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第4話 落ち着いて話してもおかしな話はやっぱりおかしい
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瑞斗の家は学校から10分ほど歩いたところにある。花楓の家はそのすぐ隣。
家族ぐるみの付き合いが始まったのは、彼女の家族が隣に引っ越してきた時の挨拶で同い年の子供がいると分かったのがきっかけだ。
二人とも徒歩で通学しているのは、自転車に乗れない花楓に合わせていた中学時代の名残だろう。
慣れというのは恐ろしいもので、一人で行き来するようになった今でも、玄関先に置かれた自転車を使う気にはならなかった。
「みーくん、学校楽しい?」
「何その休日の父親みたいな質問」
「ほ、ほら、鈴木さんの事で悩んだりしてないかなって!」
「平気だよ。相変わらず好きにはなれないだろうけど」
「それならよかった……」
元々人見知りで口下手なことは知っているが、二人きりで会話するのがかなり久しぶりだからだろうか。
花楓の言葉がどこかぎこちなくて、話もなかなか長続きしてくれない。瑞斗としては、別にそれでも構わないのだが……。
「あのさ」
「ど、どうしたの?」
「何か隠し事してる?」
「っ……」
思い切って踏み込んでみた瞬間の反応から察するに、やはり彼女は自分に言おうとしても言えない何かがあるらしかった。
突然『一緒に帰ろう』なんて誘ってきた時から怪しくはあったが、何だかんだ幼馴染のことはよくわかってあげられているらしい。
話が途切れる度に見えた下唇を軽く噛む姿。これは花楓が幼い時からよくしている、後ろめたいことがある時のサインなのだ。
「えっと、あのね……」
「面倒なことはやめてよ。他の人に頼めることなら他の人に頼んで」
「き、聞く前からそんなこと言わないでよぉ!」
「はいはい。じゃあ、聞いてから判断するから」
そう言いながら手で『はやくはやく』と急かすが、伝えるには余程勇気のいることらしい。
深呼吸をして鼓動を落ち着かせて、それからいざ言おうと息を吸い込んでも、見知らぬ人が近くを通ると口を噤んでしまう。
これではいつまで経っても用件が聞けない。それはつまり、さっさと帰宅してゴロゴロすることも出来ないというわけだ。
岩住先生の弾丸チョークのせいで眠気ゲージが振り切れそうな瑞斗にとってそれは、トイレに行きたいのに観覧車が頂上で停止するのと同じくらいの一大事である。
ただ、この例えと違う部分があるとすれば、今の彼らは自分の力と意思で自由に移動できるというところだろう。
「言いづらいなら場所を変えよう」
「変えるってどこに?」
「僕の部屋」
「ふぇっ?!」
家の中なら人目に付くことは無いし、部屋なら話が終わればすぐにベッドへダイブできる。
これ以上に話を聞くことに向いている場所があるだろうか、いや無い(確信)。
何なら、どうでもいい話であればベランダからすぐそこにある花楓の部屋のベランダへ投げ飛ばすことも無理な話では無いはずだ。
瑞斗の体力テストの判定が、数年連続で最低ランクのEでは無い世界線なら。残念ながら、てこの原理を使って締め出すのが限界だろう。
そんなことを考えつつ、彼女の手を引きながら駆け足で帰宅した彼は、自室へと入ると花楓をベッドの縁に座らせて制服という名の重装備を脱ぎ始めた。
「あ、ちょ、みーくん?!」
「ちょっと待ってね。この格好、暑苦しくて」
「ああっ、なんて暴力的なことを!」
「上着脱いでるだけなんだけど?」
「いくら何でも気が早すぎるよ! そりゃ、私だって興味無いこともないけど……」
「……はぁ、さっきから何言ってるの」
瑞斗がハンガーに掛けた上着をクローゼットに入れて戻ってくると、彼女は人差し指同士をツンツンと付き合わせながら上目遣いでこう言ってくる。
「みーくん、友達の間で彼氏いることになっちゃった私のために、自分が彼氏になってやるから体の相性を確かめさせろって言うつもりでしょ?」
幼馴染の口から放たれた一単語も身に覚えのない言葉に、彼が思わず真顔で「頭、おかしくなった?」と返したことは言うまでもない。
家族ぐるみの付き合いが始まったのは、彼女の家族が隣に引っ越してきた時の挨拶で同い年の子供がいると分かったのがきっかけだ。
二人とも徒歩で通学しているのは、自転車に乗れない花楓に合わせていた中学時代の名残だろう。
慣れというのは恐ろしいもので、一人で行き来するようになった今でも、玄関先に置かれた自転車を使う気にはならなかった。
「みーくん、学校楽しい?」
「何その休日の父親みたいな質問」
「ほ、ほら、鈴木さんの事で悩んだりしてないかなって!」
「平気だよ。相変わらず好きにはなれないだろうけど」
「それならよかった……」
元々人見知りで口下手なことは知っているが、二人きりで会話するのがかなり久しぶりだからだろうか。
花楓の言葉がどこかぎこちなくて、話もなかなか長続きしてくれない。瑞斗としては、別にそれでも構わないのだが……。
「あのさ」
「ど、どうしたの?」
「何か隠し事してる?」
「っ……」
思い切って踏み込んでみた瞬間の反応から察するに、やはり彼女は自分に言おうとしても言えない何かがあるらしかった。
突然『一緒に帰ろう』なんて誘ってきた時から怪しくはあったが、何だかんだ幼馴染のことはよくわかってあげられているらしい。
話が途切れる度に見えた下唇を軽く噛む姿。これは花楓が幼い時からよくしている、後ろめたいことがある時のサインなのだ。
「えっと、あのね……」
「面倒なことはやめてよ。他の人に頼めることなら他の人に頼んで」
「き、聞く前からそんなこと言わないでよぉ!」
「はいはい。じゃあ、聞いてから判断するから」
そう言いながら手で『はやくはやく』と急かすが、伝えるには余程勇気のいることらしい。
深呼吸をして鼓動を落ち着かせて、それからいざ言おうと息を吸い込んでも、見知らぬ人が近くを通ると口を噤んでしまう。
これではいつまで経っても用件が聞けない。それはつまり、さっさと帰宅してゴロゴロすることも出来ないというわけだ。
岩住先生の弾丸チョークのせいで眠気ゲージが振り切れそうな瑞斗にとってそれは、トイレに行きたいのに観覧車が頂上で停止するのと同じくらいの一大事である。
ただ、この例えと違う部分があるとすれば、今の彼らは自分の力と意思で自由に移動できるというところだろう。
「言いづらいなら場所を変えよう」
「変えるってどこに?」
「僕の部屋」
「ふぇっ?!」
家の中なら人目に付くことは無いし、部屋なら話が終わればすぐにベッドへダイブできる。
これ以上に話を聞くことに向いている場所があるだろうか、いや無い(確信)。
何なら、どうでもいい話であればベランダからすぐそこにある花楓の部屋のベランダへ投げ飛ばすことも無理な話では無いはずだ。
瑞斗の体力テストの判定が、数年連続で最低ランクのEでは無い世界線なら。残念ながら、てこの原理を使って締め出すのが限界だろう。
そんなことを考えつつ、彼女の手を引きながら駆け足で帰宅した彼は、自室へと入ると花楓をベッドの縁に座らせて制服という名の重装備を脱ぎ始めた。
「あ、ちょ、みーくん?!」
「ちょっと待ってね。この格好、暑苦しくて」
「ああっ、なんて暴力的なことを!」
「上着脱いでるだけなんだけど?」
「いくら何でも気が早すぎるよ! そりゃ、私だって興味無いこともないけど……」
「……はぁ、さっきから何言ってるの」
瑞斗がハンガーに掛けた上着をクローゼットに入れて戻ってくると、彼女は人差し指同士をツンツンと付き合わせながら上目遣いでこう言ってくる。
「みーくん、友達の間で彼氏いることになっちゃった私のために、自分が彼氏になってやるから体の相性を確かめさせろって言うつもりでしょ?」
幼馴染の口から放たれた一単語も身に覚えのない言葉に、彼が思わず真顔で「頭、おかしくなった?」と返したことは言うまでもない。
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