13 / 63
第13話 女子は集まると騒がしくなる
しおりを挟む
「あはは!それでね、それでね!」
「ちょっと、夕奈声大きいよ」
「……ひゃい」
とある日の昼食時、隣で集まって食べている女子グループの声をバックグラウンドに、校庭の上空を飛び回る二羽の鳥を眺めながら、唯斗はサンドイッチを頬張っていた。
今日は母さんの代わりに妹が作ってくれたんだ。頭がちょっぴり残念で不器用だけど、野菜とかを一生懸命切ってくれたんだろうなぁ。
そんなことを思いながら、いつもより少し幸福な時間を過ごしていた。……しかし。
「ねえ、唯斗君もそう思うよね?」
突然、夕奈がそう聞いてきた。なんの話をしていたのかも知らないのに、いきなりそんなことを言われてもさっぱりである。
「……何が?」
「夕奈ちゃんがしつこいかどうかの多数決!唯斗君はしつこくないと思ってるよね?」
唯斗からすれば、答えるまでもない二択だ。それに夕奈自身にも、常日頃鬱陶しいと思っていることが伝わっているものだと思っていたのに……。
「ちなみに、4人投票して3人が鬱陶しいに入れてるんだけど」
夕奈の向かい側に座っている、周りより大人びたクールな女の子がそう教えてくれる。どこかの誰かさんとは正反対だよ。
「じゃあ、もう覆りようがないね」
「確かにな」
「諦めなよ~♪」
「それな」
唯斗も含めて4人から哀れみの目を向けられてもなお、夕奈は「いいや、クラス全員に聞けば結果は変わるはず!」とむしろ意気込み始めた。
「カノちゃんも思わないって言ってくれたし!」
「夕奈、カノのはどう見ても同情だろ」
「あ、いや、私は、その……」
何かを言いかけた女の子は、キュッと口をつぐんでしまう。周りもそれは分かっていたようだけど、いつもの事らしく話は自然と元の路線へと戻った。
「よし!私は諦めないから!」
「おいおい、いい加減落ち着けって……」
「夕奈っちはいつも頭より体が先に動くよね」
「それな」
イスから立ち上がって教室のあちこちへと走り出す夕奈を止められず、小さくため息をこぼす女子3人+俯いたままの1人。
説得を諦めた彼女らの視線は、やがて興味の色を含んで唯斗へと向けられた。
「ていうか、よく考えたら小田原の声って初めて聞いたな」
「意外といい声って言うか、優しい声だよね~♪」
「わかる」
「うぅ……」
唯斗は基本的に学校で話すことはほとんどない。夕奈が珍しく話しかけてくるだけで、他の人は興味なんて持たないから。
だから、これまで彼の声を知っていると言いきれたのは、夕奈の他には前の席の前沢さんくらいだった。
しかし、さすがは夕奈の友達。4分の3はコミュ力おばけなようで、話し始めて1分後には彼の席へとイスを寄せていた。
「夕奈と仲良いらしいじゃん、好きなの?」
「そんなわけないよ、うるさいし」
「まあ、そりゃそうか。あのお喋りは百年の恋も冷めるレベルだもんな」
この人、クールな見た目に反して、恋バナとやらには興味があるらしい。やっぱり女子はそういう類の話が好物だという伝説は本当なんだね。
「黙ってれば可愛いのにね~♪」
「激しく同意」
「おっ?おだっちも分かってくれるのか~♪」
この服装も口調もユルユルな人は、見た目こそ唯斗にとって苦手な部類ではあるが、共感できるところがあるらしい。
ただ、変なあだ名を即座に付けられるのは、ちょっと理解が追いつかないところではあった。
「ほんと、わかる」
「夕奈もこんなに友達がいるなら、みんなと勉強しとけばよかったのに」
「それな。朝から怒られてたし、ウケる」
この淡々とした口調と変化のあまりない表情の人は、どうやら『わかる』『それな』『ウケる』の使い手らしい。
風の噂では聞いていたけれど、本当にそんな人間が存在したんだね。
「うぅ……そんなこと言ったら、夕奈ちゃんが可哀想ですよぉ……」
「カノは相変わらず優しいな」
「夕奈っちみたいなのは、今のうちに厳しくしとかないとまともにならないんだよ~♪」
「それな」
もう1人の大人しそうな子は、どうやらあまり話すのが得意じゃないらしい。どことなく、唯斗と分かり合える部分がありそうだった。
「ちょっと!どうして唯斗君を取り囲んでるの!」
「おいおい、少し話してただけだろ」
「どうせいじめてたんでしょ?ぼっちだからって、馬鹿にしたらダメだよ!」
「それ、夕奈が一番バカにしてるよね?」
「し、してないし!」
淡々とした女の子の言葉に動揺したのか、「とにかく、唯斗君をからかっていいのは私だけだから!」と訳の分からない宣言をした彼女は、周りからの「ヒューヒュー!」という煽りに顔を真っ赤にしていた。
「そういう意味じゃ……」
「夕奈、幸せになれよ」
「応援してるよ~♪」
「がんば」
「うぅ……」
4人からの声援を受け、よほど嬉しいのか肩をプルプルと震わせる夕奈。女の子が集まると騒がしくなると言うけれど、この噂も本当だったなぁ。
「夕奈、からかうとか言ってるけどやめてね。鬱陶しいから」
「うっ……」
唯斗の言葉に、胸を押さえて俯く彼女。カノと呼ばれていた女の子が背中を撫でて慰めてあげているけど、「振られたな」「もっといい人が見つかるよ~♪」「どんまい」という言葉に、机に額をぶつけて動かなくなってしまった。
「ようやく静かになったね」
唯斗は小さくため息をついてから、また窓の外へと顔を向ける。鳥たちはもうどこかへ行ってしまっていた。
「ちょっと、夕奈声大きいよ」
「……ひゃい」
とある日の昼食時、隣で集まって食べている女子グループの声をバックグラウンドに、校庭の上空を飛び回る二羽の鳥を眺めながら、唯斗はサンドイッチを頬張っていた。
今日は母さんの代わりに妹が作ってくれたんだ。頭がちょっぴり残念で不器用だけど、野菜とかを一生懸命切ってくれたんだろうなぁ。
そんなことを思いながら、いつもより少し幸福な時間を過ごしていた。……しかし。
「ねえ、唯斗君もそう思うよね?」
突然、夕奈がそう聞いてきた。なんの話をしていたのかも知らないのに、いきなりそんなことを言われてもさっぱりである。
「……何が?」
「夕奈ちゃんがしつこいかどうかの多数決!唯斗君はしつこくないと思ってるよね?」
唯斗からすれば、答えるまでもない二択だ。それに夕奈自身にも、常日頃鬱陶しいと思っていることが伝わっているものだと思っていたのに……。
「ちなみに、4人投票して3人が鬱陶しいに入れてるんだけど」
夕奈の向かい側に座っている、周りより大人びたクールな女の子がそう教えてくれる。どこかの誰かさんとは正反対だよ。
「じゃあ、もう覆りようがないね」
「確かにな」
「諦めなよ~♪」
「それな」
唯斗も含めて4人から哀れみの目を向けられてもなお、夕奈は「いいや、クラス全員に聞けば結果は変わるはず!」とむしろ意気込み始めた。
「カノちゃんも思わないって言ってくれたし!」
「夕奈、カノのはどう見ても同情だろ」
「あ、いや、私は、その……」
何かを言いかけた女の子は、キュッと口をつぐんでしまう。周りもそれは分かっていたようだけど、いつもの事らしく話は自然と元の路線へと戻った。
「よし!私は諦めないから!」
「おいおい、いい加減落ち着けって……」
「夕奈っちはいつも頭より体が先に動くよね」
「それな」
イスから立ち上がって教室のあちこちへと走り出す夕奈を止められず、小さくため息をこぼす女子3人+俯いたままの1人。
説得を諦めた彼女らの視線は、やがて興味の色を含んで唯斗へと向けられた。
「ていうか、よく考えたら小田原の声って初めて聞いたな」
「意外といい声って言うか、優しい声だよね~♪」
「わかる」
「うぅ……」
唯斗は基本的に学校で話すことはほとんどない。夕奈が珍しく話しかけてくるだけで、他の人は興味なんて持たないから。
だから、これまで彼の声を知っていると言いきれたのは、夕奈の他には前の席の前沢さんくらいだった。
しかし、さすがは夕奈の友達。4分の3はコミュ力おばけなようで、話し始めて1分後には彼の席へとイスを寄せていた。
「夕奈と仲良いらしいじゃん、好きなの?」
「そんなわけないよ、うるさいし」
「まあ、そりゃそうか。あのお喋りは百年の恋も冷めるレベルだもんな」
この人、クールな見た目に反して、恋バナとやらには興味があるらしい。やっぱり女子はそういう類の話が好物だという伝説は本当なんだね。
「黙ってれば可愛いのにね~♪」
「激しく同意」
「おっ?おだっちも分かってくれるのか~♪」
この服装も口調もユルユルな人は、見た目こそ唯斗にとって苦手な部類ではあるが、共感できるところがあるらしい。
ただ、変なあだ名を即座に付けられるのは、ちょっと理解が追いつかないところではあった。
「ほんと、わかる」
「夕奈もこんなに友達がいるなら、みんなと勉強しとけばよかったのに」
「それな。朝から怒られてたし、ウケる」
この淡々とした口調と変化のあまりない表情の人は、どうやら『わかる』『それな』『ウケる』の使い手らしい。
風の噂では聞いていたけれど、本当にそんな人間が存在したんだね。
「うぅ……そんなこと言ったら、夕奈ちゃんが可哀想ですよぉ……」
「カノは相変わらず優しいな」
「夕奈っちみたいなのは、今のうちに厳しくしとかないとまともにならないんだよ~♪」
「それな」
もう1人の大人しそうな子は、どうやらあまり話すのが得意じゃないらしい。どことなく、唯斗と分かり合える部分がありそうだった。
「ちょっと!どうして唯斗君を取り囲んでるの!」
「おいおい、少し話してただけだろ」
「どうせいじめてたんでしょ?ぼっちだからって、馬鹿にしたらダメだよ!」
「それ、夕奈が一番バカにしてるよね?」
「し、してないし!」
淡々とした女の子の言葉に動揺したのか、「とにかく、唯斗君をからかっていいのは私だけだから!」と訳の分からない宣言をした彼女は、周りからの「ヒューヒュー!」という煽りに顔を真っ赤にしていた。
「そういう意味じゃ……」
「夕奈、幸せになれよ」
「応援してるよ~♪」
「がんば」
「うぅ……」
4人からの声援を受け、よほど嬉しいのか肩をプルプルと震わせる夕奈。女の子が集まると騒がしくなると言うけれど、この噂も本当だったなぁ。
「夕奈、からかうとか言ってるけどやめてね。鬱陶しいから」
「うっ……」
唯斗の言葉に、胸を押さえて俯く彼女。カノと呼ばれていた女の子が背中を撫でて慰めてあげているけど、「振られたな」「もっといい人が見つかるよ~♪」「どんまい」という言葉に、机に額をぶつけて動かなくなってしまった。
「ようやく静かになったね」
唯斗は小さくため息をついてから、また窓の外へと顔を向ける。鳥たちはもうどこかへ行ってしまっていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
友達の妹が、入浴してる。
つきのはい
恋愛
「交換してみない?」
冴えない高校生の藤堂夏弥は、親友のオシャレでモテまくり同級生、鈴川洋平にバカげた話を持ちかけられる。
それは、お互い現在同居中の妹達、藤堂秋乃と鈴川美咲を交換して生活しようというものだった。
鈴川美咲は、美男子の洋平に勝るとも劣らない美少女なのだけれど、男子に嫌悪感を示し、夏弥とも形式的な会話しかしなかった。
冴えない男子と冷めがちな女子の距離感が、二人暮らしのなかで徐々に変わっていく。
そんなラブコメディです。
クラスで1番の美少女のことが好きなのに、なぜかクラスで3番目に可愛い子に絡まれる
グミ食べたい
青春
高校一年生の高居宙は、クラスで一番の美少女・一ノ瀬雫に一目惚れし、片想い中。
彼女と仲良くなりたい一心で高校生活を送っていた……はずだった。
だが、なぜか隣の席の女子、三間坂雪が頻繁に絡んでくる。
容姿は良いが、距離感が近く、からかってくる厄介な存在――のはずだった。
「一ノ瀬さんのこと、好きなんでしょ? 手伝ってあげる」
そう言って始まったのは、恋の応援か、それとも別の何かか。
これは、一ノ瀬雫への恋をきっかけに始まる、
高居宙と三間坂雪の、少し騒がしくて少し甘い学園ラブコメディ。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
隣に住んでいる後輩の『彼女』面がガチすぎて、オレの知ってるラブコメとはかなり違う気がする
夕姫
青春
【『白石夏帆』こいつには何を言っても無駄なようだ……】
主人公の神原秋人は、高校二年生。特別なことなど何もない、静かな一人暮らしを愛する少年だった。東京の私立高校に通い、誰とも深く関わらずただ平凡に過ごす日々。
そんな彼の日常は、ある春の日、突如現れた隣人によって塗り替えられる。後輩の白石夏帆。そしてとんでもないことを言い出したのだ。
「え?私たち、付き合ってますよね?」
なぜ?どうして?全く身に覚えのない主張に秋人は混乱し激しく否定する。だが、夏帆はまるで聞いていないかのように、秋人に猛烈に迫ってくる。何を言っても、どんな態度をとっても、その鋼のような意思は揺るがない。
「付き合っている」という謎の確信を持つ夏帆と、彼女に振り回されながらも憎めない(?)と思ってしまう秋人。これは、一人の後輩による一方的な「好き」が、平凡な先輩の日常を侵略する、予測不能な押しかけラブコメディ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる