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第8話 お人好し、嫌いな奴にも、蜘蛛の糸
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瑞斗《みずと》は母親から渡されたメモの全項目にチェックを付け、足りないものがないことを確認してからレジへと向かう。
もちろん、それとは別にプリン(3個入り)も買っておいた。プッチン出来るタイプのやつだから、きっとプッチンしたい年頃の早苗《さなえ》も喜んでくれるだろう。
彼は「僕も喜ぶけど」なんて独り言を呟きながら、エコバッグに詰めたそれらを持って店を出た。
あとは一直線に家に帰って、気の向くままベッドの上でゴロゴロするだけ。労働した後の昼寝はきっと格別だ。
そんなことを思っていると、駅前に差し掛かったところで自然と何かを言い合っている男女4人組に視線が向いた。
「待ち合わせって、さっきから誰も来ねぇじゃん」
「もうすぐ来るわよ。あなたたちが視界を遮ってるせいで見つからないのよ」
「俺たちがお邪魔ってか」
「それ以外の何者でもないでしょ。分かったらさっさと消えてちょうだい」
「気の強い女だな。そんなだから彼氏クンに見捨てられちゃったんじゃねぇの?」
男3人が女の子1人を囲んで詰め寄っている。それだけなら単なるナンパだと無視しただろう。
しかし、瑞斗は思わず足を止めてしまった。彼女の顔を嫌というほど知っていたから。
「鈴木《すずき》 玲奈《れいな》……」
そう。驚いたことに、鈴木 玲奈が昼間から堂々とナンパされていたのだ。
モテるという噂はよく耳にしていたし、口を開かなければ完璧美少女な彼女にとって、ナンパなど日常の一部程度にしか思っていないだろう。
頭では見捨てても構わない、嫌いな相手なのだからと思っている。それでも、瑞斗の体は心に反して動いていた。
腕を掴まれた瞬間に歪んだ表情を見せられて、細胞にまで染み付いた彼のお人好しさが黙っていてくれるはずもなかったのだ。
「ちょっと失礼。何か揉め事ですか?」
「……あ? 関係ねぇ奴が入って来んなよ」
「関係なくはないんですよ、一応この人と知り合いですし」
「だったらお前、この子の何なんだよ」
「何って、それは……」
嫌っている相手なんて言えるはずもないし、クラスメイトと答えてもインパクトに欠ける。
瑞斗がこの状況を打開する答えは無いかと悩んでいると、彼の肩にそっと手を添えた玲奈が一歩前に出た。そして―――――――――。
「彼氏よ、彼氏! まったく、どれだけ遅刻したら気が済むのかしらね」
――――――――言いやがった。ナンパを回避するためと言えど、スラスラと仲良くもない相手を彼氏だと言い切ったのである。
さすがはスクールカーストの頂点に君臨する人間だ。瑞斗にはそれを言っても許されると思える自信が信じられなかった。
「か、彼氏……本当に居たのかよ……」
「おいおい、俺たちめちゃくちゃ見られてるぞ」
「わ、悪かったな。可愛い彼女だから声掛けちまって……大事にしろよ!」
今の時代、人目というのは思ったより恐ろしいもののようで、彼氏発言で少し頭が冷えたナンパ男たちは大慌てで立ち去っていく。
その背中を見つめながら深い溜め息をこぼした玲奈は、隣で立ち尽くす彼の方をチラッと見ると、相変わらず無愛想なままスタスタと歩き出した。
「ちょっと、何か言うことないの?」
「言って欲しければ黙って着いてきなさい。ここは人が多過ぎるわ」
「さっさとここで言えばいいのに」
「あなたもナンパ男だってことにされたくなければ、そのおしゃべりな口を塞ぐべきね」
「……はいはい、分かりましたよ」
やはり嫌いな人間は手を差し伸べても嫌いなままだ。下心があったわけではないが、てっきりお礼くらいは言わせられると思ったのに。
内心肩を落とした瑞斗だったが、迷いなく早歩きで人混みを抜け出す彼女を無視するわけには行かず、すぐにあとを追いかけて走り出すのだった。
もちろん、それとは別にプリン(3個入り)も買っておいた。プッチン出来るタイプのやつだから、きっとプッチンしたい年頃の早苗《さなえ》も喜んでくれるだろう。
彼は「僕も喜ぶけど」なんて独り言を呟きながら、エコバッグに詰めたそれらを持って店を出た。
あとは一直線に家に帰って、気の向くままベッドの上でゴロゴロするだけ。労働した後の昼寝はきっと格別だ。
そんなことを思っていると、駅前に差し掛かったところで自然と何かを言い合っている男女4人組に視線が向いた。
「待ち合わせって、さっきから誰も来ねぇじゃん」
「もうすぐ来るわよ。あなたたちが視界を遮ってるせいで見つからないのよ」
「俺たちがお邪魔ってか」
「それ以外の何者でもないでしょ。分かったらさっさと消えてちょうだい」
「気の強い女だな。そんなだから彼氏クンに見捨てられちゃったんじゃねぇの?」
男3人が女の子1人を囲んで詰め寄っている。それだけなら単なるナンパだと無視しただろう。
しかし、瑞斗は思わず足を止めてしまった。彼女の顔を嫌というほど知っていたから。
「鈴木《すずき》 玲奈《れいな》……」
そう。驚いたことに、鈴木 玲奈が昼間から堂々とナンパされていたのだ。
モテるという噂はよく耳にしていたし、口を開かなければ完璧美少女な彼女にとって、ナンパなど日常の一部程度にしか思っていないだろう。
頭では見捨てても構わない、嫌いな相手なのだからと思っている。それでも、瑞斗の体は心に反して動いていた。
腕を掴まれた瞬間に歪んだ表情を見せられて、細胞にまで染み付いた彼のお人好しさが黙っていてくれるはずもなかったのだ。
「ちょっと失礼。何か揉め事ですか?」
「……あ? 関係ねぇ奴が入って来んなよ」
「関係なくはないんですよ、一応この人と知り合いですし」
「だったらお前、この子の何なんだよ」
「何って、それは……」
嫌っている相手なんて言えるはずもないし、クラスメイトと答えてもインパクトに欠ける。
瑞斗がこの状況を打開する答えは無いかと悩んでいると、彼の肩にそっと手を添えた玲奈が一歩前に出た。そして―――――――――。
「彼氏よ、彼氏! まったく、どれだけ遅刻したら気が済むのかしらね」
――――――――言いやがった。ナンパを回避するためと言えど、スラスラと仲良くもない相手を彼氏だと言い切ったのである。
さすがはスクールカーストの頂点に君臨する人間だ。瑞斗にはそれを言っても許されると思える自信が信じられなかった。
「か、彼氏……本当に居たのかよ……」
「おいおい、俺たちめちゃくちゃ見られてるぞ」
「わ、悪かったな。可愛い彼女だから声掛けちまって……大事にしろよ!」
今の時代、人目というのは思ったより恐ろしいもののようで、彼氏発言で少し頭が冷えたナンパ男たちは大慌てで立ち去っていく。
その背中を見つめながら深い溜め息をこぼした玲奈は、隣で立ち尽くす彼の方をチラッと見ると、相変わらず無愛想なままスタスタと歩き出した。
「ちょっと、何か言うことないの?」
「言って欲しければ黙って着いてきなさい。ここは人が多過ぎるわ」
「さっさとここで言えばいいのに」
「あなたもナンパ男だってことにされたくなければ、そのおしゃべりな口を塞ぐべきね」
「……はいはい、分かりましたよ」
やはり嫌いな人間は手を差し伸べても嫌いなままだ。下心があったわけではないが、てっきりお礼くらいは言わせられると思ったのに。
内心肩を落とした瑞斗だったが、迷いなく早歩きで人混みを抜け出す彼女を無視するわけには行かず、すぐにあとを追いかけて走り出すのだった。
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