召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第31話 民の熱狂そして戦に関する分析

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 天空に、巨大なスクリーンの様な物が浮かび、それにわたしおよび新生魔王軍幹部のうちでバルゾラ大陸に残っている者たちの姿が映し出された。と言うか、わたしは新生魔王軍本部基地の儀式場にて『グレート・スピーチ』の魔法を行使しているから、たぶんそうなっているだろうと言うだけなのだが。

 儀式場には先ほど説明したように、わたし、親衛隊長勇者アオイ、魔道軍団軍団長大魔導師ザウエル、死霊軍団軍団長怨霊将鉄之丞の4名が、着飾った姿で並んでいた。なおアオイだけは、先の勇者の生存が外部に漏れると影響が大きそうなので、顔全体を覆う仮面を被って正体を隠している。

 この一同の姿が『グレート・スピーチ』の魔法により、バルゾラ大陸各地の大空に映し出されているはずなのだ。……本当にちゃんと、映し出されてるだろうな?なんか急に心配になってきたぞ。この魔法を使うのは、初めてだからなあ。

 わたしは『千里眼』の魔道の術を並行して用い、ちゃんと映像が本部基地の外に映し出されているか確認してみる。うん、ちゃんと映し出されてる。わたしは胸を張り、声を張り上げた。外では大空にでかでかと映し出されたわたしの姿から、大音響で演説が流れ出しているはずだ。

『親愛なる我が民よ! わたしが諸君らの王、魔王ブレイド・JOKERである!
 諸君らも既に知っているであろうが、わたしが率いる新生魔王軍は此度、人類世界に対して改めて征伐を開始した! 手始めに北の大地、アーカル大陸へと我が軍は侵攻中である!』

 うん、屋外からわたしの声が、本部基地の儀式場にまで響いて来る。ちゃんと魔法は正しく働いているな?

『そして喜んでほしい、我が民たち! つい2日前、我が軍はアーカル大陸南部、ダムバ台地での戦いにおいて、アーカル大陸諸国家連合軍を撃破した! 敵軍は大損害を受け、現在敗走中である! これも諸君ら我が民が、我が軍に対し様々な形での貢献を行ってくれたが故の成果だ!
 誇りに思って欲しい、我が民よ! この勝利は、この栄光は、我々新生魔王軍だけのものではない! 諸君ら我が民、皆の上に輝いているのだ! 新生魔王軍に、栄光あれ! 我が民に、栄光あれ!』

 演説を終えて、わたしは息を吐く。ちょっとばかり、気張ってしまった。あまりこう言うのは得意な方ではないのだが……。

 だが、魔王として立った以上やらねばならない事だ。だが、すべったりはしていなかっただろうか。そう思って心配になっていると、ザウエルが話しかけて来た。

「魔王様、バルゾラ大陸各地に放った魔道軍団員からの報告が、念話で届きました。大成功です。大陸各地の各種族居留地、各種族の街々、村落や集落では、皆が皆、総立ちで万歳を叫んでいるそうです」

「……ホントかい?そこまでの演説じゃなかったと思うんだけど」

「いえ、先代魔王が討たれてから、魔物たちの中でも多少の知恵がある者たちは皆、これから自分たちがどうなるのかと不安に思っていたんですよ。そこへ魔王様が彗星のごとく現れて、様々な改革を行い、その上に人類の軍隊を打倒した。
 それで民は皆、鬱積うっせきしていた物が取り除かれた様な気分になって、魔王様を称えているのです」

 わたしは思わず笑いを漏らす。

「くくく、彗星のごとく、か。彗星は凶兆なんだがね。まあ、敵に対する凶兆ならばかまわないか。
 しかし下手をすると過剰な期待に繋がりかねないね。期待に応えるためには、勝ち続けなければならないなあ。よし、このまま司令室に移動しよう。先の戦いに関する戦闘詳報が届いているはずだからね。残っている幹部皆で、それを検討しよう」

「了解」

「了解いたしました」

『委細承知』

 アオイ、ザウエル、鉄之丞が応える。わたしは先頭に立って、歩き始めた。



 わたしたちは司令室で、アーカル大陸諸国連合軍をガウルグルクたちが撃破した戦いの戦闘詳報を読んでいた。

「……ふむ。陸戦におけるガウルグルクの指揮はさすがだね。ゼロもそれをよく補佐していたようだし。オルトラムゥも対地支援に、対空戦闘に、と八面六臂の奮迅ぶりを見せていたらしいなあ。大きな問題点は、戦闘詳報を読む限りでは、無いっぽいね」

『それがしの思うところ、敵は連合軍の欠点を無様に晒しておるでござるな。数ばかり集めて、結局烏合の衆と成り果てておる。
 5か国の軍勢が一丸となって戦わば、まだ多少はなんとかなったのやも知れぬが……。これは各国の軍勢がばらばらに新生魔王軍に当たり、各個撃破されておるだけでござるな。まさに無様よ』

「そうね。ゴーレム2,000体ちょっとを潰さやられたのは、追いつめられた敵がやった自殺的、いえ自爆的戦術のせい。『タートム連合国』の兵がゴーレムを足止めしてるところに、『ゾフォーラ王国』の魔道士が味方もろとも魔法で殲滅するなんて真似をしたから。
 味方の兵諸共に叩き潰すなんて、続々とゴーレムを送り出せる新生魔王軍相手では愚策もいいところ。連合軍にとって兵士1人の命は、こちらにとってのゴーレム10体よりも重いのに」

「まあ魔道軍団が調べた限りでは、元から『タートム連合国』と『ゾフォーラ王国』は領土問題で色々あった間柄ですからね。仲が悪いんですよ。盟主である『ヴァルタール帝国』が間に入らなければ、連合なんて組めなかったはずですよ。……上手くすれば、連合軍の間に不和の種が撒けるかもしれませんね」

 ザウエルは、にやりと悪そうな笑顔を浮かべて言う。うん、それに関してはわたしも賛成だね。だけど……。

「あと、敵の『ゾフォーラ王国』魔道士の実力が、そこまで高くなさそうなのは安心しましたね。『タートム連合国』兵を盾にして使い捨てないと、安心して魔法を撃てなかったという事ですから。となると発動までの時間が長いと言うことですね。と言うことはおそらく魔法の無詠唱発動すらできない未熟者でしょう」

『うむ、それならばこの先も、問題なく勝利できそうでござるな』

「そうね。それは安心材料の1つだと思うわ」

 皆が各々に、戦闘詳報を読んでの見解を口にする。その内容は、大体が敵の不甲斐なさをそしる物だ。……ちょっと釘を刺して置いた方がいいかな?

「あー、大きな問題点は無いけれど、敵を若干甘く見てたところは無いかな? いや、油断と言うほど酷い物じゃあないけれどさ」

「「『……?』」」

 一同は怪訝そうな顔になる。わたしは、そんな皆の顔をぐるりと眺めて言葉を発した。

「確かに敵は、こちらよりも多くの戦力をかき集めたつもりでいて、蓋を開けてみたらこっちが追加戦力を送り込んだことで戦力比が逆転してたからね。浮足立ってたとは思うよ。だけどさ……。
 追いつめられた人間……人類種族は特に集団になると、そして暴走すると、どんなみにくいことでもやってのける。今回の『味方諸共ゴーレムの一隊を殲滅』もその1つだろう。それを忘れちゃ駄目だと思うんだよね。勝つ事は動かないと思うけど、うっかりすると大損害を受けかねない」

「「『!!』」」

「まあ、ガウルグルクは分かってるみたいだね。戦闘詳報の末尾に、『油断があった』『申し訳ありませぬ』ってよこして来てる。まあ、そこまで済まながる事もないんだけどね。ゴーレムや生きた鎧をある程度使い捨てにするのは、あらかじめ容認してるんだし。
 これがゴーレムじゃなく、魔獣軍団員や犬妖の銃士とかに大きな犠牲が出てたら、怒るけどさ」

 正々堂々真正面から戦う魔王の配下に対し、非道な非常手段に走る人類種族かあ……。なんて皮肉な。まあ、その後の統治や支配のことも考えて、非道な真似は避ける様に言い含めてあったからなあ。こんなことも起きる、か。

 ああ、後でガウルグルクに長距離念話で、『ちゃんと分かってる様だし、そこまで申し訳なく思わなくてもいい』って伝えておかなきゃな。

「あ、そうだ。ザウエル、さっき言ってた敵の間に不和の種を撒くって、可能かい?」

「え、ええ。『タートム連合国』と『ゾフォーラ王国』の間を割くのは容易だと思われます。間諜スパイや工作員としてアーカル大陸の人類国家に潜り込ませている、変身魔法を使える魔道軍団員を使って、事実をありのままに流すだけですから。
 敵は戦果だけを強調して、犠牲になった兵たちのことは『尊い犠牲だった』とかの美辞麗句で誤魔化すでしょうが、本当の事ってのは何処からか漏れるものです。それを加速してやるだけですよ」

「なら頼むよ。わたしはその工作員や間諜に与える賞与などを用意するとしようかね。ああそうだ、鉄之丞。バルゾラ大陸の防衛は大丈夫かい?」

『はっ!死の霧ガスト亡霊スペクターなどをつかわし、海上の警邏けいらを任せておりますれば。万一敵船が接近してまいっても、帰るなら追い返し、帰らぬのならば皆生気を吸い尽くし、木乃伊ミイラ動死体ゾンビ亡霊スペクターの仲間にせよと命じております。船本体は幽霊船ゴーストシップにしてしまう予定ですのう……』

「そうか、頼もしいよ……」

 わたしたちは、その後も様々な事柄について話し合いを続ける。話し合いの内容は、主にアーカル大陸侵攻軍への支援とバルゾラ大陸の守りについてだった。



 そしてその話が終わる。だが会議は終わらない。毎回の事ではあるが、ザウエルに|訊ねなければならない事柄があるのだ。……『リューム・ナアド神聖国』が召喚した新勇者、ミズホとその一行についてだ。今、彼女たちは何処で何をしているのか。その為人ひととなりは。その望むところは。

 少しでもいい。情報が欲しかった。わたしは知っている。親衛隊長にして先代勇者で、『リューム・ナアド神聖国』の犠牲者であるアオイが、新勇者ミズホの事を常々気にしている事を。

 彼女のためにも……彼女を安心させるためにも、確実に新勇者ミズホを我々の陣営に勧誘し、取り込んでしまわねばならない。そしてそのパーティーメンバーは、必ずや地獄へ送らねばならないのだ。
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