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第26話 勝負はいつだって主客転倒
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レースは最終ラップに突入。現在の順位は前から夕奈、風花、唯斗、こまるだ。
どうやら、唯斗と同じでこまるもこういうゲームはあまり得意でない……というか、そもそも背が低いせいでハンドルを握りながらアクセルを踏むのが難しいらしい。
赤ヒゲのオヤジがものすごい安全運転で進んでいる様が、四角い画面に映し出されていた。
しかし、負ければジュースを奢らなければならない。最終ラップに入ってから火がついたのだろう。
普段は3文字前後しか話さない彼女が、珍しく大きな声を出した。
「カノ、アクセル。絶対に離さないで」
「は、はい!」
観客役のはずの花音にアクセルを全開で踏ませると、椅子に深く座り直してハンドルだけに集中する。
「やってやんよ」
その一言で、横にいた3人の背筋に悪寒が走った。真顔のままのはずの顔の裏に、何か大きな影を感じた気がしたから。
こまるの操作する赤ヒゲは格段にスピードを上げると、1つ目のアイテムボックスから取り出したキノコを使ってショートカットを決める。
これで唯斗が抜かれて3位。
次のコーナーでインコースをつくと、ちょうど真横まで迫った桃姫にタックルをして、落ちていたバナナでスピンさせた。
これで風花が抜かれて2位。
「私は負けないよ!絶対王者は私じゃー!」
「させるか!」
ゴール手前まで来ていたヨッピーに向けて赤甲羅が放たれるも、ガード用のバナナで防がれてしまう。
しかし、こまるがゲットしたのは3連のやつだ。2つ目、3つ目が見事ヒットし、その間に赤ヒゲがゴール。
ようやく動きだしたヨッピーは、後ろから来た緑甲羅によってまた転倒。桃姫にまで抜かれてしまった。
「動け!動いてくれ、私の足!」
アクセルをガンガン踏む夕奈、迫るPIO。ゴールラインはもう目の前……というのに、キノコ頭の手から放たれたバナナの皮がゴールの看板に当たり、跳ね返った落下地点にいたヨッピーはまたもスピン。
夕奈はあっさりと1位から最下位へと転落してしまったのだった。
「……嘘だ、私が負けるなんて……」
「夕奈ちゃん、私たちとやって1位取ったことないのよね~♪」
「そ、それは言わないお約束でしょ?!」
「というわけで、奢りは夕奈な」
「くそぉぉぉぉぉっ!」
画面の中で、緑色の恐竜が同じように悲しそうな顔をしていた。
「私、二度とヨッピー使わないし!」
「いつも同じこと言ってるけどな」
「うう、もうマ〇カー引退する……」
「ま、まあまあ!私はジュースいらないので……げ、元気だしてください!」
落ち込む夕奈に優しく歩み寄ってあげる花音。そんな彼女に泣きついた夕奈は、チラチラともう1人の観客へと意味深な視線を送る。
「本当かい?! ということは瑞希も──────────」
「私は貰うぞ、花音も甘やかすな。言い出しっぺは夕奈なんだし」
「そうですか?じゃあ、私ももらいます!ちょうど喉が渇いてきたところなので」
「そ、そんなぁ……」
ガクッと項垂れた夕奈は、しばらく勘弁してもらえないかと粘っていたみたいだけど、無理だと察したのか自動販売機のある方へとつま先を向けた。
「夕奈、ちょっと待って」
唯斗はそんな彼女を呼び止めると、りんごジュースのペットボトルを手渡す。
「まさか、私の代わりに用意してくれて……」
「いや、空だよ。飲み終えたからついでに捨ててきて」
「こんちくしょう!」
夕奈は受け取ったペットボトルを床に叩きつけると、跳ね返って転がっていったものを拾って、結局ゴミ箱の方へと持って行ってくれた。
「結局行ってくれはするんだよな」
「そういうところ真面目だよね~」
「それな」
すごいブツブツ文句を言ってはいたけれど、夕奈はきちんとジュースを2本買って帰ってきた。しかも、しっかりと2人が好きなものを選んで。
どうやら、唯斗と同じでこまるもこういうゲームはあまり得意でない……というか、そもそも背が低いせいでハンドルを握りながらアクセルを踏むのが難しいらしい。
赤ヒゲのオヤジがものすごい安全運転で進んでいる様が、四角い画面に映し出されていた。
しかし、負ければジュースを奢らなければならない。最終ラップに入ってから火がついたのだろう。
普段は3文字前後しか話さない彼女が、珍しく大きな声を出した。
「カノ、アクセル。絶対に離さないで」
「は、はい!」
観客役のはずの花音にアクセルを全開で踏ませると、椅子に深く座り直してハンドルだけに集中する。
「やってやんよ」
その一言で、横にいた3人の背筋に悪寒が走った。真顔のままのはずの顔の裏に、何か大きな影を感じた気がしたから。
こまるの操作する赤ヒゲは格段にスピードを上げると、1つ目のアイテムボックスから取り出したキノコを使ってショートカットを決める。
これで唯斗が抜かれて3位。
次のコーナーでインコースをつくと、ちょうど真横まで迫った桃姫にタックルをして、落ちていたバナナでスピンさせた。
これで風花が抜かれて2位。
「私は負けないよ!絶対王者は私じゃー!」
「させるか!」
ゴール手前まで来ていたヨッピーに向けて赤甲羅が放たれるも、ガード用のバナナで防がれてしまう。
しかし、こまるがゲットしたのは3連のやつだ。2つ目、3つ目が見事ヒットし、その間に赤ヒゲがゴール。
ようやく動きだしたヨッピーは、後ろから来た緑甲羅によってまた転倒。桃姫にまで抜かれてしまった。
「動け!動いてくれ、私の足!」
アクセルをガンガン踏む夕奈、迫るPIO。ゴールラインはもう目の前……というのに、キノコ頭の手から放たれたバナナの皮がゴールの看板に当たり、跳ね返った落下地点にいたヨッピーはまたもスピン。
夕奈はあっさりと1位から最下位へと転落してしまったのだった。
「……嘘だ、私が負けるなんて……」
「夕奈ちゃん、私たちとやって1位取ったことないのよね~♪」
「そ、それは言わないお約束でしょ?!」
「というわけで、奢りは夕奈な」
「くそぉぉぉぉぉっ!」
画面の中で、緑色の恐竜が同じように悲しそうな顔をしていた。
「私、二度とヨッピー使わないし!」
「いつも同じこと言ってるけどな」
「うう、もうマ〇カー引退する……」
「ま、まあまあ!私はジュースいらないので……げ、元気だしてください!」
落ち込む夕奈に優しく歩み寄ってあげる花音。そんな彼女に泣きついた夕奈は、チラチラともう1人の観客へと意味深な視線を送る。
「本当かい?! ということは瑞希も──────────」
「私は貰うぞ、花音も甘やかすな。言い出しっぺは夕奈なんだし」
「そうですか?じゃあ、私ももらいます!ちょうど喉が渇いてきたところなので」
「そ、そんなぁ……」
ガクッと項垂れた夕奈は、しばらく勘弁してもらえないかと粘っていたみたいだけど、無理だと察したのか自動販売機のある方へとつま先を向けた。
「夕奈、ちょっと待って」
唯斗はそんな彼女を呼び止めると、りんごジュースのペットボトルを手渡す。
「まさか、私の代わりに用意してくれて……」
「いや、空だよ。飲み終えたからついでに捨ててきて」
「こんちくしょう!」
夕奈は受け取ったペットボトルを床に叩きつけると、跳ね返って転がっていったものを拾って、結局ゴミ箱の方へと持って行ってくれた。
「結局行ってくれはするんだよな」
「そういうところ真面目だよね~」
「それな」
すごいブツブツ文句を言ってはいたけれど、夕奈はきちんとジュースを2本買って帰ってきた。しかも、しっかりと2人が好きなものを選んで。
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