召喚魔王様がんばる

雑草弁士

文字の大きさ
98 / 128

第95話 敵は性懲りも無く

しおりを挟む
 さて、こちらの工作は上手くいった。『リューム・ナアド神聖国』の高司祭バスール・オイゲンドが上手くこちらの思惑に乗って、コンザウ大陸南岸諸国領の奪回・解放作戦を立案してくれたんだ。

 そして『リューム・ナアド神聖国』は、内陸国家故に軍船を持っていなかった事もあり、前回のアーカル大陸攻略作戦の大艦隊に、ほとんど兵を出していなかった。音頭は取ってたけどね。まあその分だけ、今回は陸続きだからって、主導的な立場としてかなりの軍勢を出して来ている。これで鉄之丞と死霊軍団をその撃滅に回せば、鉄之丞も満足してくれるだろ。

 まあ全部が全部、予定通りに進んだわけじゃ無い。こちらが危惧していた事も、同時に起こった。



 こともあろうに『リューム・ナアド神聖国』の阿呆ども、ついに新勇者を召喚して南岸諸国解放軍の先陣に置く、と発表しやがったんだ。



 これにはアオイもミズホも鉄之丞も、怒ったのなんのって……。召喚された新勇者は、『リューム・ナアド神聖国』の公式発表では、タケル・アカギと言う名前らしい。魔道軍団の間諜スパイによれば14~15歳程の少年で、なんと言うか、そのだな、ちょっと……。その年齢に相応しい精神状態らしい。

 どんなのかって言うとだね。……妙にカッコつけたり。正義に酔ったり。無意味にポーズ付けて喋ったり。うん、わたしは自分の過去の記憶はほとんど無いんだけど、そんな時期が自分にもあったのは、なんとなく感覚として覚えてる。チューニ、という奴だ。だが15歳近くと言うなら、そろそろそう言うの卒業しても……。

 それは置いといて。さて、どう対処するべきかね……新勇者タケル。そう言う性格であるならば、『リューム・ナアド神聖国』側としては扱いやすいだろう。それにタケル君側でも、『リューム・ナアド神聖国』の正義を疑わないんじゃないかな。

「……よし。どうせだから鉄之丞と死霊軍団だけでなく、親衛隊も出そう。魔王親征だ」

「やるんですか?元々は『カンザ・アド王国』を攻略する際に、そことの戦いで親衛隊を出す予定だったはずですが」

 ザウエルが眉をひそめて言う。うん、予定を変更するのは正直あまり褒められた事じゃないと思う。だけど、勇者クラスの相手だとねえ……。

「召喚直後と言えど、勇者が相手だ。鉄之丞クラスの力量ならば絶対に負けないとは思うけれどね。だけど他の上級不死怪物アンデッドあたりを倒されでもしたら、死霊軍団にとって大打撃、大損害だ。
 それに軍勢には、『カンザ・アド王国』の軍も含まれてるからね。まあ、完全に予定から外れると言う訳でもないだろう。とりあえずわたしの存在で、勇者タケルを上手くおびき寄せて、なんとか捕らえる。その様子を見せれば、敵軍の士気はガタガタだろう」

「ふむ……。了解です。ですけど、今回は親衛隊副長殿の時みたいに……ミズホ殿の時みたいに、丁寧に策をろうしたりしないんですね?」

「そうしようかと思ったけれど、今回は時間が無い。ミズホのときは、彼女とパーティーメンバーがバルゾラ大陸にやって来るまでたっぷり時間があった。それに今回は、小規模戦闘じゃなく軍勢対軍勢の、大規模戦闘だ。そこでわたしが敵を騙すために倒されたフリでもしよう物なら、味方の動揺が怖い」

「……安心しましたよ。魔王様が冷静でおられる様で。単なる思い付きじゃなく、熟慮の上であるなら、僕からは何もありません。
 まあどっちかと言うと心配なのは……。魔王様よりも、親衛隊長殿と親衛隊副長殿だったんですけどね」

 そう言うザウエルの視線の先では、アオイとミズホが激しい戦闘訓練を行っている。アオイ単独に対し、ミズホは親衛隊印の戦闘ドロイド2体の支援の下で戦っており、それでなんとか互角……いや6対4ぐらいで、まだアオイ有利だろうか?そんな感じで、アオイ対ミズホチームでの実戦さながらの戦闘訓練が続けられていた。

「アオイとミズホも問題ないよ。まあ、今は頭に来てるみたいだけれど、彼女たち自身で、自分が頭に血が上ってるってのを理解してる。だからああやって、ちょっとやり過ぎなぐらいに身体動かして、頭を冷やしているのさ」

「なるほど」

 そう言っている間に、アオイの片手半剣バスタードソードがミズホの片手半剣バスタードソードを打ち上げる。よろめいたミズホの喉元にアオイの片手半剣バスタードソードの切っ先が突き付けられた。

「ふう、強くなったわね」

「3対1でこれじゃあ、そう言われても……」

「いえ、本当に。前ならば、わたしは汗ひとつかかなかった。でも今は、ひやっとする事が何度もあったもの。
 ……魔王様!」

 アオイがわたしを呼んだ。わたしは視線をそちらに向けて、聞く姿勢を取る。

「なんだい、アオイ?」

「コンザウ大陸の南岸諸国解放軍に、死霊軍団と共に親衛隊を充てる事を進言する。そして、敵勇者との戦いで、ミズホに一騎打ちをさせるべき」

「うん。わかった」

「「ええっ!?」」

 ザウエルとミズホが、驚きの声を上げた。2人に向かい、アオイが説明をする。

「ミズホは今回の新勇者召喚で、相当なストレスを受けてる。本人は平気そうに見せてるけど、わるいけどバレバレ。だから新勇者を殺さず捕らえる事に貢献させてやる事で、それを解消してもらう」

「アオイはミズホの救出作戦で、心理状態についても自分の物として、経験があるからね。ちゃんとわかっているのさ」

「なるほど……」

 ザウエルも頷いた。わたしはまだ目を白黒させているミズホに向かい、口を開いた。

「親衛隊副長ミズホ・クオン。……貴官に命ずる。敵『リューム・ナアド神聖国』が召喚した勇者、タケル・アカギを一騎打ちにて討て。その際、可能ならばでかまわない。相手を生け捕りにせよ。勇者の命さえあるならば、相手の手足の7~8本は潰してかまわない。
 ……出来るかい?」

 最後に優しく付け加えた一言に、ミズホはだが、ごくりとつばを飲み込んだ。そして彼女は、力強く頷く。

「は、はいっ!」

「よし、任せた! ザウエル、早急に魔王親征の準備を整えてくれ。それと、わたしが居ない間の諸々、一時任せるよ。何かあったら、すぐに『ゲート』の魔法陣か、そうでなかったら超音速で飛んで帰って来るから」

「お任せください」

 そしてザウエルは、微笑みつつ言った。

「けれど、勇者タケルの手足を7~8本潰してもいいって話でしたが……。人類種族には、しかも人間には普通手足は4本しか無いですよね?」

 いや、比喩表現だから。そのくらい分かってくれ。って言うか、わかって言ってるだろうザウエル。
しおりを挟む
感想 97

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ決定】勇者学園の西園寺オスカー~実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい~

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】 【第5回一二三書房Web小説大賞コミカライズ賞】 ~ポルカコミックスでの漫画化(コミカライズ)決定!~  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、カクヨム、pixivにも投稿中。

異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜

沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。 数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

チート魔力を持ったせいで世界を束ねる管理者に目を付けられたが、巻き込まれたくないので金稼ぎします

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

処理中です...