召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第53話 国名決定

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 アーカル大陸の視察から、わたしとアオイはバルゾラ大陸の新生魔王軍本部基地へ帰還してきた。そして今わたしたちが居るのは、本部基地の新しい司令室だ。

 ちなみに『新しい』と言うのは、つい最近司令室を本部基地の地下深く、最深部へと移したからだ。前までの司令室は、技術の進歩で様々な機器が次々に据え付けられた結果、官僚の文官などが入るには少々手狭になっていた。

 そのため、この際だからもっと広い部屋へ司令室を移そうと言う事になったのだ。そしてわたしの司令室は、地下深くに大部屋を確保してそこへ引っ越したのである。

 ちなみにわたしたちと言うのは、話の流れからわたしとアオイだけに聞こえるが、さにあらず。ここに居るのは、わたしとアオイの他にザウエルと鉄之丞、そして文官が数名だ。

 わたしたちはこの場にて、司令室移設後の初幹部会議を開いていた。勿論ガウルグルク、オルトラムゥ、ゼロの3名も『通話水晶』によって、アーカル大陸からリアルタイムでこの会議に参加している。

 ガウルグルクが、アーカル大陸は元『ヴァルタール帝国』の領域にて、残って抵抗を続ける残敵について報告を行う。

『セドリックがこちらに帰順いたしたのが効きましたな。港湾都市デーゼムの民の扱いを見て、抵抗をやめてこちらに帰順する者が多くなっておりますれば。セドリックも自分の知り合いに、帰順を呼びかける手紙を何通も書いておりますからな。
 無論、抵抗をやめようとせぬ地域も多くありもうすが、一般の兵は民人より徴兵された者たち。多額の税を徴収され、働き手たる自分自身を徴兵され、しかも勝ち目はないとあらば……。敵軍の士気は、どん底にございます。場合によっては兵たちが指揮官の首を取って降参して参る場合すら……』

「セドリックには感謝しないとね。彼の英断のおかげで、無駄な戦いが多く避けられた」

 わたしの言葉に、その場にいる者たちが頷き合う。そしてザウエルがぐるりと周囲を見回して、発言する。

「さて、ところで前回の会議で魔王様から発案のあった国名と国旗についてですが……」

『おう、前回は結局決まらなかったんだよな』

『ソウ簡単ニ、決マル物デハ無イカト。国旗モ国名モ、国威発揚ニハ極メテ重要デアリマスレバ』

 オルトラムゥとゼロが言う通り、前回の幹部会議では議論百出して、結局決まらなかったのだ。ここでアオイと鉄之丞が口を開く。

「国名も国旗も、威厳が大事なのはわかるけれど、ある程度の単純さは必須だと思うわ。どんな頭の悪い下級の魔物でも、これは自分たちの国名、国旗だって判る様に」

『そうでござるな。かつての故国たる日ノ本における家紋などは、訳がわからぬ程に入り組んでおった故、それがしの様に頭が良いとは言えぬ武辺者には厳しい物がござった。流石に徳川家の葵の御紋は皆知っておったがの』

「『『ぐむむむ……』』」

 一斉に唸ったのは、前回の会議で威厳や荘厳さなどに拘り、ひたすらこねくり回した国名や国旗を提案した面々である。ここでゼロが、おもむろに言葉を紡ぐ。

『デ、アルナラバ……。魔王様ガ提案シタ、第3案ノ国旗ガ良イカト。魔王様ノ御名デアラセラレル『ぶれいど』ハ、『刃』モシクハ『刀』ヲ意味シマス。黒ノ地ニ、白デ上向キノ剣ヲ図案化シタ旗ハ、単純ニシテ明快、虚飾ヲ嫌ウ魔王様ニオ似合イデス』

「……ですね。魔王様は虚飾がお嫌いでした」

 ザウエルがまず折れる。オルトラムゥとガウルグルクも、頷いた。ザウエルは溜息を吐いて、肩を竦める。

「ふぅ……。では国名はどうしますか?単純明快な物が良いのは分かりました。ですが、できれば『魔』の文言は入れたいですね。
 アーカル大陸を事実上手に入れたことで、魔物以外の人類種族も国民に増えましたが、この国が魔王の下に集った魔物たちの国家であることは違いないのですから」

『そうだな。そこは譲れんところだ』

『国旗に『剣』が描かれるのだ。『剣』、もしくは『刃』、『刀』の言葉を入れるのはどうかの?』

 オルトラムゥとガウルグルクも、意見を出す。わたしは口を挟んだ。

「あー、わたしが提案した国名はあくまで叩き台だから、気にしなくてもいいよ。『剣』も『魔』も入ってなかったからね」

「……『JOKER剣魔国』はどうかな。魔王様の家名?だし。それに魔王様の外観は、刃や角があちこちに飛び出してて、まさに剣の魔物って感じだし、剣魔って言葉は似あうんじゃないかな。造語だけど」

「!?」

 アオイの言葉に、わたしは一瞬慌てた。秘密結社『JOKER』の名前は、念入りな洗脳を施されているわたしにとって、とっても非常に極めて思いっきり重要な物だ。地球の某一神教信者に対する、某唯一神の名前に相当する重さがあると言っても良いかもしれないほどである。うかつに使うのは気が引けるのだ。

 だが幹部たちの顔を見ると、皆が納得した様に頷いている。

「ふむ、『JOKER剣魔国』ですか。いい感じですね」

『なるほど、魔王様にぴったりだな』

『ほう……。さすがは親衛隊長殿だ。簡素で分かりやすく、しかも威厳がある』

『それがしも、異存はござらぬ。良き国名かと』

『素晴ラシイ……。オ見事デス、親衛隊長殿』

 今更駄目だとは、もはや言える雰囲気では無かった。文官たちも、興奮気味にその国名を議事録に書き込んで行く。わたしは心の中で、遠い元の世界にいる大首領様に頭を下げた。こうして我々の国の名前は、『JOKER剣魔国』に決定したのだった。
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