偽カノジョとなら二股しても問題ないですよね?〜大問題に決まってるよ?!〜

プル・メープル

文字の大きさ
8 / 9

第7話 休日だからといって心休まるとは限らない

しおりを挟む
 花楓《かえで》の彼氏役を演じ切ってから数日後、5日間の勉学を乗り越えた者でもそうでなくても訪れる幸せの休日《睡眠日》。
 今日は昼まで寝るぞと夢の中で意気込んでいた瑞斗《みずと》だが、そんな至極の時間は突然の来訪者によって終わりを迎えるのであった。

「お兄ちゃん、起きて!」

 勢いよくドアを開けて入ってきたかと思えば、ベッドの側まで駆け寄ってきて布団をべしべしと叩き始める。
 彼女は瑞斗の妹の早苗《さなえ》。運動も勉強もへっぽこなピカピカしていない小学五年生だ。
 ただ、愛嬌だけはいいので、甘えられるとついつい言うことを聞いてあげたくなってしまうのが、兄としての最近の悩みである。

「お兄ちゃん、起きないとこちょこちょするよ?」
「すぅ……すぅ……」
「このお菓子美味しいなー!」
「すぅ……すぅ……」
「……金属バット、物置にあるかな」
「起きたよ。起きたから布団に包まれたお兄ちゃんをどこぞの加藤みたいにするのはやめて」

 瑞斗の睡眠欲はかなり強いが、それでも死の恐怖には抗えないらしい。
 妹の虚言にあっさりと騙されて起きてしまい、「この家、金属バットなんてないよ?」としてやったりの顔を見せつけられた。
 言われてみれば確かに、我が家はスポーツとは無縁の一家。あるのは昔母親が侵入した泥棒のお尻をかっ飛ばしたという伝説の麺棒くらいだろう。
 あれで殴られても、布団をめくった時に見えるのは、サイ〇イマンにやられたヤム〇ャのように倒れている彼の姿に違いないが。

「おはよう、お兄ちゃん!」
「ん、おはよう。それで何用?」
「お母さんが呼んでるよ、頼みたいことがあるって」
「可愛い妹を使って起こすなんて卑怯な母親だ」
「あ、3分以内に降りてこないとお小遣い減らすとも言ってた気がする」
「……今何分経ってる?」
「5分かな」
「よし、一緒に二度寝しよう」
「でも、6分経ったら小指詰めるって──────」
「行きますよ、ザ〇ボンさん、ド〇リアさん」

 恐ろしい事実を聞いてすくっと立ち上がった彼は、「早苗、ザー〇ンがいい!」と言いながら追いかけてくる妹を振り返ることなく、一直線にリビングへと駆け込んだ。
 そこにはストップウォッチを止める母親、姉川《あねかわ》 由佳子《ゆかこ》が立っていて、彼女は「ギリギリセーフね」と言いながらソファーに腰を下ろす。

「瑞斗、ちょっと買い物に行ってきてもらえる?」
「……あ、腰が痛い。これは寝ていないといけないタイプのやつだ」
「お母さんが踏んであげるわ、ハイヒールで」
「なんなりとお申し付け下さいませ、お母様」
「ふっ、初めから大人しく従っておけばいいのよ」

 由佳子はそう言いながら一枚のメモ用紙と5000円札を渡すと、「場所は近くのスーパー、必要なものは見ればわかるわ」とだけ言って横になる。
 その様子に、瑞斗は人には働かせておいて自分は寝るのかとも思ったが、「私は24時間、我が子のためにお母さんしてるのよ?」と言われてしまえば返す言葉もない。
 たまには休日の商店街に出かけるのも、気分転換という意味では悪くないだろう。
 そう思い込むことにして、着替えやら財布やらの準備を済ませてから、早苗の見送りを背に出発するのであった。

「起こしてあげたお礼にプリン、買ってきてね?」
「なるほど、それが目的か」

 母親の命令を受けて、せっせと兄を起こしにやってきた健気な妹。そんな理想像が崩れ去る切ない音が、どこからともなく聞こえてくるような気がする。
 ただ、いくらずる賢くとも妹は可愛くて仕方がないわけで、お釣りが合わないと怒られるとわかっていながらプリンを買ってしまうのだろう。

「我ながらあまちゃんだね」

 ため息混じりに苦笑いをした瑞斗がその後、やはり怒られたくないなと思い直して、母親の好物であるエクレアもカゴに入れたことは言うまでもない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする

夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】 主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。 そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。 「え?私たち、付き合ってますよね?」 なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。 「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。

【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。 王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。 15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。 国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。 これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。  

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

お茶をしましょう、若菜さん。〜強面自衛官、スイーツと君の笑顔を守ります〜

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
陸上自衛隊衛生科所属の安達四季陸曹長は、見た目がどうもヤのつく人ににていて怖い。 「だって顔に大きな傷があるんだもん!」 体力徽章もレンジャー徽章も持った看護官は、鬼神のように荒野を走る。 実は怖いのは顔だけで、本当はとても優しくて怒鳴ったりイライラしたりしない自衛官。 寺の住職になった方が良いのでは?そう思うくらいに懐が大きく、上官からも部下からも慕われ頼りにされている。 スイーツ大好き、奥さん大好きな安達陸曹長の若かりし日々を振り返るお話です。 ※フィクションです。 ※カクヨム、小説家になろうにも公開しています。

処理中です...