召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第69話 建国後のいろいろ

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 いつもの魔王軍本部基地司令室……。今ここではいつものメンバーであるわたしとアオイ、ミズホ、その他の文官たち6名が、各々の執務机に着いている。

 そしてわたしの席の前には、魔道軍団軍団長である大魔導師ザウエルが、書類の束を持って立っていた。彼は口を開く。

「やれやれ、です。コンザウ大陸の諸国家は、我らの建国を認めない方針ですね」

「まあ、それは構わないさ。どちらかと言うと、国外向けでは無く国内向けの政策だったからね。それに認めないと言ったところで、実際にある物をどうにかするとなると、戦争……。いや、向こうからすればこちらを国家と認めていないんだから、単なる派兵か。
 まあ何にせよ、武力行使しか無いだろうさ。そうなったら、こちらはこちらで国防のために敵船を撃沈しまくるだけだ。海竜と現在ある海軍の、合同訓練を行おう。
 互いに支援できる様にしておかないと。それと潜水艦を少数でかまわないから建造させよう。後々のために、乗組員を訓練させておかないと。潜水艦乗りは、一朝一夕では育成できない」

「魔王様……」

「ん?」

 アオイが口を挟んでくる。わたしはそちらに顔を向けた。

「魔王様、睡眠学習装置、造った方がいいんじゃないかな。以前一時保留ペンディングした理由は、魔王様の負担が一時的に増える事と、あとは急を要する問題が幾つかあったせいでしょ?完成してしまえば、今度は魔王様の負担は一気に減る。
 潜水艦乗りを育成するとなると、短期間で育成するためには魔法で知識を植え付けることになる。今のノルマに、更に積み重なると、魔王様の負担が大きすぎる。他の方法でできるなら、そちらでやらないと」

「……わかった。おーい、ちょっとA-07タイプの標準ビル5棟分の土地と資材を押さえてくれ。場所は学校の近くで。一気に2,000人の睡眠学習ができる施設を建造するから。そして今わたしがやってる、知識植え付けの仕事を、完成後はそちらに全面的に移管する」

「はっ! 了解いたしました!」

 文官の1人が、大急ぎで関連書類を集め、あるいは製作して行く。わたしはアオイに再度顔を向ける。

「これでいいかな?」

「うん……。だけど、一気に2,000人分……」

「いや、これでも規模としてはまだ足りない。後々に建て増しして、5,000人を一気に睡眠学習させられる様にしたい。睡眠学習は、わたしがやってた魔法で知識を植え付けるのと違って、時間がけっこうかかる。普通に勉強するよりかは早いけどね。
 まあ生徒は、睡眠学習施設と学校を往復してもらうことになるかな。そうスケジュールを組めば、最終的な卒業までの時間は変わらなくなるだろうね。
 あ、そうだ。ザウエル?」

 ふと思い出したことがあり、わたしはザウエルを呼んだ。彼は即座に応える。

「はい、何か?」

「ちょっと『リューム・ナアド神聖国』の件だけどね。勇者召喚魔法陣を破壊することは可能かな?爆弾を持った使い魔を突貫させるなりして。いや、これ以上奴らの犠牲者を生み出すのは避けたいし」

「使い魔での攻撃は、難しいですねえ。親衛隊長殿、副長殿、貴女方が召喚されたのは、『リューム・ナアド神聖国』のどの辺でしたか?」

 アオイとミズホは、少し考え込む。

「え、と。王城の中心部、それも地下だった、かな。玉座の真下」

「はい、そうです。はじめてこの世界に来たのは、王城の……。謁見の間にある、玉座の下に隠された階段を降りたところにある地下室でした」

「……やはり想像した通りでしたか。つまりは今の技術ではない、古代の魔法技術による結界の、そのど真ん中ですから。そこに使い魔を侵入させるのは困難ですね。
 先代魔王と先代大魔導師が勇者召喚魔法陣の仕組みを盗めたのは、うかうかと首都の外に出た神官とかを誘拐したら、そいつが偶然その手の研究者だったからです。頭の中に、そいつ自身には完全には理解できてなかったんですが、勇者召喚魔法陣がバッチリ記憶されてたからなんですよ。
 勇者召喚魔法陣を破壊するには、素直に首都を囲んで、特殊部隊を突入させて、幾重もの結界の基点を順繰りに破壊して結界を取り除き……。それが一番早いですね」

 わたしはそれを聞き、唸った。

「うーむ……。やはりわたしが単身乗り込んで、勇者召喚魔法陣だけ始末してこようかなあ」

「いや、あまり意味は無いでしょう。『リューム・ナアド神聖国』には勇者召喚魔法陣に手を加えるぐらいの古代知識は残っているんですからね。ゼロから勇者召喚魔法陣を創造することは不可能でも、今あるのと同じ物を資料などに基づいて描き直すぐらいは可能でしょう。
 魔法陣を管理している宮廷魔道士やら神官やらをことごとく始末してしまわねば、意味は無いです。だとするならば、普通に攻めた方が結局は得策ですよ。……冷たい事を言う様ですが、あと1人か2人ぐらいは犠牲者を覚悟なさった方がよろしいかと」

「……むむむ」

 たしかにザウエルの言う通りなのだ。と言うか、はっきり言ってしまえば勇者召喚をさせたくないのはアオイやミズホや鉄之丞、特にアオイの気持ちを考えての事だったりする。

 だがわたしが勇者召喚魔法陣を始末に行けば、その気になれば『リューム・ナアド神聖国』の首都どころか国ごと誰も逃すことなく、完全に吹き飛ばすこともできるんだが……。それをやってしまえば、アオイたちに復讐を遂げさせることが叶わない。ああ、鉄之丞との約束も忘れてはいない、勿論。

 これは矛盾だ。アオイたちの気持ちを思えば、勇者召喚は阻止したいが、さりとてわたしが出向いて皆殺しにしてしまえばアオイたちの復讐対象を奪ってしまう。そうならない様にほどほどの破壊行為で抑えれば宮廷魔道士やら神官やらが生き残り、勇者召喚魔法陣を再建するやも知れないが、それでは行く意味が無いも同じ。

 わたしが困っていると、アオイとミズホが意を決した顔で話しかけて来た。

「「魔王様」」

「むむむ……。え? あ、な、何かな?」

「魔王様、魔王様だったら『リューム・ナアド神聖国』を首都どころか国ごと吹き飛ばすこと、できるよね?」

「できるんですかっ!? あ、い、いや以前蜥蜴人を助けに行ったときの事から、首都ぐらいは吹き飛ばせると思ってましたが……」

 ザウエルが叫び、そして呆れた様な口調で付け足す。まあ、驚くのも無理は無いが。

 わたしはアオイに頷いた。アオイとミズホは、それを見て互いに頷き合う。2人は再度、口を開く。

「魔王様、わたしは魔王様がどちらを選んでも、恨んだりしない。本音を言えば、わたし自らの手で、あの国王や神官長とか宮廷魔道士長やらをあの世に送ってやりたいけど」

「あたしも同じ気持ちです。あたしは魔王様の判断を信じます。もし自分の手で復讐を果たせなくても、逆に新たな勇者が送り込まれて来たとしても、です」

「新たな勇者を倒さなくちゃならなくなったら、自分の手で殺す覚悟はわたしもミズホもできてるし、魔王様が『リューム・ナアド神聖国』を滅ぼしちゃっても、最後まで魔王様に従うから」

「……わかった」

 わたしはおもむろに言葉を紡ぐ。アオイとミズホは息を飲んだ。ザウエルは黙して語らない。

「これまでの方針を継続するとしよう。『リューム・ナアド神聖国』攻略は、コンザウ大陸侵攻の最終局面で行う。逃げ場を無くして、最後の最後で徹底的に叩くよ。……それまでは、直接的な手出しは無しだね。勇者があと2~3人増えてもね。
 そして勇者が増えた場合だけど、できる限り保護したい。しかしそう上手くいかない場合は、倒す事も視野に入れておこう」

 アオイとミズホを見遣ると、彼女らは安堵した様な、それでいて苦しそうな顔をしていた。わたしは彼女らに歩み寄ると、両の手を彼女らの頭に乗せて撫で擦る。ふと見ると、ザウエルがにやにやと笑っていた。

 わたしがひと睨みすると、ザウエルは慌てて敬礼をして、司令室から逃げ出して行く。答礼はできなかった。わたしの手はアオイとミズホの頭を撫でていたからだ。わたしはやれやれと頭を振った。

 ちなみに文官たち6名は、見ないふりをしつつ仕事に没頭している。賞与に色を付けてやることで、誤魔化せるだろうか。わたしは再度、頭を振った。
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