は早いね、仕事お休みなの?」
ボクはカイをカウンターに案内した。
「うん、今日は休み、明日からまた仕事。かき氷ちょうだい。」
「はーい!」
ボクは張り切ってかき氷を作る。まだお客さんが少なく余裕があったから、いつもより少し多めに氷を盛ってあげた。
「どうぞ!いつもよりちょっと多くしたよ」
「ふふ、ありがとう。うん、おいしい!」
カイはかき氷が大好きな常連さんだ。仕事は戦士で、黒髪で優しい目をしたお兄さん。
「あれ?今日はカイ一人?珍しいわね、リアは?」
カウンターにいたウエイトレスのアリスがカイに聞いた。
「リアは別件でちょっと街を出てるんだ。それもあって、ユーリにちょっと話があるんだ。」
「ん?ボク?なあに?」
「今ね、街の近くの遺跡のモンスター退治の依頼が来てるんだけど、遺跡の一部が氷魔法がないと進めないらしいんだ。だから、氷魔法が使える人を帯同したいんだけど、ユーリ、一緒に来てくれない?」
「え!?カイの仕事に付いていけるの?行きたい!」
ボクは喜んだ。カイのモンスター退治の話って面白いから、興味あった。
「よかった。じゃあ、決まりね。リアが別件の仕事に出てるから僕と二人になっちゃうけど、モンスターはたいしたことないから安心して、半日仕事だしね。」
「うん!りょーかい!」
ボクは明日、カイとモンスター退治に出かけることになった。

夜、店が閉まって、ウエイトレスたちも家路に着いた。ボクは、店の二階の一室に住んでいるから、自室で明日の準備をしていた。
「ユーリ、明日は何着てくんだい?」
店長で炎妖精のフレイがボクの部屋を覗きに来た。フレイもこの店に住んでいる。フレイは炎妖精なので肌も髪も赤色だ。胸が大きいお姉さんで、人間の旦那さんがいる。属性は違うけれど同じ亜人なので、なにかとボクの面倒を見てくれる。
「んー、モンスター退治だから、これかなって。」
明日着ていく予定のツナギをフレイに見せる。
「うーん、ちょっと色気なさすぎじゃないかい?」
「い、色気?モンスター退治に色気がいるの?」
フレイはにやーっとしてボクに耳打ちした。
「モンスター退治なんて、口実に決まってるだろ。カイはあんたとどこかに出かけたいだけさ。カイはあんたのこと好きなんだよ。」
「へっ!?そ、そうなの?」
「ああ、長年店やってりゃどの客がどの子目当てなのかなんてすぐわかるよ。カイはあんたしか見てないじゃないか。」
「そ、そう?」
ボクはすごくびっくりした。ウエイトレス達と戦士が恋愛しているという話は今までたくさん聞いてきたけど、ボクは亜人だったし、他人事だと思ってた。今までに、ボクのことが好きな戦士がいるなんて話も聞いたことがなかった。
「カイはあんたとお似合いだと思うけどねえ。あんたは?カイは嫌?」
「・・・ううん。ボクも、お客さんの中でカイが一番好き。」
カイは、ボクが作ったかき氷や料理を誰よりも喜んで食べてくれる。話も面白くて優しくて、最高のお客さんだ。
「ふふふ、あんたもとうとう嫁入りかしらね。」
「嫁入りって!もう結婚!?」
さすがに急すぎて頭がついていかないよ!
「亜人のことを好いてくれる人間なんて貴重だよ。カイに告白されたらちゃっちゃっと結婚しちゃった方がいいさ。これ逃したら人間と結婚するチャンスなんて10年は来ないよ。」
「・・・うん、もし、ほんとにほんとに告白されたらそうする。」  
ボクは、自分の魔法をもっといろんなところで役立てたくて氷妖精の里から出てきた。そして今いるこの街とこのお店が大好きだ。ずっとここで暮らすなら、結婚相手は人間の方がいいと思う。
「よし、あたしの服貸してあげよう。モンスター退治にも行けて、かわいいやつよ。」
フレイがいそいそと部屋を出ていった。

ボクはその夜いろいろ考えちゃってなかなか眠れなかった。やっと眠れたと思ったら、カイと結婚生活を送っている夢を見てしまった。小さい家の中で、ボクがかき氷や冷たいスープやゼリー等、得意な料理をたくさん作っている。カイはそれをおいしいおいしいと言って食べていた。たしかに結婚したらこんな感じになりそう。もしカイと結婚したら、好きな食べ物たくさん作ってあげたいな、と思った。








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