偽カノジョとなら二股しても問題ないですよね?〜大問題に決まってるよ?!〜

プル・メープル

文字の大きさ
5 / 9

第4話 落ち着いて話してもおかしな話はやっぱりおかしい

しおりを挟む
 瑞斗みずとの家は学校から10分ほど歩いたところにある。花楓かえでの家はそのすぐ隣。
 家族ぐるみの付き合いが始まったのは、彼女の家族が隣に引っ越してきた時の挨拶で同い年の子供がいると分かったのがきっかけだ。
 二人とも徒歩で通学しているのは、自転車に乗れない花楓に合わせていた中学時代の名残だろう。
 慣れというのは恐ろしいもので、一人で行き来するようになった今でも、玄関先に置かれた自転車を使う気にはならなかった。

「みーくん、学校楽しい?」
「何その休日の父親みたいな質問」
「ほ、ほら、鈴木すずきさんの事で悩んだりしてないかなって!」
「平気だよ。相変わらず好きにはなれないだろうけど」
「それならよかった……」

 元々人見知りで口下手なことは知っているが、二人きりで会話するのがかなり久しぶりだからだろうか。
 花楓の言葉がどこかぎこちなくて、話もなかなか長続きしてくれない。瑞斗としては、別にそれでも構わないのだが……。

「あのさ」
「ど、どうしたの?」
「何か隠し事してる?」
「っ……」

 思い切って踏み込んでみた瞬間の反応から察するに、やはり彼女は自分に言おうとしても言えない何かがあるらしかった。
 突然『一緒に帰ろう』なんて誘ってきた時から怪しくはあったが、何だかんだ幼馴染のことはよくわかってあげられているらしい。
 話が途切れる度に見えた下唇を軽く噛む姿。これは花楓が幼い時からよくしている、後ろめたいことがある時のサインなのだ。

「えっと、あのね……」
「面倒なことはやめてよ。他の人に頼めることなら他の人に頼んで」
「き、聞く前からそんなこと言わないでよぉ!」
「はいはい。じゃあ、聞いてから判断するから」

 そう言いながら手で『はやくはやく』と急かすが、伝えるには余程勇気のいることらしい。
 深呼吸をして鼓動を落ち着かせて、それからいざ言おうと息を吸い込んでも、見知らぬ人が近くを通ると口を噤んでしまう。
 これではいつまで経っても用件が聞けない。それはつまり、さっさと帰宅してゴロゴロすることも出来ないというわけだ。
 岩住いわずみ先生の弾丸チョークのせいで眠気ゲージが振り切れそうな瑞斗にとってそれは、トイレに行きたいのに観覧車が頂上で停止するのと同じくらいの一大事である。
 ただ、この例えと違う部分があるとすれば、今の彼らは自分の力と意思で自由に移動できるというところだろう。

「言いづらいなら場所を変えよう」
「変えるってどこに?」
「僕の部屋」
「ふぇっ?!」

 家の中なら人目に付くことは無いし、部屋なら話が終わればすぐにベッドへダイブできる。
 これ以上に話を聞くことに向いている場所があるだろうか、いや無い(確信)。
 何なら、どうでもいい話であればベランダからすぐそこにある花楓の部屋のベランダへ投げ飛ばすことも無理な話では無いはずだ。
 瑞斗の体力テストの判定が、数年連続で最低ランクのEでは無い世界線なら。残念ながら、てこの原理を使って締め出すのが限界だろう。
 そんなことを考えつつ、彼女の手を引きながら駆け足で帰宅した彼は、自室へと入ると花楓をベッドの縁に座らせて制服という名の重装備を脱ぎ始めた。

「あ、ちょ、みーくん?!」
「ちょっと待ってね。この格好、暑苦しくて」
「ああっ、なんて暴力的なことを!」
「上着脱いでるだけなんだけど?」
「いくら何でも気が早すぎるよ! そりゃ、私だって興味無いこともないけど……」
「……はぁ、さっきから何言ってるの」

 瑞斗がハンガーに掛けた上着をクローゼットに入れて戻ってくると、彼女は人差し指同士をツンツンと付き合わせながら上目遣いでこう言ってくる。

「みーくん、つもりでしょ?」

 幼馴染の口から放たれた一単語も身に覚えのない言葉に、彼が思わず真顔で「頭、おかしくなった?」と返したことは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

処理中です...