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第46話 新勇者に関する考察
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勇者ミズホが海に出た知らせを受けてから1週間後。いつもの司令室にて、わたしはザウエルから上げられてきた報告書を手に取り、検めていた。
「……アーカル大陸南部における抵抗運動の勢力が、大陸北部の『ヴァルタール帝国』目指して移動を開始。どうやら船舶による物資などの補給がままならないため、『ヴァルタール帝国』へ脱出しようとしたらしい、か。
けど、よく南の端っこから大陸縦断して北の『ヴァルタール帝国』まで行く気になったな。だがしかし、その動きは既に捕捉されている。行き着くまでの土地は、全てこちらの占領地。それに最前線における防衛ラインも越えられはしないだろうな。
まあそれでも……。やっぱり『ヴァルタール帝国』に逃げるしか道は無かったんだろうなあ」
「民心が完全に抵抗運動から離れたものね。民を巻き込んでのテロ攻撃を何度かやったから。まあ大半は阻止に成功したけど。で、どうするの?」
「んー? 叩き潰すよ?」
正直『ヴァルタール帝国』まで逃がしてやって、その足かせにしてやろうとか、思わなかったわけでもない。だが既に『ヴァルタール帝国』が抵抗運動の勢力に、テロ攻撃を示唆あるいは教唆した事実は、証拠込みで掴んでおり、民に『グレート・スピーチ』の魔法で公表してもいる。わざわざ実行犯を相手に抱え込ませて、それを相手の弱みにする必要性は薄い。
であるならば、逃げる抵抗運動勢力をこの際綺麗さっぱりこの世から退場させた方が、わたしの精神衛生的にも得策と言うものだ。わたしは攻撃の命令書を作成し、それにサインをする。書類整理を手伝いつつ、アオイがポツリと漏らす。
「まだ怒ってる」
「うん。わたしは根に持つタイプだからね。
さて、次の報告書は……。ふむ、勇者ミズホに関する追加報告か。君も見るかい?アオイ」
「うん」
わたしは報告書の束を、読み終わった順にアオイに手渡してやる。この報告書には新勇者一行の現状が、現状知りうる限り記されていた。
まず、今現在新勇者一行はコンザウ大陸の西岸にある一国、『ラーカウ海商国』の首都にして最大の港湾都市、グンバに滞在している。
目的は表向き物資補給のためとなっているが、実のところ何処に向かうべきか、新勇者一行の意見が纏まっていないらしい。ちなみに一時的に陸に上がっているため、船上にいる時よりも情報が仕入れやすくなっている。
アーカル大陸へ向かうべきだと主張しているのが当の勇者ミズホである。彼女からすれば、今現在魔王の脅威に直面しているアーカル大陸の民人を救いたい、と言う純粋な気持ちからの意見だ。
一方バルキーゾ魔大陸……バルゾラ大陸へと直接突入し、全ての元凶である魔王を討つべきだと主張しているのが勇者パーティーの残り3人である。彼らの発言の裏にあるのは、本国である『リューム・ナアド神聖国』の方針だ。
『リューム・ナアド神聖国』側からすれば、コンザウ大陸の国家、特に自国に対して反抗的な態度を取り続けて来たアーカル大陸諸国家は、もう少し痛めつけられれば良いとさえ思っている。勇者本人は知る由もないが。
「勇者一行の内輪でのすれ違いは、こちらとしても望むところだがね……。こちらの書類は勇者ミズホの現状での実力か。……ふむ。剣技はたいしたものだね。アオイにはまだまだ届かなくとも、一行の中で既に最強か。
魔法の力は……。属性は光系統に偏ってて、そこそこの強さしかないね。……いやもしかして、基礎を蔑ろにして光系統に集中して伸ばした、促成栽培かな?」
「たぶん『リューム・ナアド神聖国』は、今回の勇者を聖剣の使い手として特化させたんだと思う。光魔法はきっと、聖剣の持ち手として必要な、最低限の物しか教えてないんじゃないかな。
治癒魔法や補助魔法とかをパーティーメンバーに頼りっきりになる様に。……いざ始末するときに、それが弱点となる様に。
仮にその想像が正しいとしたら、促成栽培でこれだけの力を持てるんだから、素質的には魔法の使い手としての方が向いてると思うけど」
「やれやれ」
わたしは溜息を吐く。『リューム・ナアド神聖国』は、味方を背後から撃つ算段ばかりつけている。敵側であるわたしとしては、本当にありがたいことだ。無論皮肉である。
「さて、そうなると勇者ミズホがアーカル大陸にやって来た場合、バルゾラ大陸にやって来た場合の両方を考えて準備しておいた方がいいかな。『例の物』を、場合によってはアーカル大陸に運ばないといけないなあ」
「ああ、アレ。確かにアレは必要ね。……勇者ミズホをこちら側に引き入れるためには」
「そうだね。さて、一休みしようか。続きはお茶の後にしよう」
「うん」
アオイが自分の分も含め、お茶を淹れてくれる。わたしは司令室の片隅にある冷蔵庫から、先日わたしが教えつつアオイが焼いたフルーツタルトを取り出す。
冷蔵庫か……。召喚直後と比べると、とんでもなく便利になったものである。未だ量産が利く工業製品ではない、手作りの工芸品でしか無いのが玉に瑕だが。
今のところ電気機器に必要な電子部品の類は、わたしが錬金術系の魔法や魔道の術で単品生産している。ザウエルでも魔法技術的には製作できると思うのだが、電子工学の知識を教え始めてまだ日が浅いので、そっちの知識不足で作れないでいる。
早いところ工業技術が向上し、一般の民が自力で作れる様になって欲しい物だ。
「そうしたらまずはラジオ放送を開始……。いやテレビ放送を一気に始めてしまってもいいんじゃないかな。ああ、でも今のところは軍事技術を優先しないといけないかな。
魔法が不得意で念話が使えない種族もけっこう多いからなあ。無線電信、いや無線電話は必須だろう。ああいや、有線電話による野戦電話なら早目に実用化できるかな?あー、それが完成したら民間にも技術をフィードバックして、電話網を構築しないと。
戦車や装甲兵員輸送車や歩兵戦闘車も要るよなあ。自動車歩兵じゃ不整地走破性が劣る。あー、やっぱり砲の自走化は必須……」
「魔王様、突っ走ってる上に、考えてる事が口から洩れてる」
「おおっと」
アオイの突っ込みに内心動揺しつつ、わたしはフルーツタルトを切り分けた。
「……アーカル大陸南部における抵抗運動の勢力が、大陸北部の『ヴァルタール帝国』目指して移動を開始。どうやら船舶による物資などの補給がままならないため、『ヴァルタール帝国』へ脱出しようとしたらしい、か。
けど、よく南の端っこから大陸縦断して北の『ヴァルタール帝国』まで行く気になったな。だがしかし、その動きは既に捕捉されている。行き着くまでの土地は、全てこちらの占領地。それに最前線における防衛ラインも越えられはしないだろうな。
まあそれでも……。やっぱり『ヴァルタール帝国』に逃げるしか道は無かったんだろうなあ」
「民心が完全に抵抗運動から離れたものね。民を巻き込んでのテロ攻撃を何度かやったから。まあ大半は阻止に成功したけど。で、どうするの?」
「んー? 叩き潰すよ?」
正直『ヴァルタール帝国』まで逃がしてやって、その足かせにしてやろうとか、思わなかったわけでもない。だが既に『ヴァルタール帝国』が抵抗運動の勢力に、テロ攻撃を示唆あるいは教唆した事実は、証拠込みで掴んでおり、民に『グレート・スピーチ』の魔法で公表してもいる。わざわざ実行犯を相手に抱え込ませて、それを相手の弱みにする必要性は薄い。
であるならば、逃げる抵抗運動勢力をこの際綺麗さっぱりこの世から退場させた方が、わたしの精神衛生的にも得策と言うものだ。わたしは攻撃の命令書を作成し、それにサインをする。書類整理を手伝いつつ、アオイがポツリと漏らす。
「まだ怒ってる」
「うん。わたしは根に持つタイプだからね。
さて、次の報告書は……。ふむ、勇者ミズホに関する追加報告か。君も見るかい?アオイ」
「うん」
わたしは報告書の束を、読み終わった順にアオイに手渡してやる。この報告書には新勇者一行の現状が、現状知りうる限り記されていた。
まず、今現在新勇者一行はコンザウ大陸の西岸にある一国、『ラーカウ海商国』の首都にして最大の港湾都市、グンバに滞在している。
目的は表向き物資補給のためとなっているが、実のところ何処に向かうべきか、新勇者一行の意見が纏まっていないらしい。ちなみに一時的に陸に上がっているため、船上にいる時よりも情報が仕入れやすくなっている。
アーカル大陸へ向かうべきだと主張しているのが当の勇者ミズホである。彼女からすれば、今現在魔王の脅威に直面しているアーカル大陸の民人を救いたい、と言う純粋な気持ちからの意見だ。
一方バルキーゾ魔大陸……バルゾラ大陸へと直接突入し、全ての元凶である魔王を討つべきだと主張しているのが勇者パーティーの残り3人である。彼らの発言の裏にあるのは、本国である『リューム・ナアド神聖国』の方針だ。
『リューム・ナアド神聖国』側からすれば、コンザウ大陸の国家、特に自国に対して反抗的な態度を取り続けて来たアーカル大陸諸国家は、もう少し痛めつけられれば良いとさえ思っている。勇者本人は知る由もないが。
「勇者一行の内輪でのすれ違いは、こちらとしても望むところだがね……。こちらの書類は勇者ミズホの現状での実力か。……ふむ。剣技はたいしたものだね。アオイにはまだまだ届かなくとも、一行の中で既に最強か。
魔法の力は……。属性は光系統に偏ってて、そこそこの強さしかないね。……いやもしかして、基礎を蔑ろにして光系統に集中して伸ばした、促成栽培かな?」
「たぶん『リューム・ナアド神聖国』は、今回の勇者を聖剣の使い手として特化させたんだと思う。光魔法はきっと、聖剣の持ち手として必要な、最低限の物しか教えてないんじゃないかな。
治癒魔法や補助魔法とかをパーティーメンバーに頼りっきりになる様に。……いざ始末するときに、それが弱点となる様に。
仮にその想像が正しいとしたら、促成栽培でこれだけの力を持てるんだから、素質的には魔法の使い手としての方が向いてると思うけど」
「やれやれ」
わたしは溜息を吐く。『リューム・ナアド神聖国』は、味方を背後から撃つ算段ばかりつけている。敵側であるわたしとしては、本当にありがたいことだ。無論皮肉である。
「さて、そうなると勇者ミズホがアーカル大陸にやって来た場合、バルゾラ大陸にやって来た場合の両方を考えて準備しておいた方がいいかな。『例の物』を、場合によってはアーカル大陸に運ばないといけないなあ」
「ああ、アレ。確かにアレは必要ね。……勇者ミズホをこちら側に引き入れるためには」
「そうだね。さて、一休みしようか。続きはお茶の後にしよう」
「うん」
アオイが自分の分も含め、お茶を淹れてくれる。わたしは司令室の片隅にある冷蔵庫から、先日わたしが教えつつアオイが焼いたフルーツタルトを取り出す。
冷蔵庫か……。召喚直後と比べると、とんでもなく便利になったものである。未だ量産が利く工業製品ではない、手作りの工芸品でしか無いのが玉に瑕だが。
今のところ電気機器に必要な電子部品の類は、わたしが錬金術系の魔法や魔道の術で単品生産している。ザウエルでも魔法技術的には製作できると思うのだが、電子工学の知識を教え始めてまだ日が浅いので、そっちの知識不足で作れないでいる。
早いところ工業技術が向上し、一般の民が自力で作れる様になって欲しい物だ。
「そうしたらまずはラジオ放送を開始……。いやテレビ放送を一気に始めてしまってもいいんじゃないかな。ああ、でも今のところは軍事技術を優先しないといけないかな。
魔法が不得意で念話が使えない種族もけっこう多いからなあ。無線電信、いや無線電話は必須だろう。ああいや、有線電話による野戦電話なら早目に実用化できるかな?あー、それが完成したら民間にも技術をフィードバックして、電話網を構築しないと。
戦車や装甲兵員輸送車や歩兵戦闘車も要るよなあ。自動車歩兵じゃ不整地走破性が劣る。あー、やっぱり砲の自走化は必須……」
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「おおっと」
アオイの突っ込みに内心動揺しつつ、わたしはフルーツタルトを切り分けた。
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