召喚魔王様がんばる

雑草弁士

文字の大きさ
41 / 128

第38話 人類種族の急襲

しおりを挟む
 ここは蜥蜴人リザードマンの居住地中心部にある、巨岩の傍ら。居並ぶ各蜥蜴人リザードマン部族の長の前で、ソージャムは一世一代の演説を行っていた。わたしとアオイは少し離れた場所で、それを眺めている。

 ソージャムの声が、荒野に響き渡った。

「良いか! これよりわしら蜥蜴人リザードマンは、古巣であるこの荒野を離れ、遥かバルキーゾ魔大陸に渡るのじゃ! それ以外に、我らが生きる術は無い!魔王様が、バルキーゾ魔大陸に新天地となる住み心地の良い荒野を用意してくださっておる! 我らはこれよりその新天地へと旅立つのじゃ!」

 大勢の蜥蜴人リザードマンたちの、動揺の声が聞こえた。ソージャムは、皆が静まるまで少々待って、話を再開する。

「確かにこの土地を人間族、森妖精族、土妖精族などの人類種族に渡すのは惜しい! いや、それどころか臓腑が煮えくり返るほど腹立たしい! なれど、皆の生命には代えられん! 生きていればこそ、生命あればこそ! 彼奴らにいつか思い知らせる日もやって来るじゃろう!
 それ故、今は忍耐の時じゃ! 怒りを忘れてはならぬ! 悲しみを忘れてはならぬ! されど一時いっときそれを胸の奥に封じ、捲土重来けんどちょうらいを期して今はこの地を去るのじゃ! 新たなる故郷への門は、魔王様がわし率いるシャーガ部族の棲み処すみかの中央にある、大岩の上に開いてくださった!」

 そしてソージャムは、右手で大岩の方を指し示す。そこではアイドリング状態のゲートが、ぼんやりとした輝きを放っていた。

「我らはその門を通って、新たなる土地へと渡り、命を繋がねばならん! 生きよ!生きよ! 皆が死すれば、それはすなわち敗北ぞ! いつの日にか、怨敵に思い知らせてやるのじゃ! 今までたおれた者たちのためにも!」

 各部族の長は、神妙にその言葉を聞いていた。そして互いに顔を見合わせ、頷き合う。1人の長が一歩前に進み出て言葉を発する。

「我らは脱出に同意いたしましょう、大長おおおさ。たしかにこの住み慣れた土地を捨てて逃げ出すのは苦痛でありますが……。なれど幼き子供らまで無残に殺される光景は、もう見たくはありませぬ。
 そして脱出の術と新天地を与えてくださった魔王様に、心よりの感謝と忠誠を。わたしめはザラル部族の長、銀のとさかのジャイムと申します」

「わっしはトララ部族の長、長き尾のバルハルでごぜえますだ! 魔王様!」

「わちきはゴールラ部族の長、鋭き牙のデーデングで! 魔王様!」

「わたくしは……!」

「俺は……!」

 次々に蜥蜴人リザードマンの長たちが、わたしに向かい名乗りを上げて忠誠を誓う。内心ほっとしたわたしは、彼らに向かい言葉を紡ぐ。

「皆の忠誠、嬉しく思うぞ。ではこれより、我が用意させた『ゲート』をくぐり抜け、お前たちは新たなる土地へ向かうのだ。急ぎ民をこの場に集結させよ」

「「「「「「ははっ!!」」」」」」

 各部族の長たちは、各々自分の部族への伝令を立てる。わたしはソージャムに指示を出した。

「ソージャムよ。他の部族の民が集まってくる前に、先にお前のシャーガ部族の民を『ゲート』で移動させるのだ。ただしお前自身は大長おおおさと言う立場故、ジャハーと共に最後まで残ってもらうぞ」

「ははっ! 仰せの通りに!」

 ソージャムは、遠巻きに見ているシャーガ部族の蜥蜴人リザードマンたちを集めて何やら説明していた。それを尻目に、わたしは魔法陣を敷設した大岩の上に戻り、『ゲート』の魔法陣を起動する。魔法陣の上に、直径2mほどの光の球が浮き上がった。

 『ゲート』の魔法は、魔法陣の作成については極めて難易度が高く、ザウエル級の技量を持っていなければ不可能だと言って良い。だが出来上がった魔法陣を起動するだけであるならば、かなり多くの魔力を必要とするものの、それさえ持っていれば並程度の腕前でも可能なのだ。

 わたしは蜥蜴人リザードマンたちを連れて来たソージャムとジャハーに言った。

「さて、今ここにいる者たちから順に、この『ゲート』に飛び込むのだ。この門の向こうは、既にバルゾラ大陸……お前たちの言う、バルキーゾ魔大陸だ。1回に10人ずつだ。急げ。他の部族が到着すれば、おそらく大混乱となる事は必定ぞ」

「ははっ!」

 ソージャムは蜥蜴人リザードマンたちを前に進ませる。前を進む同族が、魔法陣上の光球に吸い込まれて消えるのを見て、怯えて立ち止まった者もいるが、そう言った者はジャハーが叱咤して進ませた。

 10人が転移する毎に、わたしは『ゲート』を再起動する。普通だったらかなりの魔力を消耗するのだろうが、生憎わたしは普通ではない。確かに消耗した感じは覚えるものの、自然回復量でそれは充分に補いがついている。

 と、そこへ1人の蜥蜴人リザードマンがやって来た。確か先ほど挨拶を受けた部族の長の1人で、カーランク部族の長、細き指のベッデムだったか。彼は大岩の上に立つわたしたちに向かい、土と砂塵の中に跪く。

「魔王様、大長おおおさ、申し訳ありませぬが、我らカーランク部族の大人たちは新天地へと赴けなくなりもうした」

「何!? 先ほどは承知したでは……」

「よせ、ソージャム。何があったか申してみよ、細き指のベッデムよ」

 ベッデムは、顔が地面に付く寸前まで頭を下げて、言葉を絞り出す。

「人類種族どもが、我らの集落の方向より攻撃をかけてまいりました。我らカーランク部族は子供に卵を持たせて逃がし、大人は雄も雌も全員で、時間稼ぎの防戦に出ておりもうす。つい先ほどやってまいりました子供が、我が部族の戦士長よりの言伝を持ってまいりました。
 戦士長の言葉を、そのまま伝えさせていただきもうす。『我ら蜥蜴人リザードマン全ての盾となり、時をかせがんとす。せめて年端も行かぬ子供らのみでも新天地へと導き給え』以上でございます」

 周囲の蜥蜴人リザードマンたちが、驚き騒ぐ。わたしは右手を挙げて、それを静めた。ベッデムは話を続ける。

「我も部族を率いる者として、戦士長たちを放ってはおけませぬ。今より我が集落へ立ち戻り、防戦に参加せんと思う次第にございますれば。なにとぞ、わが身の勝手を許したもうことを……」

 周囲の蜥蜴人リザードマンたちが、再度騒然となった。わたしは頭の中で方策を練る。その時、小さく声が響いた。

「魔王様、わたしが援軍に行く」

 ……アオイの声だった。
しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...