召喚魔王様がんばる

雑草弁士

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第80話 南極探検の成功

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 わたしは魔王軍本部基地司令室の自席の背もたれを倒し、そこに身体を預ける。ちなみに背中にある重力制御用翼が背もたれとぶつからない様に、その構造にはかなり苦労をした椅子だ。まあそれはともかく、わたしは大きく伸びをした。

「ん~っ!ようやくひと仕事終わったなあ。」

「ご苦労様。」

「お疲れ様です。」

「いや、アオイとミズホもご苦労様。ずっとわたしと一緒だったからね、疲れただろう。」

 この日は魔王軍南極探検隊の南極点到達と全員の無事生還を祝う、盛大な晩餐会ばんさんかいが開かれていた。主催は当然魔王たるわたしである。

 その場でわたしは探検隊員たちを称える演説を行い、全員に希少な魔法金属アダマンタイトで造られたメダルを授与してもいる。いつもの精神的疲労を伴う偉そうな口調でもって。

 そう、南極探検隊である。イデルク魔獣軍団中尉以下7名の魔王軍南極探検隊南極点攻略班は、剣魔歴2年1月15日、バルニア標準時13時8分、史上初の知的生物による南極点到達を成し遂げたのだ。なお1月なのは、南極は南半球なので1月が夏場だからだ。

 しかもここで大事なのは、この探検隊には南極点攻略班7名中に2名の人間族、後方支援班40名中に8名の土妖精ドワーフ族と6名の人間族が含まれていたことである。彼らのうち半数はバルゾラ大陸にてわたしに保護されて魔王軍入りした人類種族であり、残り半数はアーカル大陸にて軍警察要員として採用された人類種族だ。

 共通しているのは、魔王であるわたしに忠誠を誓っている事である。人類種族がこの偉業に参加したことは、魔物と人類種族の融和と協調の証として、政府広報誌やラジオ放送で広く喧伝された。無論これにわたしの意向が強く影響していた事は、明らかな事実である。

 幸いなことに、この事実は少なくとも魔物側からは、比較的好意を以て受け止められている様だ。本日の昼間、南極探検隊員全員がオープンカーに乗り、魔王軍本部基地の城下町とも言える『ジョーカー剣魔国』首都バルニア市をパレードした。しかしパレードを出迎えた大観衆の歓迎ぶりは、半年前の魔物だけで構成された北極探検隊のそれに全く劣らなかったのだ。

「さあて、次の目標はアーカル大陸にある、世界最高峰ボーカッド山、標高は推定9,011mか。……GPS測量が可能になったら、正確な標高を調査しないとなあ。持ち運べるサイズの酸素ボンベが量産できるようになったら、登山隊を編成しよう。
 勿論登山隊には魔物と人類種族を入り混ぜて編制しないといけないね。可能な限り早く、アーカル大陸の人類種族から軍人を……。戦力を抜き出せる様にするためにも、魔物と人類種族の融和と協調をアピールしないと。
 同時にコンザウ大陸の諸国家が、アーカル大陸の人類種族を裏切者と呼んでいることを強調して……。」

「魔王様、少しハイになってる。シャワーでも浴びて、少し休んだ方がいいんじゃないかな。」

 ……そうしようか。アオイの言葉通り、わたしは司令室に隣接した自分のわたし室に、司令室からの直通扉を通って移動し、そこに設えてある専用のシャワールームへと向かった。

 そう言えば、便利なようにと司令室の隣に私室を設け、あげくに直通扉まで付けたのに、この部屋はシャワーの時ぐらいにしか来ていない。眠るのも、面倒がって司令室の自席をリクライニングさせて、そこで『睡眠圧縮』使って1時間だけ眠ってるからなあ。

 黒い長衣と下に着用していた黒いハーフパンツを洗濯機に放り込み、3mの身長のわたしでも悠々入れる大きなシャワールームに移動。ざっと身体を洗い終えると全身を瞬間的に白熱化させて身体を乾かす。この身体の白熱化は、魔法や魔道のたぐいじゃなしに、改造人間としての機能なんだけどね。

 その後シャワールームを出て箪笥から新しい黒いハーフパンツと黒い長衣を取り出して身に纏う。箪笥には同じ長衣と同じハーフパンツが大量に入っている。だから着たきり雀に見えるのは気のせいなのだ。

 司令室に戻ると、ミズホがうとうとと舟を漕いでいる。アオイがわたしに向かい、唇に人差し指を垂直に当てる仕草をしてきた。わたしが頷くと、アオイは黒板に行先を『親衛隊副長わたし室、即戻り』と書きこむ。そして彼女はこちらに敬礼すると、ミズホを横抱きにして司令室を出て行く。わたしも答礼で彼女たちを見送った。

 しかしアオイ、さすが勇者だけあって膂力はある様だ。晩餐会にわたしの護衛として出るために用意した、正装としての黒地に赤でアクセントをあしらった全身甲冑スーツアーマーを纏った上で、同じ格好のミズホを抱き上げて、びくともしていない。なんというか……。男前だった。いや、格好良い。女の娘なんだけどね。

 わたしは倒したままになっている、司令室の自席の背もたれにもたれかかり、横になる。このまま『睡眠圧縮』使って、1時間だけ眠ってしまおうかとも思う。司令室の扉の外と隣のわたし室の扉の外には、親衛隊員が2体ずつ立っているので、警備には問題無いだろう。

 あー、でもなあ。ちょっとばかりまだ、考えないといけない事があったなあ。それを思い出したわたしは椅子の背もたれを起こし直し、執務机に向かった。
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