氷の花嫁

コサキサク

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第6話 結婚準備

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僕が今暮らしている戦士宿舎にユーリを住まわせるなり、ユーリの店の二階に僕が住むなりすれば、すぐ結婚生活が始められる状況だったが
、ユーリは結婚式を挙げてから小さなお家に住むというベタな結婚生活を夢見ていることが発覚したので、その通りにすることにした。よく考えたら、ユーリは食費もかからない身で住みかも仕事もあるのだから、ユーリ自身は結婚でそんなに得することはない。あるなら、それこそ結婚式などのロマンチックな体験ができることぐらいなのだ。

三ヶ月後に教会で結婚式を挙げて籍を入れることになり、その後新居に移ることになった。新居は店の一番近くの夫婦専用の戦士宿舎の一軒家があったのでそれを借りることで決まった。

ユーリの今の身内は店長のみなのでもう報告済みだし、僕の両親は遠方に住んでいるので、手紙で結婚の報告をして式に招待した。相手が亜人だと知ったら反対されるかもと心配していたが、特に反対はなかった。まあ僕の家は別にたいした家柄じゃないし問題なかったようだ。こんな感じで結婚の準備は問題なく進んでいた。

結婚式までは、僕が仕事の合間にユーリのお店を訪ねる、というそれまでとそんなに変わらない生活を送ることになったが、多少は変化もあった。

「このお弁当ユーリが作ってくれたんだー。いいでしょ。」
僕はサンドイッチとサラダが詰まったカラフルなお弁当を仕事の休憩中にリアに自慢した。
「はは、もうユーリ奥さん気分だな。」
「この水筒にも氷詰めてくれたんだよ。リアも飲む?」
僕は、水筒の水をリアに少し分けた。
「うおー。超冷たい。これはいいね。」
「でしょ。」
こういうとき氷妖精の奥さんっていいなあと思う。氷を簡単に作り出せるのなんて氷妖精ぐらいだから元来こんな簡単に手に入らない。なによりユーリは性格的にいい奥さんになりそうだし。

「そういえば、もうやったの?」
「いや、まだ。キス以上のことは恥ずかしいみたい。」
キスなら今日見送るときにもしてくれたんだけど、その先がなかなか許してくれない。
「セックスは結婚してから、っていうユーリの考え方はかわいくて好きなんだけどね。セックスしたら死にかけるらしいし、実際どんなもんか結婚前に知っておきたいんだけどなあ・・・」
「カイ・・・死にかけるってわかっててよくそんな乗り気だな・・・」
「うん、そりゃ好きな子とキス止まりはやだよ。それに僕は戦士だし死ぬのを恐れてられないって。」
僕は、ユーリの冷たい唇が好きだ。こうやってユーリが作ってくれた氷を舐めていると、余計に恋しくなってくる。そして、冷たい肌にもやっぱり触れてみたかった。
「いや、そういう問題じゃなくてさ・・・お前すごいな・・・」
リアを始め戦士仲間でこの結婚を羨ましがるやつは誰もいなかった。「炎と氷の料理店」のウエイトレスと結婚って、この辺の戦士の中ではステータスと言われていたのに、僕はものすごく変わり者扱いされた。「亜人食いのカイ」というあんまりありがたくない異名までついてしまった。だけどおかげで他の男に取られる心配はないし、ちょうどいいと思っていた。ユーリの良さなんて、僕だけがわかっていればそれでいい。








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