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第94話 悩みは尽きない
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数百名の豚鬼と数百名の人食い鬼が、射撃場に整然と並んで射撃訓練の順番を待っている。うん、この者達はわたしの研究所で後天的遺伝子改造と軽度洗脳処置を受けた、第一陣から第五陣までの者たちだ。あれだけ行状が酷かった豚鬼と人食い鬼たちが……。うん、がんばって設備や施設を増築して良かった。
だってさ! ちゃんと教えた通り、銃を構えて! ちゃんと教えた通り、初弾装填して! ちゃんと教えた通り、狙って! そしてちゃんと教えた通りに、引き金を引いたんだよ!? 今まで何度教えてもできなかったのに! 嗚呼、涙が出そうだよ。
「魔王様、まだ終わりじゃない」
「……ああ、その通りだね。これはまだ第一歩だ」
一瞬、あまりの喜びに我を忘れちゃったよ。アオイの言う通りだ。世界を征服して、『リューム・ナアド神聖国』を叩き潰さないといけない。アオイ、ミズホ、鉄之丞の怨みを晴らせる形で、ね。
豚鬼改良種と人食い鬼改良種の訓練視察を終えた後、わたしは司令室の大型通話水晶で、ガウルグルクからの戦況報告を受けていた。無論、アオイ、ミズホ、ザウエルも一緒に居る。
『……と言う訳で、コンザウ大陸侵攻軍本隊は『ヴィザー・ク王国』全土を占領致しました。そして今現在、敗走して国へ逃げ帰る途中の『タラント連邦』の『ヴィザー・ク王国』救援軍を殲滅すべく、先日届いたばかりの空母ガーソムの爆撃機隊をもって、空爆しておりますれば』
「うん、ここは出し惜しみするよりは、徹底的に全力をもって敵を叩き潰し、圧倒的な敗北を教えてやる場面だ。補給は次々に送るから、ガンガンやっちゃってくれ」
『はっ!』
侵攻軍本隊は、とりあえず大丈夫の様だ。まあ、歴戦の勇将ガウルグルクの指揮に、瑕疵のあろうはずもない。心配なのは、鉄之丞だ。いや、戦力比から言って負けるとはかけらも思っていない。ただ、やり過ぎてはいないだろうか。やり過ぎると、後々の支配が大変になるからなあ。
「ところで、鉄之丞はどうだい? 死霊軍団は?」
『は。大軍の指揮には慣れておらぬと言う話でしたが、さにあらず。なかなかの手腕ですな。『フィンザ国』と『サマー国』を立て続けに陥落させ申した。しかも一般市民は、一部が自暴自棄になり暴徒化して自滅してしまいましたが、他は無事ですな。それぞれの王族は捕らえてあるそうです』
「それは……。文句の付けようもないな。いや、鉄之丞は久々の檜舞台だからね。張り切ってやり過ぎるのを懸念してたんだ。よくやったって、伝えてくれるかい?」
『委細承知』
……うん。ほっとした。安堵した。鉄之丞、ちゃんと我慢できたなー。怨霊だから、我慢とかは苦手なはずなんだよね。ただでさえ、すぐにでも『リューム・ナアド神聖国』まで飛んでいきたいのを、理性で我慢に我慢を重ねてくれているんだ。……なんとかして、報いてあげなくちゃなあ。
「魔王様、考えたんだけど」
「どうしたんだい、アオイ?」
「やっぱり鉄之丞……元帥怨霊大将殿への報酬は、やっぱり一刻も早い『リューム・ナアド神聖国』への報復が最善だと思う」
「で、でもアオイさん! その事は何度も話し合ったはずです! 『リューム・ナアド神聖国』へ攻め込むのは、最終段階だって!」
うん、そうなんだ。そうなんだけど、アオイの口調もその瞳も、冷静そのものだ。何か考えがあるんだろう。わたしはアオイに頷き、続きを促した。
「だから、『リューム・ナアド神聖国』に対して、何かしら工作ができないかな?偉そうにしてる偉い神官あたりに、人間に化けさせてる魔道軍団の間諜か誰かから金を積ませて。そして今回の遠征で得た占領地の、『リューム・ナアド神聖国』主導での奪回作戦を実行させる」
「「!!」」
「ふむ。読めて来たよ? それに対する迎撃戦を、鉄之丞と死霊軍団主体で行うんだね?」
「うん」
ミズホとザウエルは、目を見開いて唖然としている。わたしも驚きはした。だが、アオイが時折素晴らしい献策をするのは何度かあったので、そこまで驚きは大きくない。アオイとの付き合いの深さでは、もうかなりな物があるからねえ、わたしも。
「以前屍竜創れる様に、竜の骸を鉄之丞に下賜しようかって考えた事もあったけど……。鉄之丞が本当に求めてるのは、『リューム・ナアド神聖国』の正義ぶった奴ら、指導者連中の首印だからね。よく考えれば、屍竜はそのための手段でしか無い。
そうだな。少しガス抜きも兼ねて、『リューム・ナアド神聖国』の将軍の首でも鉄之丞に取らせてやることにしようか。ザウエル!」
「はっ!」
「『リューム・ナアド神聖国』の偉い神官……高司祭か誰かで、程よく腐敗した連中を洗い出すんだ。その中で、軍事に顔が利く奴を選び出して、賄賂を送ってくれ。そしてコンザウ大陸の南海岸諸国の奪回作戦を実施させるんだ。
ただし魔道軍団の間諜は直接には使わない様に。間に現地調達の工作員を挟んで、魔道軍団員の安全は確実に担保してくれ。できるかい?」
「はい。お任せください。そうですね……。補強手段として、捕らえてある各国の王族とか、使ってもよろしいでしょうか?人類種族に化けた魔道軍団員の手で脱出させて、『リューム・ナアド神聖国』に逃がしてやります。……領土奪回の念と、基本的な作戦案を頭に植え付けた上で、ね」
なるほど。いい考えだ。それらの王族を捕らえていたところで、あんまり役にも立たないもんな。だがこうやって使い道があるなら、がんがん使おうか。
「面白いね。許可するよ。頼んだ、ザウエル」
「はっ!『リューム・ナアド神聖国』の欲深い正義の味方ども、躍らせてやりますよ。ではちょっと手配してきますので、僕はこれにて」
わたしたちは、敬礼をして退出するザウエルを答礼で見送る。
「さあて、鉄之丞は喜んでくれるかな?」
「間違いない」
「……でも、喜び過ぎて成仏とかしちゃわないでしょうか?」
「それも大丈夫。元帥怨霊大将殿の怨念の深さは、わたしたちのソレと比較しても負けないぐらい。本懐を遂げない限りは、成仏とかしない。……ちょっと不安なのは、本懐を遂げたらその場で成仏しないかどうか。
……成仏しちゃったら、ユージェニーが可哀想。なんとかこの世に残ってくれないかな」
あー……。その不安はあるなあ。いや、本懐を遂げたら大霊祭でも行って、JOKER剣魔国の守護霊として祭り上げるのはどうだろう。そうしたら、ほんとに守護霊として残ってくれたりしないかなあ。
死霊魔法や霊魂に関わる魔導の術の知識を総動員して、なんとか考えてみるか……。うん、頑張ろう。
だってさ! ちゃんと教えた通り、銃を構えて! ちゃんと教えた通り、初弾装填して! ちゃんと教えた通り、狙って! そしてちゃんと教えた通りに、引き金を引いたんだよ!? 今まで何度教えてもできなかったのに! 嗚呼、涙が出そうだよ。
「魔王様、まだ終わりじゃない」
「……ああ、その通りだね。これはまだ第一歩だ」
一瞬、あまりの喜びに我を忘れちゃったよ。アオイの言う通りだ。世界を征服して、『リューム・ナアド神聖国』を叩き潰さないといけない。アオイ、ミズホ、鉄之丞の怨みを晴らせる形で、ね。
豚鬼改良種と人食い鬼改良種の訓練視察を終えた後、わたしは司令室の大型通話水晶で、ガウルグルクからの戦況報告を受けていた。無論、アオイ、ミズホ、ザウエルも一緒に居る。
『……と言う訳で、コンザウ大陸侵攻軍本隊は『ヴィザー・ク王国』全土を占領致しました。そして今現在、敗走して国へ逃げ帰る途中の『タラント連邦』の『ヴィザー・ク王国』救援軍を殲滅すべく、先日届いたばかりの空母ガーソムの爆撃機隊をもって、空爆しておりますれば』
「うん、ここは出し惜しみするよりは、徹底的に全力をもって敵を叩き潰し、圧倒的な敗北を教えてやる場面だ。補給は次々に送るから、ガンガンやっちゃってくれ」
『はっ!』
侵攻軍本隊は、とりあえず大丈夫の様だ。まあ、歴戦の勇将ガウルグルクの指揮に、瑕疵のあろうはずもない。心配なのは、鉄之丞だ。いや、戦力比から言って負けるとはかけらも思っていない。ただ、やり過ぎてはいないだろうか。やり過ぎると、後々の支配が大変になるからなあ。
「ところで、鉄之丞はどうだい? 死霊軍団は?」
『は。大軍の指揮には慣れておらぬと言う話でしたが、さにあらず。なかなかの手腕ですな。『フィンザ国』と『サマー国』を立て続けに陥落させ申した。しかも一般市民は、一部が自暴自棄になり暴徒化して自滅してしまいましたが、他は無事ですな。それぞれの王族は捕らえてあるそうです』
「それは……。文句の付けようもないな。いや、鉄之丞は久々の檜舞台だからね。張り切ってやり過ぎるのを懸念してたんだ。よくやったって、伝えてくれるかい?」
『委細承知』
……うん。ほっとした。安堵した。鉄之丞、ちゃんと我慢できたなー。怨霊だから、我慢とかは苦手なはずなんだよね。ただでさえ、すぐにでも『リューム・ナアド神聖国』まで飛んでいきたいのを、理性で我慢に我慢を重ねてくれているんだ。……なんとかして、報いてあげなくちゃなあ。
「魔王様、考えたんだけど」
「どうしたんだい、アオイ?」
「やっぱり鉄之丞……元帥怨霊大将殿への報酬は、やっぱり一刻も早い『リューム・ナアド神聖国』への報復が最善だと思う」
「で、でもアオイさん! その事は何度も話し合ったはずです! 『リューム・ナアド神聖国』へ攻め込むのは、最終段階だって!」
うん、そうなんだ。そうなんだけど、アオイの口調もその瞳も、冷静そのものだ。何か考えがあるんだろう。わたしはアオイに頷き、続きを促した。
「だから、『リューム・ナアド神聖国』に対して、何かしら工作ができないかな?偉そうにしてる偉い神官あたりに、人間に化けさせてる魔道軍団の間諜か誰かから金を積ませて。そして今回の遠征で得た占領地の、『リューム・ナアド神聖国』主導での奪回作戦を実行させる」
「「!!」」
「ふむ。読めて来たよ? それに対する迎撃戦を、鉄之丞と死霊軍団主体で行うんだね?」
「うん」
ミズホとザウエルは、目を見開いて唖然としている。わたしも驚きはした。だが、アオイが時折素晴らしい献策をするのは何度かあったので、そこまで驚きは大きくない。アオイとの付き合いの深さでは、もうかなりな物があるからねえ、わたしも。
「以前屍竜創れる様に、竜の骸を鉄之丞に下賜しようかって考えた事もあったけど……。鉄之丞が本当に求めてるのは、『リューム・ナアド神聖国』の正義ぶった奴ら、指導者連中の首印だからね。よく考えれば、屍竜はそのための手段でしか無い。
そうだな。少しガス抜きも兼ねて、『リューム・ナアド神聖国』の将軍の首でも鉄之丞に取らせてやることにしようか。ザウエル!」
「はっ!」
「『リューム・ナアド神聖国』の偉い神官……高司祭か誰かで、程よく腐敗した連中を洗い出すんだ。その中で、軍事に顔が利く奴を選び出して、賄賂を送ってくれ。そしてコンザウ大陸の南海岸諸国の奪回作戦を実施させるんだ。
ただし魔道軍団の間諜は直接には使わない様に。間に現地調達の工作員を挟んで、魔道軍団員の安全は確実に担保してくれ。できるかい?」
「はい。お任せください。そうですね……。補強手段として、捕らえてある各国の王族とか、使ってもよろしいでしょうか?人類種族に化けた魔道軍団員の手で脱出させて、『リューム・ナアド神聖国』に逃がしてやります。……領土奪回の念と、基本的な作戦案を頭に植え付けた上で、ね」
なるほど。いい考えだ。それらの王族を捕らえていたところで、あんまり役にも立たないもんな。だがこうやって使い道があるなら、がんがん使おうか。
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「はっ!『リューム・ナアド神聖国』の欲深い正義の味方ども、躍らせてやりますよ。ではちょっと手配してきますので、僕はこれにて」
わたしたちは、敬礼をして退出するザウエルを答礼で見送る。
「さあて、鉄之丞は喜んでくれるかな?」
「間違いない」
「……でも、喜び過ぎて成仏とかしちゃわないでしょうか?」
「それも大丈夫。元帥怨霊大将殿の怨念の深さは、わたしたちのソレと比較しても負けないぐらい。本懐を遂げない限りは、成仏とかしない。……ちょっと不安なのは、本懐を遂げたらその場で成仏しないかどうか。
……成仏しちゃったら、ユージェニーが可哀想。なんとかこの世に残ってくれないかな」
あー……。その不安はあるなあ。いや、本懐を遂げたら大霊祭でも行って、JOKER剣魔国の守護霊として祭り上げるのはどうだろう。そうしたら、ほんとに守護霊として残ってくれたりしないかなあ。
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